31.漫画 アニメ

2025年8月13日 (水)

【ルパン三世】石川五ェ門の謎/金も宝石にもまったく興味無しに思える“大泥棒”

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『ルパン三世』シリーズに登場する十三代目石川五ェ門

いわずと知れた日本の超有名漫画・アニメの主要キャラクターですが、
一方でその存在は極めて不思議で不可解、矛盾・不条理に満ちた人物だと思います。

五ェ門は大泥棒のルパン三世の仲間としてチームを組み、長年泥棒稼業をやっているのに、
ルパンが目の色変えて狙うような金(かね)や貴金属等の“お宝”に、まったく興味がないように思えるのです。


私は1971年スタートのTV第1シリーズのファンである一方、
原作漫画はほとんど知らないので、主にアニメの印象で書きます。

五ェ門は大昔の盗賊、石川五右衛門の末裔という設定ですが、
泥棒というよりは剣豪、例えば宮本武蔵とか佐々木小次郎のような、
剣の道を極める求道者のイメージではないでしょうか。

現金や宝石に興味はなくても、刀剣にはこだわりはあるでしょうが、
かといってそれを盗むことに執着するイメージもありません。
それなのになぜ、長いことルパン一味として“盗み”を続けてきたのか。

金や宝石への執着が感じられないだけでなく、
盗むという行為、盗賊としてのこだわりもまったく感じられないのです。
もっとも、それはルパンの相棒である次元大介にも見られる傾向かも知れません。
五ェ門ほど極端ではないので、目立ちませんが。


そもそもTV第1シリーズの初登場回である第5話「十三五ェ門登場」において、
五ェ門は「殺しのプロフェッショナル」と紹介されていました。
もっともその回ではルパンもそう紹介されていましたが。

かといって五ェ門に“殺し屋”のイメージもありません。
殺し屋というからには法外な報酬を得て仕事を請け負うもののように思えますが、
五ェ門には金に対する執着をまったく感じないのです。

第1シリーズでもルパンの敵である剣の達人として登場した最初の2本は
五ェ門メインともいえる話で、大いに活躍しましたが、
泥棒一味に加わってからは存在感は薄れ、まったく登場しない回も多かったです。

それでも1977年スタートのTV第2シリーズにも引き続き登場し、
キャラクターも安定して、ほとんどの回に登場しましたが、
相変わらず矛盾は抱えたまま、第2シリーズの3年の放送期間を完走しました。

そしてそのまま、第1シリーズから55年近く経った現在に至ります…、
と私が言い切るのは、最近の作品は観ていないものも多いので、無理があるのですが、おそらくそうでしょう。


金にも貴金属にも、盗むという行為自体にもこだわりはない、
むしろそういったものを忌避するような性格にすら思えるのに、
五ェ門はなぜルパンや次元らと盗賊としての活動を続けるのか?


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ルパンとの切っても切れない絆があるからか。
うーん、次元はそうかも知れませんが、
五ェ門がそうかというと、ちょっと弱いか。

スリルを味わいたいから・・・、それもちょっと似合わないような。


深淵なる謎を抱えたまま、五ェ門は存在し続けるのでしょう。

Old Fashioned Club 月野景史

2025年8月 8日 (金)

【アニメ】『ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ』は1960年代~2010年代の過去6期の変則的な傑作選

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2025年4月からフジテレビで毎週日曜9時に放送されている
『ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ』は原作者 水木しげる氏の没後10年を記念して、
『鬼太郎』過去6期の中から選ばれた作品を放送する、やや変則的な傑作選といえます。


『ゲゲゲの鬼太郎』は1960年代の第1期を皮切りに
70年代、80年代、90年代、2000年代、2010年代に1本ずつ
合計6作が放送されてきました。

ですので、私は『鬼太郎』の放送が始まると聞いて最初、
2020年代版の新作となる第7期が作られるのかと思ったのですが、それは間違いでした。
少し残念でしたが、その楽しみは先においておき、傑作選の地上派放送も得難い機会です。


では何が“変則的な傑作選”なのかというと、
『鬼太郎』ゆかりの複数の人々がそれぞれに選んだベストエピソードを放送している点です。
“ゆかりの人々”とは、例えば歴代の鬼太郎役の声優さん、
おなじみの主題歌を、今回歌っているAdoさん、
朝ドラ『ゲゲゲの女房』ヒロインの松下奈緒さんなど。

ただ、このようにそれぞれが思い思いにマイエピソードを選んでいたら、
色々偏りが出て、バランスが悪くなるようにも思います。
まぁ各代の鬼太郎役声優さんは自分が出演したエピソードを選ぶので、
年代的にはある程度バランスは取れていますが。

それにしても、これが最高のエピソードなのかと思うようなセレクトもなくはない。
それと、意外と鬼太郎があまり活躍しない作品が多く選ばれているようにも感じます。
活躍しないというと語弊がありますが、脇役レギュラーや
敵役ではないゲスト妖怪がフィーチャーされている回が多いような…。

思えば初回放送分からして、一反もめんがメインというレアエピソードでした。
まぁ良い話だったし、そこらも含めて楽しんでいますが。


ところでこのアニメ、
4月のスタート時はOP映像もED映像も過去作からの抜粋でした。
それが一カ月遅れでオープニングが新作動画に差し代わり、

さらに三カ月遅れでエンディング動画も新作に差し代わりました。


・・・何かバタバタ感、急ごしらえ感がなくもない。
思えば、このアニメの準備期間にあたる頃のフジテレビは色々大変な時期でした。
(今もそうかもしれないけど)
本来は新作アニメの予定が、頓挫して『歴代ゲゲゲ』になったとか!?

色々勘ぐってしまいます。

Old Fashioned Club 月野景史

2023年7月 5日 (水)

【漫画】『ドラえもん』てんとう虫コミックス「第0巻」/幻の第1話6種類を一挙収録

国民的漫画『ドラえもん』のコミックスといえば小学館の「てんとう虫コミックス」
1974年発行の第1巻から、1996年の第45巻までが既刊です。

実はそれとは別に、「第0巻」がコロナ直前の2019年11月に発売されています。

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ネット民が生み出したフェイクとか?
いえいえ、小学館発行の正規の「第0巻」なのです。


『ドラえもん』といえば、幻の最終回について話題になることがあります。
ネットによく出来た画像があったりしますが、これはフェイクです。
藤子・F・不二雄氏による、シリーズ完結作としての、本当の最終回は存在しません。
(厳密にいうと、「最終回」と呼べないこともない回はあるのですが、それはまた改めて)


さて、「第0巻」には、「幻の第1話」が収められています。
しかも、6種類も。
そして、いずれも本物です。
いったいどういうことなのか?


ある程度、上の年代の人なら、事情はピンとくるでしょう。
『ドラえもん』は「小学館の学年誌」複数に同時に連載されていました。

具体的にいうと、1971年1月号(発売はおそらく1970年の12月)の
小学館の雑誌「よいこ」「幼稚園」「小学一年生」「小学二年生」「小学三年生」「小学四年生」で、
同時に連載がスタートしたのです。

学年誌の同一漫画の連載は原則として、学年が違えば、同じ月号でも違う内容が載ります。
(この連載システム自体、漫画家の負担を考えると大変な話ですが)
ですので、『ドラえもん』にも同月に掲載された6種類の第1話が存在するのです。


一般に知られる第1話は?
では、てんとう虫コミックス第1巻掲載の、一般に認識されている第1話は何なのか?
基本的には「小学四年生」1971年1月号の第1話です。
ただ、連載開始からコミックス第1巻発行までは約3年半が経過しており、
収録にあたっては多少の改編が施されています。
第0巻には、オリジナルの「小学四年生」版第1話も収録されています。

6種の第1話、いずれものび太とドラえもんの出会いから始まり、初回らしい体裁を取っています。
ただ、低年齢層向けの作品には、セワシがドラえもんを連れてきた事情、
のび太が残した借金で子孫が苦しんでいるので、その未来を変えるため、という説明はありません。

そして、年齢が明記されているわけではありませんが、
のび太の年代が当該誌と合わせて描かれています。
(例えば、未就学児対象の「よいこ」「幼稚園」では、未就学児風に)

6種の幻の第1話、ファンなら是非読んでおきたいところです。

Old Fashioned Club 月野景史

2023年5月12日 (金)

『ルパン三世 カリオストロの城』のミートボールスパゲティの由来は?

つい先日も日本テレビのゴールデンタイムで、
映画『ルパン三世 カリオストロの城』(1978年 宮崎駿監督)が放送されました。

私は守旧派のルパン三世ファンなので、宮崎ルパンは少し綺麗過ぎて、その意味では好みではないのですが、
そこに捉われなければ、作品自体はアニメ史上屈指の名作との評価に異論はありません。


この映画にはいくつもの有名なシーンがありますが、
そのひとつに、ルパン三世と次元大介が主舞台であるカリオストロ公国の大衆酒場のような店で、
ミートボール(肉団子)らしきものが入ったスパゲッティ(パスタ)を争うようにして食べる場面があります。


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このシーンのパスタ料理、実際にモデルとなる料理が海外には存在するのでしょうか。

そもそも、あの時代にきっちり欧米の食文化をリサーチして、アニメ映画を作っているのかが微妙なのですが、
そこにはとりあえず目をつぶり、少し考察してみます。


ミートボール入りスパゲッティというと
アメリカにおけるポピュラーなスパゲティ料理と言われます。
しかし、この映画の舞台感はアメリカとは縁遠いように思えます。
そもそもカリオストロ公国とは、どこにあるのか?


カリオストロ公国
カリオストロは架空の国ですが、
ストーリーの流れからして、ヨーロッパの内陸にある独立国だと思われます。
人口3500人ほどというので、かなりの小国。
世界で一番小さな国連加盟国と説明されています。

Wikipediaでは、劇中に登場する書面の文字や、登城人物の名前から、
フランス系とドイツ系の国民が混在し、地理的にも両国に挟まれた、
実際のアルザスやルクセンブルクのような場所にあると推定される、と記されています。
アルザスといえば、白ワインで有名な地域ですが、
・・・ちょっとスパゲティには縁遠いような。


一方で、ラスト近く、かつてカリオストロはローマの支配下にあったと述べられています。
ならばイタリアの近く?

もちろん、今のイタリアの首都である「ローマ」と、
「古代ローマ」を混同して論じるわけにはいきませんが、
そもそも、パスタ、スパゲッティといえば、今も、『カリオストロの城』制作当時も、
まずはイタリアと、誰だって思うでしょう。

パスタと挽肉と言えばミートソース、
言うまでもなくイタリアには「ボロネーゼ」があります。
ただ、ボロネーゼにミートボールは使わないし、
ボロネーゼに使うバスタは一般的に平打ちタイプで、スパゲティではないようです。

やはり、「スパゲティ+ミートボール+トマトソース」の組合せだと、ポピュラーなのはアメリカになりますが、
ミートボールは、イタリアにもポルペッテがあります。
Youtubeにはイタリア風のミートボールスパゲティのレシピも色々上がっています。

正確な答えを出すのは難しいのかもしれません。
上述のように、そもそも制作側がこの件について、どこまでリサーチしたかも分からないし。 


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自家製ミートボールスパゲティー
ソースはいわゆるトマトソースではなく、ミートソースを使っているので、ちょっと変則です。挽肉三昧!

と、ここまで大好きなシーンを論じるみたいに書いてきて、なんなのですが、
私にはこの映画のミートポールスパはあまり美味しそうに見えないし、
ルパンと次元がそれを取り合う描写もあまり好きではないです。

でも「ミートボール入りスパゲティ」の語感にはとても惹かれます。

Old Fashioned Club 月野景史

2022年8月 8日 (月)

【漫画・アニメ】天才バカボンのパパの職業は “植木職人”? /幻の靴職人説も

昭和の人気漫画『天才バカボン』
そして昭和漫画の超人気・有名キャラクターである「バカボンのパパ」。
今回は、バカボンのバハの職業についての話です。

バカボンのパパといえば、無職の風来坊キャラ(自宅と家族はあるけど)ですが、
ある程度年齢の上の人だと、バカボンのパパは植木職人(植木屋さん)ではないかと思う人もいると思います。


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上の画像が証拠、間違いではありません。
Wikipdiaにも詳しく載ってるし、大仰に種明かし! というほどのこともないのですが、
「パパ=植木職人」 は原作漫画にはない、アニメ第一作(1971年9月-72年6月 全40回)だけの設定なのです。
これから、この植木職の事情について書きますが、その前に簡単に原作初期の“幻の設定”にふれておきます。


原作漫画の最初は靴職人
実は原作第1話でパパは靴職人(靴屋)。
昔は稀にあった、町なかに小さな工房を構えているタイプの靴屋だったのです。

私は子どもの頃、近所に同じような業態の、老職人さんが営む店があったので、ピンとくるのですが、
そんなスタイルの店は見たことないという人がほとんどでしょう。

パパの靴屋設定は、確認出来る限りこの原作初回だけです。
パパはその後も、単発でアルバイト的に仕事に就くこともあったので
靴職人も同じようなものでは、との説もネットにはあるようですが、
私は元々は靴屋が家業という設定だったように感じます。
この件は掘り下げてもしょうがないので、ここまで。


さてアニメ第1作の放送は1971年9月-72年6月
1年続かず終わっており、大人気とまではいえないかも知れませんが、そこそこには支持され、
ダウンタウンの松本人志さんも、最終回が見れず悲しかったとの主旨を語っています。
ただ、繰り返しの再放送で人気が高まった面もあり、私はその口です。
もしかしたら、松本さんも再放送時の思い出を語っていたのかも知れません。

アニメのスタートは原作開始の1967年3月からは3年半後。
原作ではアナーキーな作風やパパのキャラクターもある程度定着しており、
初期はアニメも、基本的にはそのスタイルでした。

Wikiによれば、その作風にPTA団体やスポンサーサイドからクレームが入り、
バカボン一家の家族の繋がりを重視した、ファミリーコメディ、ホームドラマ風に路線変更し、
そうなるとパパが無職は不自然で、後付けで植木職人にとしたいうのが、裏事情であるとのこと。

関係者がそう証言しているのだからそうなのでしょうが、
視聴者からすると、この説明はちょっと印象が違うというか、言葉足らずに感じます。
何が足らないか?


そもそも家族愛がテーマ
原作漫画は一家の第二子、バカボンにとっては弟となる「ハジメ」を
バカボンのママが妊娠中の設定でのスタートです。
パパとバカボンはハジメの誕生を待ちわびるあまり、様々な騒動を引き起します。
そして、生まれた可愛い次男のハジメは天才だったということで、またひと騒動。

つまり、原作漫画でも最初は過剰な家族愛がテーマだったのです。
この点はアニメのスタート時も一緒です。
パパのキャラはその当時の原作に寄っていますが、
ハジメ誕生を中心とした家族愛中心のストーリーが、ほぼ原作のまま作られていました。


アニメを最初から通して見ると、
スタート当初はハジメ誕生にまつわる家族愛を軸にしたエピソードが主筋で、
それが一段落して、アナーキー路線がメインになったが、
やがてホームコメディ路線にゆり戻した、という印象もあるのです。

つまりファミリーテイストはまったくのアニメオリジナルでもなく、
また途中からの突然の路線変更でもなく、
原点回帰ともいえるのです。


パパの植木職人設定は、シリーズ中盤で唐突に登場します。
元々そうであり、今まではたまたまそういうシーンは描かれなかった、という見せ方だと思います。

しかし、パパが植木職人になるまでの経緯をアニメで見たことがあるという人もいると思います。
それは植木職設定が定着してから、後付けで作られた、↓この回です。
【1972年5月13日放送第34回(67話)「パパはこうして植木屋になったのだ」】
全40回中の34回目なので、だいぶ終盤です。

この回ではパパのかつての職歴が回想の形で描かれます。
パパは様々の仕事を経験しますが、すべて「ハサミ」を持ち出して失敗してしまいます。
しかし、最後はハサミを使う、天職ともいえる植木職に出会います。
諺「バカとハサミは使いよう」がテーマとなっており、なかなか洒落ています。


この植木職設定の後付けは、なかなか上手かったと思います。
普段のパパの定番の腹巻姿に、職人風の法被を羽織れば、もう植木屋さんに見えます。
個人で営む自営業の職人なので、パパのマイペースなキャラを大きく変えることなく、職業人に変化させました。
つまり、それまでの流れにさほどの違和感もなく、「実は植木職人だった」設定を導入することに成功したのです。

これにより、家族だけでなく、近隣の人々との繋がりを描くエピソードも増えました。
ホームコメディとして、深みのある作品もあります。
ただ、この改変は原作者の赤塚不二夫氏には不評だったようです。
しかし、テレビアニメ用の改変としては、成功例ではないかと思います。


踏襲されなかった“植木職”
本作アニメ終了から約3年後の1975年10月、
アニメ第2作である『元祖天才バカボン』がスタートします。
私は第1作の再放送人気が第2作に繋がった面もあるし、
同じ日本テレビ系、制作会社も同じ東京ムービーなので、植木職設定も踏襲するかと思ったのですが、
そうはなりませんでした。

再放送でのアニメ人気以上に、原作漫画のパパの存在感が巨大化しており、
アニメ第1作のイレギュラーな設定を踏襲する余地はあり得なかったのでしょう。

Old Fashioned Club 月野景史

2019年4月27日 (土)

【アニメ】『ルパン三世』第1シリーズ1~3話をTMSが公式配信

『ルパン三世』第1シリーズの第1話から第3話が、
第2・第3シリーズの1~3話と共にyoutubeで期間限定でネット配信されています。

先日は原作者のモンキー・パンチ氏が亡くなりましたが、
その追悼企画というわけではなく、
制作元の「TMS Entertainment(トムス・エンタテインメント)」の55周年企画として、
「TMSアニメ55周年公式チャンネル」にて行われています。

TMS Entertainmentは実際にこのアニメを制作した「東京ムービー(新社)」を吸収合併した会社で、
55周年というのは東京ムービー設立の1964年からということです。

『ルパン三世』ファーストシーズンは激動の波に揉まれつつ作られた作品でした。
その経緯についてはこのブログでも記しています。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/40-9def.html

全23話のシリーズですが、不評により路線変更が図られ、
ごく大雑把にいえばアダルト→子供でも楽しめる方向にシフトしました。
今回アップされてのは初回から第3話なので、まさにガチガチのアダルト路線です。




ルパン三世 1st series 第1話「ルパンは燃えているか…?!」
”LUPIN THE 3RD" PART1 EP01(1971.10.24)






ルパン三世 1st series 第2話「魔術師と呼ばれた男」
"LUPIN THE 3RD" PART1 EP02(1971.10.31)






ルパン三世 1st series 第3話「さらば愛しき魔女」
"LUPIN THE 3RD" PART1 EP02(1971.11.07)


この3回のオープニングは共通ですが、これはここまで、
次の第4話からは山田康夫さんの語りをメインとした別のオープニングに変わります。

それはそれでいいのですが、
やはりこの3話までのOPこそ、音楽と映像のマッチングが抜群で、
アニメ史上屈指の傑作と呼ぶに相応しいものかと思います。

Old Fashioned Club  月野景史

2016年10月24日 (月)

【声優】肝付兼太さん死去/ジャイアンからスネ夫へ 藤子アニメに欠かせぬ声の名優

訃報 声優の肝付兼太さんが10月20日に亡くなりました。80歳。

Photo
肝付 兼太
(きもつき かねた、1935年11月15日 - 2016年10月20日)

声優、俳優、演出家として長く、幅広く活躍した方ですが、
やはりアニメ『ドラえもん』のスネ夫の声が有名ですし、
実はそれ以前から、藤子不二雄作品との結び付きが強い声優さんでした。

ニュースで「初代スネ夫役」などと書かれていますが、
より正確にいえば、『ドラえもん』アニメにおける「初代ジャイアン役」と言った方が正しいです。
1979年にスタートし、現在に続くテレビ朝日版の『ドラえもん』の6年前、
1973年に日本テレビで放送された『ドラえもん』最初のアニメ化作品ではジャイアンを演じていたのです。


藤子不二雄作品と肝付兼太さん
脇役として、アニメ声優の仕事が増えつつあった1965年、
肝付さんは藤子アニメの第1作であるTBS版『オバケのQ太郎』にゴジラ役で出演します。
ゴジラといっても、別に怪獣ではありません。
『オバQ』における“ゴジラ”は、ガキ大将の少年のニックネームです。
つまり『ドラえもん』におけるジャイアンとほぼ、いやまったく同じと言っていいポジションでした。

アニメ『オバQ』は空前の大ヒット。
肝付さんはその後番組として制作された『パーマン』(1967年)にも
やはりガキ大将のカバ夫役で出演します。

そして1971年、局を日本テレビに移して放送された『新・オバケのQ太郎』でも、
肝付さんは再びゴジラを演じました。
局も制作会社も変わったせいか、TBS版とは声の出演者もほとんど変わった中での再登板ですので、
肝付さんのガキ大将役がいかにはまっていたのかがわかります。


最初はジャイアン役!
そして、前述のように1973年の日テレ版『ドラえもん』でジャイアンを演じたのでした。
それまで藤子アニメのガキ大将キャラを演じ続けてきたので、無難すぎるくらいのキャスティングでした。
この時のスネ夫役は八代駿さん。『いなかっぺ大将』の西一(にし はじめ)などが知られます。

一方で、この日テレ版『ドラえもん』と同時期にNET(現テレビ朝日)で放送された藤子アニメ
ジャングル黒べえ』で肝付さんは主人公の黒ぺえを演じました。
これが初の主役・主演のようです。


ジャイアンからスネ夫へ
ここから6年ほどおいて、1979年4月よりテレビ朝日版『ドラえもん』がスタートします。
ジャイアン役は『ど根性ガエル』で番長のゴリライモを演じた、たてかべ和也さんに譲り、
肝付さんはスネ夫役に就任したのでした。
(“相棒”ともいえるたてかべさんは昨年亡くなりました。)

以来、2005年3月まで26年間、ドラえもんの大山のぶ代さん、
のび太の小原乃梨子さん、しずかの野村道子さん、そしてたてかべさんと共に、
『ドラえもん』国民的人気アニメに育て上げ、5人一緒に勇退したのです。

スネ夫の後すぐ、1980年スタートの同じテレ朝版『怪物くん』で肝付さんはドラキュラを演じます。
この役もイメージはスネ夫に近いですね。
肝付さんの声にはスネ夫やドラキュラのような、悪く言えば“小悪党”的なイメージが強く、
ガキ大将がイメージし難い人も多いかも知れません。

さて、駆け足で肝付さんの藤子アニメのおける足跡を見てきました。
もはや大河作品ともいえる『ドラえもん』において、ジャイアンとスネ夫は単純に、
悪役=ヒールと分類できるようなキャラクターではありません。

しかし、基本構成としては、のび太をいじめる悪役ポジションではあります.
ただ、その悪役の中でも、ガキ大将のジャイアンと、腰巾着で金持ちの息子のスネ夫では、キャラは好対照です。

この組み合わせは『ドラえもん』に限らず、藤子アニメの定番でした。
例えば、『オバケのQ太郎』=ゴジラとキザ男
『パーマン』=カバ夫と三重晴三
『キテレツ大百科』=ブタゴリラとトンガリ(アニメオリジナルの要素も強いですが)

肝付さんは40年にわたる藤子アニメの歴史の中で、
この重要な二つのタイプをキャラクターを演じてきたことになります。
藤子アニメを語る上で、欠かす事のできない重要な役者さんでした。

謹んで哀悼の意を表し、追悼の文を記させていただきました。

Old Fashioned Club  月野景史


以下、オリコンスタイルより引用
http://www.oricon.co.jp/news/2080424/full/
☆☆☆
声優・肝付兼太さん死去 『ドラえもん』公式が追悼「多くの子どもたちに夢と希望届けた」

『ドラえもん』の先代・スネ夫役などで知られる声優の肝付兼太(本名・肝付兼正【きもつきかねまさ】)さんが20日、肺炎のため80歳で亡くなった。きょう24日、テレビ朝日の『ドラえもん』公式サイトは肝付さんの死を悼み「多くの子どもたちに夢と希望を届けて下さった」とコメントを掲載した。

▼肝付兼太さん追悼コメント
「1979年から2005年まで26年もの長い間、“骨川スネ夫”の声優を務めていただいた、肝付兼太さんがお亡くなりになりました。多くの子どもたちに夢と希望を届けて下さった肝付兼太さんのご冥福を心からお祈りいたします。」

肝付さんは1935年11月15日生まれ。鹿児島出身。1979年から2005年まで『ドラえもん』でスネ夫役を務めたほか、『怪物くん』のドラキュラ役や『それいけ!アンパンマン』ホラーマン役、子供向け番組『にこにこぷん』のじゃじゃまる役などで人気を博した。
★★★ 

2016年2月15日 (月)

【アニメ】『キングコング』(1967)/珍しい日米合作の連続TVアニメ

テレビアニメ版の『キングコング』。
1970年代前半、特に夏休みなどの昼間によく再放送されていました。

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当時は国産のアニメに加え、主にアメリカ製の輸入アニメも多く放送されていましたが、
この『キングコング』は子ども心にも、そのどちらとも区別がつかないような面がありました。
そう感じたのは正しかったようで、このアニメはアメリカのビデオクラフト社と日本の東映動画による日米合作だったのです。


アメリカでは1966年9月10日から1969年8月31日までABC放送にて放送。
日本では『001/7親指トム』とともに1967年4月5日 - 1967年10月4日にNET系で放送されました。
全26回52話。日本での放送時間は毎週水曜19:30 - 20:00。



♪ウッホー ウホウホ ウッホッホー
   ウッホー ウホウホ ウッホッホー
  大きな山をひとまたぎ キングコングがやってくる
   こわくなんかないんだよ キングコングはともだちさ

懐かしい主題歌。勇壮でワクワクするような名曲です。
作曲はこの時代のアニメソングの名曲を多く手掛けた小林亜星氏で、作詞も担当しています。
『キングコング』に続いて流れる『001/7親指トム』は、本放送時はセットで放映されていたようですが、
再放送ではそうではありませんでしたし、単独でも観た記憶がありません。


謎の悪役
このアニメは内容も不可解な点がありました。
『キングコング』のオリジナルは1933年のRKO制作のアメリカ映画ですが、
そこにまったくない設定が登場するのです。

一番大きいのは「ドクター・フー」というシリーズを通しての悪役の登場です。
コングを捕えて利用しようとする悪の科学者です。

連続アニメにするのに、このような悪役が必要なのは判ります。
問題はネーミングです。

日本ではあまり知名度は高くないですが、「ドクター・フー(Doctor Who)」といえば、
イギリスの有名なSFテレビドラマの主人公、ヒーローです。
なぜ、この名前をつけたのでしょう。
アメリカでもこの名前のままで放送されたようです。


実はこの設定はこのアニメだけのものではありません。
同じ1967年に東宝が制作・公開した『キングコングの逆襲』にも、この悪のドクター・フーが登場しています。
米国側の要請でリンクさせた、コラボ企画だったようです。

映画でフーを演じたのは天本英世さん。『仮面ライダー』で死神博士を演じる5年ほど前のことです。
フーの子分の中には、『ウルトラマン』の主人公ハヤタ隊員役の黒部進さんの顔も見えます。
『ウルトラマン』の前の端役時代でしょうか?
いえ、『ウルトラマン』放送終了直後です。なんとも凄いキャスティングをしたものです。


それはともかく、このアニメでのコングはボビー少年と共に戦う正義のヒーローとして描かれました。
もう一度観てみたいものです。

Old Fashioned Club  月野景史

2016年2月 8日 (月)

【漫画】『サザエさん』 幻の結婚回 「週刊朝日増刊」に掲載/幻の最終回でもあり

以前このブログで、新聞連載漫画としての『サザエさん』の超入門編を書きました。
主に連載初期、特にサザエさんの結婚と、磯野家の福岡→東京転居をテーマとしました。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-d602.html

その中で、サザエさんの結婚については新聞に掲載されてはいるが、
単行本には収録されておらず、詳細は不明と書きました。

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その幻の回が今年の朝日新聞社から昨年末に発行された
「週刊朝日臨時増刊号 サザエさん2016「サザエさん」生誕70年
長谷川町子美術館開館30周年 記念特別号」
に掲載されています。

貴重な資料ですので、引用させていただきます。


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1947年5月8日付「夕刊フクニチ」掲載。

 

特にオチもなく、また新郎も登場しない、あっさりした話です。
これ以前に、新郎が登場する回があったのは判りませんが。
最後の口上を読むと、再開前提の休載ではなく、完全な最終回を想定していたようですね。

その意味では、“幻の結婚回”であると当時に、
“幻の最終回”ともいえます。

セリフがすべてカタカナ表記なのが特徴です。
どうもこの時代は、新聞掲載時はそうだったようです。


以前のブログでも記したように、
終戦を家族と共に福岡で迎えた長谷川町子さんは翌1946年4月、
福岡の地方紙「夕刊フクニチ」に4コマ漫画『サザエさん』の連載を開始しました。

しかし、一家は再上京を決意。
その準備もあり、『サザエさん』は同年8月に一旦終了します。僅か4ヶ月の連載でした。
町子さんの自伝的漫画『サザエさんうちあけ話』では、
このタイミングでサザエを結婚させたように書かれているのですが、これは誤りです。

同年暮れに東京に移った町子さんは翌1947年1月、
フクニチ紙上で『サザエさん』の連載を再開します。
この時も4ヶ月ほどで、同年5月に一旦終了。
このタイミングで書かれたのが、今回紹介した結婚エピソードでした。

この後、同年10月よりフクニチでの連載が再開されていますので、
この時からマスオとタラちゃんが登場したのでしょう。

Old Fashioned Club  月野景史

2015年10月28日 (水)

アメリカではハロウィンに仮装しない!?/ 米国アニメに見るハロウィン 『キム・ポッシブル』『おさるのジョージ』

ハロウィン(ハロウィーン Halloween)。
以前は、日本人に馴染みの薄いものでした。
元々、由来がキリスト教でもギリシャ・ローマ神話でもなく、ケルト文化。
欧州にもなく、北米大陸のみに広がった、なんとも主旨の解り難い祭事。

でしたが、その主旨を理解することもないまま、この10年ほどで日本にもすっかり定着しました。
仮装をメインとしたイベント・パーティーとしてで、場所や年代はまだかなり限定されますが。
しかし、やるとなると徹底的になるのが日本人、若者達の仮装ぶりは今や日本観光の目玉のひとつでもあるようです。

Photo_2
画像の引用元 http://curazy.com/archives/41802

一方、元からハロウィンのイメージとしてあった、子ども達が近所を回ってお菓子をもらうスタイルは定着しませんでした。
まぁこれはセキュリティや近所問題等、色々あるから難しいでしょう。
もっとも、それならアメリカはもっと難しいようにも思いますが。


アメリカでは仮装しない!?
ところで、先日テレビのワイドショーで、街角でインタビューされた外国人観光客の驚くべき発言がありました。
「日本のハロウィンはおもしろいねえ! アメリカでは仮装なんかしないよ。」
もちろん本人が日本語でそう言っていたのではありません。翻訳です。
なので、本当のニュアンスはわかりません。

これは・・・、さすがにおかしくはないですか?
もちろんアメリカだって、人により、家庭により、地域により差はあるでしょう。
しかし、アメリカの映画、ドラマなどに、ハロウィンのイベントで人々が仮装する光景はたくさん出てきます。
全然やらないとは、信じられません。

この問題を検証するなら、普通の人々の生活を描いた米国製アニメを観るのが良いかも知れません。
例えば、つい最近放送されたアニメ『おさるのジョージ』のスペシャル版「おばけ伝説のなぞ」でも、
ハロウィンの夜に仮装コンテストが行われていました。

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Dsc06758
大人も子どもも、そしておさるも、まさに町を上げてのイベントとして開催されていました。


『おさるのジョージ』(Curious George)
原作はもはや古典的な作品ですが、このアニメは2006年からの新しいシリーズです。
ただ、劇中には携帯電話も出てこず、設定は現代とは言い難いかも知れません。
まぁ『サザエさん』と同じですね。

ジョージは飼い主の黄色い帽子のおじさんと都会のマンション暮らしですが、
おじさんの別荘のある田舎を舞台にした回も多く、この話も田舎でのエピソードでした。
「ハロウィン=仮装」は生活文化としてしっかり根付いているようです。


さて、もうひとつ、アメリカ製のアニメで描かれたハロウィンを見ましょう。
私のお気に入り、ディズニー制作『キム・ポッシブル』(Kim Possible)。


2002年のスタートで、まさにその時点の現代、インターネットも携帯電話も当たり前の世界が舞台です。
主役のキム・ポッシブルは親友のロン・ストッパブルを助手役に世界を救う任務を行うヒーローですが、
普段は普通の女子高生、ミドルトンという架空の街で両親と双子の弟と暮らしています。
変身するわけでもなく、ヒーローであることはみんな知っているという設定が斬新でした。

その中の「キムはうそつき」という作品のテーマがハロウィン。
原題は「October 31st」。10月31日、まさにそのままです。

この話の興味深いのは、幼い子ども達、高校生、大人達、
三世代のハロウィンイベントが描かれているところです。


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子ども達は仮装して、お菓子をもらいに近所を回ります。
1人、大きいお兄ちゃん(ロン)がまざってますが、日本人にも比較的イメージし易い、ハロウィンの光景です。


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高校生は仲間同士でパーティー。やはり仮装して集まっています。左がキム。


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そして、大人達はチャリティーイベントを開催。
こちらもテーマは仮装、ドラキュラと魔女に扮しているのが、キムのパパとママです。

各世代が年齢に合わせたスタイルでハロウィンを楽しんでいますが、「仮装イベント」は共通しています。
仮装するのは日本だけとか、アメリカでは小さい子ども達しかやらない、などということは、さすがになさそうです。
少なくとも、今回紹介した2本のアニムを見る限り、アメリカでは老若男女が仮装してハロウィンを楽しんでいました。
イメージとしてはやはりオバケ、ホラーティストが基調のようですが、
そうでなくてはならない、というほどでもなさそうです。

Old Fashioned Club  月野景史

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