33.ミステリ

2018年4月 7日 (土)

【ドラマ】アガサ・クリスティ『アクロイド殺し』の翻案 『黒井戸殺し』 4/14放送 ※原作ネタバレあり

★このブログページには原作小説のネタバレがあります。

アガサ・クリスティの傑作ミステリ『アクロイド殺し』(『アクロイド殺害事件』)を
原作とした翻案ドラマ『黒井戸殺し』が4月14日フジテレビ系で放送されます。
http://www.fujitv.co.jp/kuroido/index.html


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先日も書きましたが、近年クリスティ原作のスペシャルドラマが毎年のように放送されています。
2015年1月にフジテレビが『オリエント急行殺人事件』、
2017年3月にテレビ朝日が『そして誰もいなくなった』を放送。
今年の3月にはテレ朝が『パディントン発4時50分』と『鏡は横にひび割れて~』を原作としたドラマを放送しました。

そして今度はフジが『アクロイド殺し』。
2015年の『オリエント』と同様に三谷幸喜さん脚本、
原作のエリキュール・ポアロにあたる探偵役を野村萬斎さんが演じるので、
『オリエント』の続編というか、同一シリーズものといっていいでしょう。



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アガサ・クリスティ(1890年9月15日 - 1976年1月12日)。
イギリス出身。20世紀のミステリの女王。


その数多い著作の中でも代表作を3本挙げろと言われたら、
前述の『オリエント急行殺人事件』と『そして誰もいなくなった』、
そしてこの『アクロイド殺し』ということになるでしょう。

タイトルにある「アクロイド」とは殺人被害者の名前。
(ですので、今回の日本版ドラマでは黑井戸さんという人が殺されるのでしょう。)

しかし、本作は代表作であると同時に異色作、そして問題作ともいわれます。
何が異色であり、問題なのか。
原作小説について、ネタバレも含めて記します。


『アクロイド殺し』(『アクロイド殺害事件』)
原題 『The Murder of Roger Ackroyd 』1926年

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物語の語り手が犯人
本作の主人公はクリスティが生んだミス・マーブルと並ぶ名探偵エリキュール・ポアロ。
そして登場人物の1人が一人称の語り手を務め、その主観により語られる一人称小説です。
つまり、シャーロック・ホームズシリーズがワトスン医師により語られる記録の体裁を持つのと同じスタイル。

本作で語り手役を務めるのはジェイムズ・シェパード。
ワトスンと同じく医師であり、ポアロの助手的役割を務めます。
ただし、彼は本作で初登場の人物で、これ以前の作品でポアロの助手だったことはありません。
それまでのポアロ登場作では、別の人物が語り手を務めていました。

そして物語のラスト、このシェパード医師こそがアクロイド殺害の犯人だったことが判明するのです。


一人称小説の語り手が犯人!
大胆にして異色、そして画期的なトリックです。
同時に、謎解き小説として読者に対してフェアと言えるのか?
アンフェアではないかとの論争を呼びました。

ですので評価が分かれる面もあるのですが、
クリスティの代表作のひとつ、そしてミステリ史上の傑作としての評価はほぼ固まっていると思います。

それにしても、このような奇抜なアイデアですから
クリスティもあらゆるトリックを散々やり尽くした末に出してきたのかと思いきや、
1920年のデビューから1973年に至る創作活動の間で
本作が1926年というごく初期に書かれたのも意外です。
彼女の先進性、大胆なチャレンジ精神を感じます。


映像化の難しい作品
本作は映画やドラマ化の難しい作品とされます。
日本で映像作品かされるのは初めてとのこと。

ホームズシリーズをはじめ、一人称ミステリの映像作品化は珍しくありませんが、
その場合、原作が一人称小説である意味は薄れ、
三人称小説を原作とした場合と同様の客観的な表現・描写になるのがほとんどだと思います。
その点では、『アクロイド』も映像化すること自体が極端に難しいとも思えません。

しかし、『アクロイド殺し』は一人称の語り手が犯人であることが最大のトリックであり、売りです。
その部分をぼやかして映像化してしまったら、何が作品の魅力になるのか?
ここをどう捉え、どのような切り口で映像として表現するかがポイントになると思います。

もちろん、真犯人が原作通りなのかは断言はできません。
大胆に変えてくる可能性もゼロではありませんが、
いずれにしろに三谷幸喜さんの腕の見せどころでしょう。


粒ぞろいで数多い主要キャスト
前述のように原作のポアロにあたる主役の名探偵・勝呂武尊(すぐろ・たける)を演じるのは
日本の伝統芸能・狂言の第一人者と言われている野村萬斎さん。
そしてシェパードにあたる医師・柴平祐は大泉洋さん。
宣伝物等を見る限り、この2人のバディドラマみたいです。


ところで、私は原作小説を少年時代に読みました。
真相に辿りつくことはできませんでしたが、
読み進むにつれ「なんかおかしい」と違和感を覚えていました。

推理小説ですから、犯人は誰かを推理しながら読むのですが、
犯人候補となる人物がラスト近くになってもさっぱり浮かび上がってこないのです。
そうしたら、語り手が犯人だったというオチでした。


今回の出演者一覧を見ると、
クリスティ物にありがちな超豪華キャストというよりも、
粒ぞろいの俳優を、とにかく数多く揃えている印象です。
原作小説にはこんなに多くの主要人物がいただろうかと疑問に感じたりしています。

そして大泉さんをはじめ、三谷さんが執筆した大河ドラマ『真田丸』の出演者も多い。
遠藤憲一さん、斉藤由貴さん、吉田羊さん、松岡茉優さん、藤井隆さん、今井朋彦さん。
他に寺脇康文さん、余貴美子さん、草刈民代さん、向井理さん、佐藤二朗さん、和田正人さんら。

この俳優達が脇役の登場人物をいかに演じ、どんな『アクロイド殺し』になるか。
私も少年時代から馴染んだ小説のドラマ化であり、楽しみです。


◆◆◆
ところで、このブログでも書いてるように、
不倫騒動で『警視庁・捜査一課長』と『西郷どん』への出演を辞退した斉藤由貴さんが、
このドラマには出演します。
といっても、実はこのドラマの撮影は不倫発覚前だったからで、ドラマ復帰したわけではないようです。

このドラマはもう1人、不祥事で謹慎中の小出恵介さんも本来出演していて、
その部分は撮り直したともいわれています。
難産の末にようやく放送となったということか。
出来はどうでしょうか?

Old Fashioned Club  月野景史

2018年3月26日 (月)

【ドラマ】「アガサ・クリスティ 二夜連続ドラマスペシャル」/ミス・マーブル作品をテレ朝が2作放送

テレビ朝日は3月24日と25日に『アガサ・クリスティ 二夜連続ドラマスペシャル』を放送しました。


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ここのところ毎年のように、豪華キャストでクリスティ原作の日本版翻案スペシャルドラマを
放送しているような気がしますが、実はテレ朝版とフジテレビ版があるのです。

2015年1月にフジテレビが『オリエント急行殺人事件』を放送しました。
2017年3月にはテレビ朝日が『そして誰もいなくなった』を放送。
こちらは渡瀬恒彦さんの遺作としても話題になりました。
そして今年は今回の二夜連続スペシャルに続き、
4月14日にフジが『アクロイド殺し』を原作とした『黒井戸殺し』を放映予定です。


さて、今回の二夜連続ドラマスペシャルは前後編ではなく、別々の作品を2日連続で放送しました。
24日『パディントン発4時50分~寝台特急殺人事件~』
25日『大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~』

共に上に名前が挙がった3作ほど有名ではありませんが、
クリスティが生んだエルキュール・ポアロと並ぶ名探偵ミス・マーブルが登場する作品が原作です。



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ミステリ・推理小説の女王アガサ・クリスティ

私も好きな作家ですので、このように翻案ドラマが作られるのは嬉しいことです。
もちろん、国も時代も違う舞台の作品なので、脚本や演出は大変でしょうが、
観る方もあまり細かいことは拘らず、古典作品の雰囲気を楽しみたいところです。

ただ、そのようなスタンスに立ったとしても、今回の2本はちょっと残念な出来でした。


『パディントン発4時50分~寝台特急殺人事件~』
ミス・マーブルは安楽椅子探偵タイプとされます。
つまり、自分自身はあまり捜査に動かず、伝聞で得た情報から推理をするというスタイルの名探偵。
特にこの原作ではスーパー家政婦の女子を屋敷に潜入させ、彼女が実質の主人公として活躍するのです。

今回のドラマではマープルのポジションを天海祐希さん、家政婦を前田敦子さんが演じました。
しかし、アクティブなイメージのある天海さんにほぼ原作通りの安楽椅子探偵をさせており、
ここはちょっと無駄使いで、もったいなく感じました。

前田さんは好演だったとは思いますが、
せっかくの天海さん主演なのだから、家政婦役にするか、あるいはもっと話を変えるかして、
ともかく天海さん自身が屋敷に乗り込んで活躍するようにした方がよかったです。

その他の人物描写も全体に甘いような気がしました。


『大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~』
こちらは昨年の『そして誰もいなくなった』で最後に謎解きをする警視庁の刑事役だった
沢村一樹さんが同じ役で主演として名探偵ポジションを担いました。
この時点でマーブルとはまったく違う探偵役によるミステリドラマです。

これはこれでいいとして、捜査する側がプロの警察官になったのだから、
後は犯人と被害者、及び周囲の人間のドラマをしっかり描かねばならないのですが、
特に犯人の動機や心情が共感も理解すらできませんでした。


というわけで内容は今ひとつだった2本ですが、
クリスティ作品のクラシカルで荘厳な、ちょっと現実離れした雰囲気を味わうのは楽しく、
次の作品に期待したいところです。


視聴率は
24日『パディントン発4時50分~寝台特急殺人事件~』12.7%
25日『大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~』は9.8%

『バディトン』は合格点。
『鏡は』はもう少しで二桁でしたが、裏番組も強い改変期としてはますまずというところでしょうか。

Old Fashioned Club  月野景史

2017年3月25日 (土)

【ドラマ】『そして誰もいなくなった』渡瀬恒彦遺作 前編終了/原作通りの結末か、サプライズはあるのか?

3月25日(土)、26日(日)21時にテレビ朝日で放送される
『二夜連続ドラマスペシャル そして誰もいなくなった』。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2017/03/32526a-0710.html


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初日の放送が終了し、残りは後半の解決編を残すのみです。

ミステリの女王アガサ・クリスティ(1890年9月15日 - 1976年1月12日)代表作のドラマ化。
国も時代も違うのだから、原作小説そのままというわけにはいく筈もありませんが、
可能な限りで極めて原作に沿って手堅く作られていると思います。
孤島に集められた10人も、きっちり原作のキャラクターに合わせられていました。


さて、結末はどうなるのでしょう。
ひとつの手法として、今回はそうしないとは思いますが、
前半は原作通りにやっておいて、後半は思い切って変える、
というサプライズもないとはいえません。

その場合、キーマンは向井理さんでしょうか。
向井さんの役は一番先に殺され退場してしまいました。
原作通りならそのままです。

ただ、大物俳優が揃えられた本作のキャストですが、
現在、連続ドラマで主役を務められる主演スターはそれほど多くはありません。

刑事役の故沢村一樹さんを除く離島に集められたメンバーとしては、
故渡瀬恒彦さんの他には、今回主演の仲間由紀恵さんと、後は向井さんくらいでしょう。
実際、クレジット順でも向井さんは仲間さんに次ぐ二番手です。
それにしては退場が早過ぎました。

のみならず、全員が過去について語るシーンでも、
向井さんだけが赤裸々にありのままを語っているようにも思え、かえって不自然だったり、
また役柄の設定も、他のキャラに比べ、原作からちょっと離れているなど、
違和感を覚える面もあります。


しかし、今回は手堅く「名作の忠実な映像作品化」といくように思います。
後は刑事役の沢村一樹さんと荒川良々さんによる解決編をどう見せるかというところでしょうか。

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このホームズ&ワトスン的なコンビもなかなかユニークです。

Old Fashioned Club  月野景史

2017年3月21日 (火)

【ドラマ】『そして誰もいなくなった』渡瀬恒彦遺作 3月25日・26日放送/A・クリスティの傑作ミステリ

3月25日(土)、26日(日)21時、テレビ朝日にて、
『二夜連続ドラマスペシャル そして誰もいなくなった』が放送されます。
http://www.tv-asahi.co.jp/soshitedaremo/
3月14日に死去した渡瀬恒彦さんのおそらく最後の出演作、遺作ということになると思います。


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渡瀬恒彦さんの遺作
渡瀬さんの闘病についてはこのプログでも何度か取り上げてきました。

一昨年に胆嚢がんが発覚した渡瀬さんはその年の末に仕事復帰しましたが、
昨年夏に体調を崩し、長く務めたTBSの『十津川警部シリーズ』の降板が伝えられました。
しかし、今年に入ってこのドラマの撮影中である事が報道されたのです。(→こちら

次いで12シーズン目を迎える『警視庁捜査一課9係』の制作も発表されたのですが、
残念ながら収録に参加する事なく亡くなりました。
ですので、今回の『そして誰もいなくなった』が最後に出演した作品、遺作という事になると思います。


女王アガサ・クリスティの傑作
さて、渡瀬さんの件は別としても、
このドラマはアガサ・クリスティの名作小説の、豪華キャストによるドラマ化として注目されます。

ミステリ、推理小説の女王アガサ・クリスティ(1890年9月15日 - 1976年1月12日))
『そして誰もいなくなった』は1939年刊行。
彼女の数多い作品の中でも『オリエント急行の殺人』『アクロイド殺害事件(アクロイド殺し)』と並ぶ代表作でしょう。
その中でもNo.1、最高傑作に推される事が多い作品です。

『オリエント』『アクロイド』と違うのは、
クリスティが生み出した名探偵エルキュール・ポアロが登場しないこと。
のみならず、クリスティ作品のもう一人の名探偵、ミス・マープルも出ません。
いわゆる“名探偵”が登場しない作品です。

絶海の孤島に集められた10人の間で起こる連続殺人。
犯人は果たして誰か?
外界から閉ざされた空間で起こる事件、いわゆる“クローズドサークル”の代表的作品です。


二つの結末
実はクリスティは原作発表後、舞台化にあたり自ら戯曲用のストーリーを書きました。
そちらでは結末が少し違います。
その後、この作品は世界中で何度か映画、テレビドラマとして映像化されてきましたが、
基本的に戯曲版が採用されることが多かったようです。
また、意外と“孤島”の舞台設定が変えられる事も多かったのです。

今回のドラマは“孤島”という原作通りの舞台設定が採用されています。
そして、公式サイトのあらすじを読む限り、戯曲版ではなく原作小説に沿った展開であるようです。
そうなると、集められた人物の職業から、真犯人も推測できるのですが、
さてそこは原作通りに描くのか?

私は原作の展開の荘厳さが好きなので、その通りに描いてほしいと思うのですが、
この配役でその通りにやってしまうと、2日連続のスペシャルドラマとしては
ちょっと意外性がなさ過ぎかも知れませんが。

原作が有名過ぎるだけに難しいですね。
さて驚愕の真相は・・・? 続きは明日までお待ちください!
とやって、原作通りの結末ではちょっと寂しい気もします。
もっとも、それもまた新鮮かも知れませんが。


公表されている出演俳優は以下の12人。

仲間由紀恵 向井理 柳葉敏郎 余貴美子 國村隼
藤真利子 大地真央 橋爪功 津川雅彦 渡瀬恒彦
沢村一樹 荒川良々

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3月3日の制作発表に揃った11人のキャストと和泉聖治監督(前列右端)。
残念ながら渡瀬さんの列席はありませんでした。


渡瀬さんを含む12人のうち、
沢村さんと荒川さんは事件後の島に渡って捜査を担当する警察官のようです。
残りの10人が島に集められたということですので、ここも原作通りです。

記者会見での荒川さんの発言によれば、沢村さん以外のキャストとは撮影で一緒になってはいないようです。


公式サイトからあらすじを引用しておきます。
☆☆☆
八丈島沖に浮かぶ孤島・兵隊島。その孤島に立つ『自然の島ホテル』のオーナー・七尾審によって10人の男女が島に呼び寄せられる。

七尾からの招待状を受け取りやってきたのは元水泳選手の白峰涼(仲間由紀恵)、元東京地裁裁判長・磐村兵庫(渡瀬恒彦)、元国会議員・門殿宣明(津川雅彦)、救急センター医師・神波江利香(余貴美子)、元傭兵・ケン石動(柳葉敏郎)、元女優・星空綾子(大地真央)、ミステリー作家・五明卓(向井理)、元刑事の久間部堅吉(國村隼)の8人。島に到着するも、ホテルの執事夫婦・翠川信夫(橋爪功)とつね美(藤真利子)からオーナーの七尾は不在であることを伝えられる。

これから何が起こるのか、自分たちはなぜこの島に招待されたのか―期待と不安に包まれながら用意された夕食をとっていると、突如としてどこかから彼らの過去の罪を暴露する“謎の声”が聞こえてくる。

それぞれの胸の内に去来する過去の出来事…。10人が互いの過去を探り合う中、突然招待客のひとりが目の前で殺害される! そしてそれをきっかけとするように、ひとり、またひとりと招待客が殺されていき…?
★★★

このあらすじを読めば、原作小説の内容を憶えている人なら、犯人はすぐに判ります。
原作通りならば・・・。

脚本は大ベテランの長坂秀佳さん。
近年、テレビドラマの仕事は多くはありません。
監督は『相棒』や渡瀬さん主演の『おみやさん』などを手掛けてきた和泉聖治さん。
さて、原作通りにやるのか、捻るのか?

Old Fashioned Club  月野景史

2015年11月 8日 (日)

【相棒】アガサ・クリスティ『オリエント急行の殺人』を基とした4本のエピソード

ミステリの女王アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』。
(または『オリエント急行殺人事件』 原題「Murder on the Orient Express」1934年)

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欧州を縦断する長距離列車内で起きた殺人事件に名探偵エルキュール・ポアロ(ポワロ)が挑む。
その舞台設定の面白さに加え、明かされた驚愕の秘密とプロットで知られる傑作推理小説。
後発のミステリーに与えた影響も少なからぬものがあります。

『相棒』シリーズにも、この作品をベースとした話が、少なくとも4本あると思います。
といっても、『オリエント急行』のどの要素を基とするかで、そのテイストはだいぶ変わってきます。

もっとも分かり易いのはこの話でしょう。

◆season6 第10話 「寝台特急カシオペア殺人事件」
脚本:戸田山雅司 監督:和泉聖治
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_06/contents/story/0010/
密室状態となった長距離電車内で起こった殺人事件を、
乗り合わせた杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)が捜査する。
舞台設定がそのまま、そもそもサブタイトルだけ聞いても、誰でもすぐに思い付きます。

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ただ、この回以外に同様の舞台設定のエピソードは思い浮かびませんね。
他の3本はどのエピソードなのか?

改めて、『オリエント急行殺人事件』の特徴を挙げてみます。

①外界から閉ざされた、大きな密室状態の寝台列車内での殺人事件。
②犯行の動機は過去の少女誘拐殺人犯への復讐。
③同じ意志を持つ複数の人間による計画的犯行。
④関係者が他人を装って集まる。

「カシオペア」はまさに①です。
①をモデルにした、つまり密室状態の長距離列車内での殺人扱ったを作品は
これ以外に『相棒』はないでしょう。

では、他の要素はどうでしょうか?

実は、②と③のテイストを併せ持つ作品が二つあります。

◆season5 第3話 「犯人はスズキ」 
脚本:岩下悠子 監督:森本浩史
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_05/contents/story/0003/
列車を“町内”あるいは“町内会”という器に移し替えたような異色の作品。
少女誘拐殺人事件への復讐という点はまさにそのままです。

ただし、復讐殺人自体は少女の父親による突発的なもので、計画性に乏しい。
町内会の人々が父親を庇おうとしての偽装工作が計画的で、
それを右京と亀山が崩していくのがメインストーリーでした。

大変面白い作品なのですが、偽装の過程で無関係の人間(犯罪者ではあるが、極悪人とまではいえない)を
計画の為に巻き込み、殺害してしまう点は同情できず、少々残念でしたが。

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『科捜研の女』に研究員→所長役で長くレギュラー出演する
斉藤暁さんの、現在までて唯一の『相棒』出演回です。
斉藤さんは元警官で、計画の首謀者の1人の役でした。

斉藤さんは水谷豊さんのひとつ年下の1953年生まれで、当時53歳。
劇中では警察官を定年(60歳)で退職したとは明示されていなかったと思いますが、
印象としては定年退職後の元警官という感じでした。


◆season8 第11話 「願い」 脚本:太田愛 監督:安養寺工
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_08/story/0011/index.html
これも少女誘拐殺人犯への復讐がテーマ。
ただ、少女といっても原作や「スズキ」は幼児ですが、本作では女子中学生なので、だいぶ年上です。
2代目相棒・神戸尊(及川光博)時代の作品。

この回の復讐は誘拐犯の殺害ではありません。
そもそも、少女の遺体は見つかっておらず、行方不明の状態です。
ですので、計画者達の目的は真相の解明と、犯人の告発ですが、
時効が過ぎているので、過去の犯罪で真犯人が逮捕されることはありません。

そこで、真犯人に新たな犯行をさせて逮捕させ、併せて過去の罪も明らかにして破滅させるのが目的です。
その為、少女の親族、親友、そして冤罪被害にあった男性の親族らが協力しての複雑な計画が描かれました。
無関係に見える人間達が実は繋がっているという点で、④の要素も入っています。
一方で、舞台設定の密室性は薄いですが。

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素人の復讐劇としては計画が大胆かつ念入り過ぎて、プロットに無理がありますが、
計画成功の為、忘れたい過去として事件に無関心を装う関係者達の隠された強い思いは感動的で、
私の好きな作品です。


さて、まだ他にあるでしょうか?
もうひとつ、④をフィーチャーした話があります。

◆season9 第12話 「招かれざる客」 脚本戸田山雅司 監督:近藤俊明
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_09/story/0012/index.html
郊外のオーベルジュに偶然居合わせた客達、実はみな関係者であった。
そこに招かざる客の右京が現れて・・・。

過去の因縁で結ばれた人々が他人を装い、ひとつの場所に集う設定は『オリエント急行』に非常に近いです。
しかも、そのほとんどがある家の使用人であった点も同じ。
誘拐殺人は関係ありませんが、その家の娘に纏わる話であることも共通しています。

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そして、犯人だけではなく、探偵側の右京と神戸の計画的小芝居も魅力です。
更にいえば、全体に芝居がかっていて、舞台劇を思わせる雰囲気は、
クリスティ作品の持ち味が色濃く反映された作品と言えるのでしょう。

列車も誘拐殺人も復讐もないので、この回を『オリエント急行』と結び付ける人はあまりいないかも知れませんが、
元使用人達の主(あるじ)と、その家の娘(孫)への強いという点は共通しています。
作品の持つテイストでいえば、もっとも近いかも知れません。

この回はそれ以外にも、なにやらマニアックな雰囲気が漂っています。
小芝居の中で右京が演じたキャラは、『熱中時代』より前の若い頃の水谷さんの
封印されたアウトロー的な演技を彷彿とさせるものがあったりとか。
これも私の好きな作品です。


以上、4作を見てきました。
実は、ネット上にもこの4本のどれかを挙げて、『オリエント急行の殺人』との関係に言及する意見は散見されます。
しかし、4本まとめて挙げてる方はいないようです。

では、『オリエント急行の殺人』と『相棒』の決定的な違いは何か?
これは『相棒』ファンなら誰でもわかるでしょう。
ボアロと違い、右京は決して犯罪を故意に見逃したりしません。
私は、ポアロの判断も好きですが。

Old Fashioned Club  月野景史

2015年7月22日 (水)

【人形劇】『シャーロックホームズ』/2015年夏『ホームズ&ワトソン 推理の部屋』として放送

昨年2014年にNHK Eテレで放送中されて好評だった
学園ミステリー人形劇『シャーロックホームズ』。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-5e10.html
この夏休みに全10回の予定で放送されます。

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ホームズ&ワトソン 推理(ミステリー)の部屋
2015年7月23日より毎週木曜日 NHK Eテレにて23:00より30分。全10回。
http://www.nhk.or.jp/sh15/


夏休みと書きましたが、夜の11時なので、リアルタイムで子どもの観る時間帯でもないですね。
公式サイトにもあまり詳しい放送内容が描かれてはいないのですが、
既に放送された直前スペシャルによると、
単なる再放送ではなく、昨年放送された全18話からのセレクションに
新構成のワトソンからの挑戦状「奇妙な謎☆クイズ」の2章立てとなるようです。


学園ミステリー『シャーロックホームズ』
古くは『ひょっこりひょうたん島』から、『新八犬伝』『プリンプリン物語』など
数多くの名作を生み出してきましたNHKの人形劇ドラマ。

その系譜にあたる本作は、題材をサー・アーサー・コナン・ドイルによる世界的人気キャラクター、
名探偵シャーロック・ホームズと、助手役を務めるジョン・H・ワトソン医師に求めました。

そして脚本を、NHKでは2016年の大河ドラマ『真田丸(堺雅人主演)』も決定している
三谷幸喜氏が担当することで話題を集めました。


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学園ミステリーと銘打っている通り、この人形劇ドラマではホームズとワトソンを全寮制の寄宿学校生にして、
その他、原作に登場する人物もすべて学校関係者として描いています。
1本だけ、学校の近所で起こった事件以外は、殺人も起こりません。
そして、原作では1話だけのゲストキャラクターが、その後も何度か登場し、
セミレギュラー化していくのも特徴です。
登場するのは寄宿学校の生徒か教師、職員、出入り業者等の関係者なので、再登場するのが自然なのです。
ハドソン夫人は寮母さんです。

シャーロック・ホームズの兄のマイクロフトをヒールとして描くなど、
人物設定への疑問もなくはありませんが、大幅な脚色は概ね上手くいっていると思います。

クラシカルな雰囲気も良し。
画家井上文太氏デザインのパペットも魅力的。
ゲストにはいわゆる声優さんだけではなく、大物俳優も多数登場します。
宮沢りえさん、中村梅雀さん、妻夫木聡さん、藤原竜也さん等々。
美しい出来のパペット達に息吹きを与えています。

もちろん、主役はこの2人。

◇シャーロック ホームズ
人並みはずれた観察眼と洞察力をもつ15歳。
ナイーブな性格。友達は少なく、学校では変わり者として知られる。
持ち前の推理力を生かし、ワトソンとともに校内で起こる奇妙な事件を次々に解決していく。
声:山寺宏一

◇ジョン・H・ワトソン
ビートン校の転入生。ベイカー寮の221Bでホームズと同室になる。
心優しく献身的な性格の15歳。元ラグビー部だったが怪我のために引退。
ホームズと出会い、彼が解決した事件の記事を学校新聞に執筆することになる。
声:高木渉

クラシカルでファンタジックな、夏の夜にもまたぴったりの人形劇ワールドです。

Old Fashioned Club  月野景史

2014年11月29日 (土)

【人形劇】『シャーロックホームズ』三谷幸喜脚本/なかなか面白い学園ホームズ

NHK Eテレで放送中の人形劇『シャーロックホームズ』。
これがなかなかおもしろいです
http://www.nhk.or.jp/sh15/

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「Eテレ」といわれても解り難いですが、つまりNHK教育テレビのことです。
NHKの人形劇ドラマといえば、古くは『ひょっこりひょうたん島』から、
『新八犬伝』『プリンプリン物語』など、数多くの名作を生み出してきました。
個人的には『ネコジャラ市の11人』の名も挙げておきます。

本作もその系譜にあたると言っていいでしょうが、
まずなんといっても題材を世界的人気キャラクターである
シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトソンに求めたことが特筆されています。

そして、人形劇化にあたり、脚本がかの三谷幸喜氏。
超有名脚本家! NHKでは2016年の大河ドラマ『真田丸(堺雅人主演)の脚本も決定しています。


19世紀末、サー・アーサー・コナン・ドイルが生み出した世界一有名な私立探偵シャーロック・ホームズと、
その友人で助手、そしてホームズの活躍の記録係も務めるジョン・H・ワトスン医師。
生誕から100年以上を経過してもテレビに映画なと活躍を続ける二人。

その二人と三谷氏とのコラボとは、話題性が強すぎて鼻につくくらいですが、
これが三谷氏の強い個性を感じさせ過ぎず、良い感じに出来上がっているのです。


設定(公式サイトより)
舞台はロンドン郊外にある全寮制の名門校・ビートン校。
この学校にオーストラリアから一人の少年が転校してくる。
彼の名はジョン・H・ワトソン。正義感が強く心優しい少年だ。

ワトソンは寮の221Bの部屋で、問題児と呼ばれる少年と同室になる。
彼の名はシャーロック・ホームズ。クールで人を寄せ付けない雰囲気を持つ少年だが、
ワトソンを一目見るなり、彼の経歴を言い当てるなど卓越した観察眼と洞察力の持ち主だった。

やがて二人は学校内で起こる「奇妙な事件」に巻き込まれていく。
ホームズは持ち前の推理力を発揮し、事件の背後にある謎を解き明かしていく・・・。


つまり、この人形劇ドラマではホームズとワトソンを寄宿学校生にして、
その他、原作に登場する人物もすべて学校関係者として描いていくのです。
当然ながら、殺人事件は起こりません。
大幅な脚色がなされているのですが、うまい感じにいってると思います。
クラシカルの雰囲気、画家井上文太氏デザインのパペットも魅力的。
タイトルは「シャーロック」と「ホームズ」の間に「・」(ナカグロ)がないのが特徴です。

既に、今年の3月と8月に試験的に放送がされているのですが、
この10月から本格放送が始まりました。
来年の2月まで全18話が放送予定。
是非一度、視聴を薦めます。

Old Fashioned Club  月野景史


放送予定・概要は以下の通り。

シャーロックホームズ
2014年10月12日~2015年2月15日
毎週日曜日 17:30 Eテレ   
再放送 毎週金曜日 0:00(木曜深夜) Eテレ

第1回  10月12日最初の冒険 前編
第2回  10月19日最初の冒険 後編
第3回  10月26日困った校長先生の冒険
第4回  11月2日消えたボーイフレンドの冒険
第5回  11月9日赤毛クラブの冒険
第6回  11月16日生真面目な証人の冒険
第7回  11月23日イヌ語通訳の冒険
第8回  11月30日愉快な四人組の冒険 前編
第9回  12月7日愉快な四人組の冒険 後編
第10回 12月14日失礼な似顔絵の冒険
第11回 12月21日まだらの紐の冒険
第12回 1月4日バスカーヴィル君と犬の冒険 前編
第13回 1月11日バスカーヴィル君と犬の冒険 後編
第14回 1月18日百匹のおたまじゃくしの冒険
第15回 1月25日青いシロクマの冒険
第16回 2月1日ダグラスさんのお屋敷の冒険
第17回 2月8日本当に困った校長先生の冒険
第18回 2月15日最後の冒険

シャーロック ホームズ
人並みはずれた観察眼と洞察力をもつ15歳。ナイーブな性格。友達は少なく、学校では変わり者として知られる。持ち前の推理力を生かし、ワトソンとともに校内で起こる奇妙な事件を次々に解決していく。
声:山寺宏一

ジョン・H・ワトソン
ビートン校の転入生。ベイカー寮の221Bでホームズと同室になる。心優しく献身的な性格の15歳。元ラグビー部だったが怪我のために引退。ホームズと出会い、彼が解決した事件の記事を学校新聞に執筆することになる。
声:高木渉

ハドソン夫人
ベイカー寮の寮母さん。気のいい世話好きな女性。歌とともに登場し、いつも自慢のお手製クッキーを生徒たちに配っている。ホームズのことを特に可愛がっており、学園内で唯一、彼のことを「シャーロック」と呼んでいる。
声:堀内敬子

2014年4月18日 (金)

【ロング・グッドバイ】 ハードボイルドの代表作『長いお別れ』が日本を舞台にドラマ化

明日、4月19日より、NHKで『ロング・グッドバイ』というドラマが始まります。

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※追記  第1話終了後、劇中でのギムレットの扱いについて記しました。→こちらをクリック

「ロング・グッドバイ The Long Goodbye」といえば、
レイモンド・チャンドラーのバードボイルド小説『長いお別れ』の原題です。
今回のテレビドラマはこの小説を原作とし、
舞台をアメリカから、1950年代の東京に移して描かれるようです。

この小説については、以前このブログに書いたことがあります。
小説中に登場する、あまりに有名なセリフ
「ギムレットには早すぎる」を題材に、カクテル、ギムレットをテーマとして。

私の過去ブログの中でも、安定した人気のあるページです。
よろしければご覧ください。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-2284-1.html
※ただし、一番下に原作小説のネタバレになってしまう記述がありますので、ご注意を。

ドラマでは、ギムレットはちゃんと登場するのでしょうか?
予告編を見ると、別の酒を飲んでいるようにも見えますが。


それはともかく、『長いお別れ』について、改めて簡単に記します。
アメリカの高名なハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーの作。1953年刊行。
チャンドラーが創造した私立探偵フィリップ・マーロウを主役とするシリーズの第6作。
チャンドラー自身、マーロウ、そしてこの小説が、
ハードボイルドという分野の代名詞と言っていいほどの傑作・有名作です。

小説の冒頭、マーロウはテリー・レノックスという男と友人になります。
しかし、レノックスは何者かに殺されてしまいます。
そして、マーロウはこの事件の捜査に関わっていきます。

日本では 清水俊二氏訳の『長いお別れ』のタイトルで知られてきましたが、
2007年に村上春樹氏の訳で、『ロング・グッドバイ』としても刊行されています。

「ギムレットには早すぎる」の他にも、
「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」、
「警官はけっしてさよならをいわない。機会があったら容疑者の首実検の列のなかで顔を見たいと思っているのだ。」
などの名セリフで知られます。


さて、今回のドラマですが、
舞台をアメリカのロサンゼルスから日本に移してですから、
原作そのままともいかないでしょう。

主演は浅野忠信さん。
もちろん、マーロウにあたる役でしょう。
レノックスが綾野剛さんのようです。
綾野さんは一人で演じるのでしょうか・・・、
まぁ、ネタバレになるので、これくらいにしておきます。

ロング・グッドバイ
2014年4月19日(土)スタート
NHK総合テレビ 毎週土曜日 午後9時00分~9時58分 連続5回
原作:レイモンド・チャンドラー
出演:浅野忠信 綾野剛 小雪 古田新太 冨永愛 太田莉菜 田口トモロヲ 滝藤賢一 堀部圭亮 高橋努 泉澤祐希
福島リラ やべきょうすけ 石田えり 吉田鋼太郎 遠藤憲一 柄本明

http://www9.nhk.or.jp/dodra/goodbye


Old Fashioned Club  月野景史

2013年1月28日 (月)

【小説】江戸川乱歩翻訳のポー作品『赤き死の仮面』 初の書籍化

江戸川乱歩がエドガー・アラン・ポーの作品を唯一自ら翻訳した『赤き死の假面(仮面)』が、
1949年の探偵小説雑誌「宝石」での掲載以来、初めて書籍化されたと、
YOMIURI ONLINEが伝えています。

The_masque_of_the_red_death
『赤き死の仮面』1919年の挿絵より

エドガー・アラン・ポーはアメリカの作家。いわばミステリ作家の始祖。
江戸川乱歩はそのポーの名を模した、日本のミステリ界の父。
乱歩によるポーの翻訳となれば、ミステリや幻想小説のファンとしては垂涎の作、
これは読みたいです。

なのですが…、ちょっと気になる点もあり、
とりあえずニュース記事を引用します。

☆☆☆
乱歩訳ポー作品、初の書籍化…「赤き死の假面」
作家、江戸川乱歩(1894~1965)が、ミステリーの先達、エドガー・アラン・ポー(1809~49)作品を唯一自ら翻訳した「赤き死の假面かめん」が、1949年の探偵小説雑誌「宝石」での掲載以来、初めて書籍化された。

乱歩にとってポーは、ペンネームに名前を借用したほど愛読した作家で、日米のミステリーの祖の“合作”が約60年ぶりによみがえった。

この本を出したのは、豪華本の文化を守ろうと昨年、一人で限定版専門の出版社、藍峯らんぽう舎を設立した新潮社OBの深江英賢ひでたかさん(64)。敬愛する乱歩関連の作品から、埋もれていた本作を見つけ、第1弾として書籍化した。箱入り牛革の背表紙の豪華装丁。疫病に襲われた国の宮廷で起こる怪異譚たんが、〈暗黒と、頽廢たいはいと、「赤き死」とが凡すべてを支配した〉など、幻想味あふれる文体で訳されている。
(2013年1月27日17時36分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20130126-OYT1T00603.htm?from=ylist
★★★

さて、この記事を読んでも、肝心の書籍の価格等、データがよく判りません。
普通に書店で売ってるのでしょうか?

そこでネットで調べると、発行元のらんぽう舎(藍峯舎)のサイトがありました。
ここに詳しく書かれています。
http://www.rampousha.co.jp

このサイトによると、同書は既に昨年12月末に発売されているようです。
内容は表題作に、乱歩によるポーの評論12編を加えて、
350部限定 価格は10.000円。
この部数ですから、一般書店には流通しておらず、購入方法は限定されます。

そして、10.000円という価格は…おいそれとはいきませんね。
とりあえず、価格についてはこれ以上言及しません。
この『赤き死の仮面』について少し記します。


『赤き死の仮面』(The Masque of the Red Death)
エドガー・アラン・ポー(ポオ)作 1842年

誤解してしまいそうてすが、乱歩による翻訳の書籍化が初めてなだけであって、
この小説自体の日本語訳本はいくらでもあります。

本作の題名は『赤死病の仮面』と訳されることも多く、Wikipediaもそれを採用しています。
が、私見ですがゴシック小説のタイトルとしては、断然『赤き死の仮面』が優れていると思います。
10.000円の書籍になるくらいだから、大長編と思われるかも知れませんが、短編です。

ある王国を舞台に、恐ろしい疾病をテーマとする恐怖小説。
幻想的、また退廃的、そのストーリーは難解です。

藍峯舎のサイトによると、乱歩がポー作品を翻訳したのはこの1点だけとのことです。
これも意外ですね。
乱歩は翻訳家ではないですが、海外小説の日本への紹介に力を尽くした人です。
翻案小説も少なからず書いています。

ましてポーは自らその名をもじった作家であり、短編が多いのだから、
もっと訳していてもいいように思えます。
しかも1949年なので戦後、晩年とまではいえなくも、だいぶ後年ですね。
そして、それが雑誌に掲載されただけで、今まで書籍化がなかったというのも意外です。

この乱歩訳版『赤き死の假面』の、探偵小説雑誌『宝石』(岩谷書店)への掲載は
昭和24年(1949年)11月号。
同誌ではポーの没後100年祭記念として「ポオ怪奇探偵小説傑作選」の特集が組まれ、
8篇の短篇を掲載されたのですが、大半が旧訳の再録だったようですが、
そのトップを飾ったのが乱歩訳し下ろしの『赤き死』であったとのことです。

乱歩の『赤き死の仮面』…読んでみたいですが。


ここからは蛇足です。
乱歩からは離れますが、クラシックホラー映画ファンとしては、
この小説の映画化作品を紹介せずにはいられません。


The_masque_of_the_red_death1964
『赤死病の仮面』(1964年)

アメリカの映画会社AIPは、1960年からロジャー・コーマン監督による
ポー作品を原作とする映画シリーズを連続で制作をし、世界的にも成功をおさめました。
本作はその第7作目であり、最高傑作ともいわれます。
このシリーズのほとんどに主演してきた、戦後アメリカ怪奇映画の第一人者、
ヴィンセント・プライスが本作でも堂々の主役を務めています。

ただ、このシリーズはちょっと難解な面もあり、その為かは判りませんが、
これ以前のシリーズ作はだいたい日本でも劇場公開されていますが、本作は劇場未公開です。
ビデオやDVDは発売されています。



予告編
これを観ても、難解なイメージは受けるでしょう。

同時代ですと、イギリスのハマー・フィルム・プロダクションが制作した、
フランケンシュタインやドラキュラといった、おなじみの怪物達が登場する怪奇映画は、
ほとんど漏れなく公開されています。
やはりこちらの方が、少なくとも日本人わかり易いのですね。
しかし、その荘厳な雰囲気と、言い知れぬ恐ろしさはやはり極上です。

怪奇ファンとしては、ハマーの代表的な作品でヒロインを演じたヘイゼル・コートが、
アメリカに渡って『赤死病の仮面』に出演しており、その意味でも興味深い作品なのです。
このキャリアなので、ヘイゼル・コートは「ホラー・クイーン=怪奇映画の女王」とも呼ばれます。


Vincent_price_hazel_court
ヴィンセント・プライス(右)とヘイゼル・コート
(別の映画のスチールですが。)
怪奇スターとはいっても、クラシックホラーの名優は美しくて、気品があるのです。


Old Fashioned Club  月野景史

2012年3月18日 (日)

【映画】『シャーロック・ホームズ』(2009年 ロバート・ダウニー・Jr主演)と『ルパン三世』

シャーロック・ホームズ超入門などというブログを書いてるのに恥ずかしい話ですが
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-092f.html
2009年制作の映画版『 シャーロック・ホームズ』を日曜ロードショーで初めてみました。

ロバート・ダウニー・Jrがホームズ、
ジュード・ロウがワトソンを演じた作品です。
好評につき続編『[シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』が制作され公開中です。

オカルト全開な話だなと思いましたが、
ホームズ物らしくきちんと種明かしがされていましたね。

しかしこの映画、基本構造が『ルパン三世』によく似ていますね。

いや、それをいうなら逆で、『ルパン三世』も、
そのネタ元のモーリス・ルブランの『アルセーヌ・ルパン』シリーズだって、
そもそもホームズシリーズの影響下にあるのだよ。

・・・といわれればその通りですが、それだけでは納得できないほど似ているように思います

まずホームズのキャラがルパン三世にそっくり。
これは吹き替えの声優・大塚芳忠氏がそのままルパン役をやってほしいくらい
山田康雄氏にも似ているし、ルパンにぴったりと感じたせいもあるのだと思います。
しかしそれだけではなく、例えばホームズとワトソンの関係も少し波長が合わない時のルパンと次元に似ています。
また、それ以上にホームズシリーズ屈指の女性キャラであるアイリン・アドラー、
この映画でのアイリーンは、本当に峰不二子そのままのキャラだと思いました。

そしてメイン悪役のヘンリー・ブラックウッド卿が、
ルパンファーストシリーズを代表する悪役である
魔術師パイカル(白乾児)と魔毛狂介を合わせたようなキャラ。

例えば、ブラックウッドのマジックの種のひとつである液体燃料は、
パイカルの魔術そのまま…と思ったのですが、
バイカルは火炎放射で、液体燃料はルパンの秘密兵器でした。

それでも、シリーズ屈指の登場人物と秘密兵器の組み合わせですし、
不死身で、まるで超能力でも持っているように演出するところも、
バイカルとブラックウッド卿はよく似ています。

断定などできませんが、この映画は『ルパン三世』の影響を受けて作られている、
そんな気がしてなりません。


ネットでも同様の指摘は散見されますが、
あまり踏み込んだ分析はないようです。
もちろん、今回のはすべて私の勝手な私見ですが。

Old Fashioned Club  月野景史

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