03.美の巨人たち (TV東京系)

2019年4月13日 (土)

【美の巨人たち】小林薫が降板し『新美の巨人たち』としてリニューアル

このブログでもよく取り上げてきた、
テレビ朝日土曜22時の美術番組『美の巨人たち』が、
4月から『新美の巨人たち』にリニューアルされました。https://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin


2000年4月のスタートだからちょうど20年目に入ったところ。
今までも小さなリニューアルはありましたが、
今回はタイトルにも「新」が付き、大型リニューアルとなりました。

一番大きな変更点は、ナレーションを務めてきた俳優の小林薫さんの降板です。
スタート以来の番組の象徴的存在で、長く単独で、
近年は蒼井優さん、神田沙也加さんら女性タレントと共に番組を支えてきました。
彼の降板は、番組のひとつの時代の終わりを象徴しているように感じます。


新たなナレーションには市川実日子さんが就任しましたが、
今後は彼女とは別にタレントさんがアートトラベラーとして毎回画面に登場し、
美を探究していく内容になるようです。

 


第1回目のアートトラベラーは又吉直樹さん、2回目は貫地谷しほりさん、
他に井浦新さん、要潤さん、シシド・カフカさん、田中麗奈さんらの名前が挙がっています。

『美の巨人たち』はトリッキーでコミカルな展開の回もありましたが、
今後は影を潜めるのでしょうか。
少し、NHKの『日曜冠美術館』に近くなった気もします。
そういえば、井浦新さんはかつて『日曜美術館』の司会もしていました。

またトラベラーにより回ごとのテイストの違いはあるのか?
ともかく稀少な美術番組。
良い形で続いていってほしい。

少し観てから、改めて書きます。


Old Fashioned Club  月野景史

2019年2月17日 (日)

【美の巨人たち】 2/16放送 アンリ・ルソー作『戦争』 /あまり「下手」と言わないで

2月16日放送のテレビ東京『美の巨人たち』のテーマは
アンリ・ルソー作『戦争』』(1894年頃)でした。

Photo




アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソー
(Henri Julien Félix Rousseau、1844年5月21日 - 1910年9月2日)


19世紀末から20世紀初頭にかけて活動した画家。
技術的には未熟で、つまり“下手”なのだが、
魅力的で人気の高い画家として知られます。


今回の番組ではまずその下手さが徹底的に強調されていました。
「美術史上これだけ欠点の多い画家はいない」
“世界一下手と言われた画家”だと。

元々長く税務署に勤めた人で、専門教育も受けておらず、
人生も終盤に差しかかって本格的に描き始めた素人画家。
キャリアからしても下手なのは当たり前。

しかし、ルソーの下手さは現代人の素人にとっては、
言われなければわかりません。

ルソーと同時代からそれ以降、あまりに多種多様な絵画が生まれ、
何が描かれているのかわからない抽象画もたくさんあるのに、
何が描かれているかはだいたいわかるルソーが下手だと判断するのは難しい。

例えば、番組でも指摘されていましたが、遠近法を使い切れず、
主題に対して極端に小さく描かれた人や動物、建物などについても、
そういう表現方法なのかと理解してしまうでしょう。

また、アカデミズム絵画のブグローやカバネルにあこがれ、
彼らの絵画を模写しようとしても、こんな風になってしまうとも紹介されました。
たしかに模写だと比べて見せられれば、全然違う、ああ下手だなと思いますが、
何も言わず見せられたら、こういう画風なのかと思うでしょう。

だから、ルソーについてあまり「下手だ」と強調されるのは違和感があります。
しかし「下手だけど魅力的な絵」が有名画家ルソーの代名詞となっているのだから、
いいのかも知れませんが。

Old Fashioned Club  月野景史

2017年3月19日 (日)

【美の巨人たち】アングル『グランド・オダリスク』とドラクロワ『民衆を導く自由の女神』

3月18放送のテレビ東京の美術番組『美の巨人たち』のテーマ作品は
ドミニク・アングル『グランド・オダリスク』と
ウジェーヌ・ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/170318/ 




19世紀前半のフランス画壇を代表する二人の画家。
この二人は対立関係にあった事は有名です。
その事情は現代の視点からではわかり難い。
この後の絵画の多様化からすれば、
二人の画風に対立するような違いが見出し難いのです。


この2点はフランス美の殿堂・ルーヴル美術館の同じフロアに展示されています。

『グランド・オダリスク』
オダリスクとは、トルコのハーレムにいる女性のこと。
はっきりとした輪郭で細部まで描き込まれています。

しっとり艶やかな肌、魅惑的な身体のラインはアングルならではの写実的なタッチですが、
ただ、身体のバランスがどこか奇妙です。
そう、背中が長すぎるのです。


『民衆を導く自由の女神』
教科書に載っていたかも知れません。
壮大なスケールの傑作で、有名絵画です。
いわゆるフランス革命ではなく、
「7月革命」の様子が鮮やかな色彩で描かれています。

こちらもちょっと奇妙な点があり、主人公ともいえる女神が、女性にしては筋骨隆々。
たいたい革命の最中、1人だけ半裸の姿なのも不思議です。


緻密なデッサンを追求した“線の巨匠”アングル。
生々しい感情を色で表現する“色彩の巨匠”ドラクロワ。
正反対の作風の2人は、生涯にわたってぶつかりました。

フランス美術界の権威・アカデミーの会員だったアングルはドラクロワを認めず、
入会を20年にわたり拒絶したほどです。


今回の番組の解釈としては、
二人の対立は、絵画の歴史を左右する、“ルネサンスの代理戦争”であるとしました。
15世紀から16世紀にかけてイタリアで隆盛を極めた芸術革命と、
二人の対決との関係が描かれました。

Old Fashioned Club  月野景史

2016年3月 3日 (木)

【美の巨人たち】3/5は「ナイトホークス」 エドワード・ホッパー/20世紀米国を代表する傑作絵画

2016年3月5日放送予定のテレビ東京系『KIRIN~美の巨人たち~』のテーマ作「今週の一枚」は、
エドワード・ホッパー『ナイトホークス』(1942年)です。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/

Nighthawkshopper

20世紀のアメリカを代表する画家の、
20世紀アメリカの、ある時代の一面の雰囲気を象徴するような傑作絵画です。

ホッパーの作品がこの番組で取り上げられるのは、2012年6月の『線路わきの家』以来でしょうか。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/62-6dd1.html

この時もなかなか興味深い内容でした。
そして、次は『ナイトホークス』がいつ取り上げられるのか、心待ちにしていました。
私も大好きなこの絵がどのような切り口で、またこの画家が語られるか、
大変楽しみにしています。    

ただ、『世界卓球2016』により放送時間の変更・休止の可能性があるようで、それが心配ですが。
※3月6日追記:残念ながら放送休止になってしまいました。
放送予定は当初明らかではあのませんでしたが、無事3月26日と公表されました。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/02_lineup.html


以下、番組公式サイトより予告文を引用します。
☆☆☆
次回の作品は、20世紀アメリカを代表する画家エドワード・ホッパーの傑作『ナイトホークス』。
タイトルは「夜更かしをする人々」の意味です。舞台は路地裏の小さな食堂。登場人物は三人の客と一人の店員です。カウンター奥に腰掛ける男女と、画面に背を向けて座る一人の男性。店員は街の暗闇に目を投じています。この絵は何を物語っているのでしょう?また絵のアイデアの源とされる絵画作品とは?画家の心象風景に迫ります
★★★


Old Fashioned Club  月野景史

2016年1月23日 (土)

【美の巨人たち】ミレー『羊飼いの少女』1/23放送/ミレーを国民的画家に押し上げた作品

2016年1月23日放送のテレビ東京系『KIRIN~美の巨人たち~』のテーマ作「今週の一枚」は、
ジャン・フランソワ・ミレー作『羊飼いの少女』でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/160123/index.html

Photo
大平原をバックに羊の群れを従え、編み物に熱中する一人の少女


ジャン・フランソワ・ミレー
(Jean-François Millet 1814年10月4日 - 1875年1月20日)

広大な平原を背景に描かれる人物。
ミレーには同じような構図のより有名な、
そして『羊飼いの少女』に先んじて描かれた傑作があります。


Photo_2
『晩鐘』(1857年)



Photo_3
『落穂拾い』(1857年)


しかし、50歳を目前にしたミレーを一気に国民的画家にまで押し上げたのは、
今回のテーマ作である『羊飼いの少女』 でした。

都会を離れてパリ南東の寒村バルビゾンに移住し、農村に生きる人々の普遍的な美しさを生涯追求し続けたミレー。
人物画といえば高僧や貴族といった身分の高い人たちが描かれるのが主流だった時代。
過酷な農作業に黙々と向かう人々をありのままに描いた作品は正当に評価されませんでした。

『晩鐘』や『落穂拾い』、あるいは『種まく人』のような作品は、
農村の貧困を告発する危険な反体制画家のようにさえ取られており、
絵は売れず、多くの子どもを抱えて生活も困窮していました。

そんな時期、画商でありミレーの伝記著者でもある親友サンスィエから受けた
「やさしく描け」とのアドバイスがにより描かれたのが、『羊飼いの少女』だったのです。

この少女のモデルはミレーの次女ルイーズといわれています。
少女は毛糸で編んでいます。
毛糸を与えてくれるのは、画面にたくさん描かれた羊。
その羊を生かしているのは草原。
ミレーが考えた「やさしさ」とは、生きるもの達の連鎖でした。
『羊飼いの少女』は展覧会で1位となり、ミレーをフランスの国民的画家に押し上げました。


Old Fashioned Club  月野景史

2016年1月18日 (月)

【美の巨人たち】1/23放送はミレー『羊飼いの少女』/画家の評価を一変させた名画

今週、2016年1月23日放送のテレビ東京系『KIRIN~美の巨人たち~』のテーマ作「今週の一枚」は、
ジャン・フランソワ・ミレー作『羊飼いの少女』(1864年)です。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/160123/index.html

Photo

ジャン・フランソワ・ミレー
(Jean-François Millet 1814年10月4日 - 1875年1月20日)
今週の1枚は、『晩鐘』、『落穂拾い』と並び、ミレーの三大名画とも言われる作品です。


Photo_2
『晩鐘』(1857年)



Photo_3
『落穂拾い』(1857年)


広大な農地を背景に描かれる人物。
いずれも、これぞミレーともいうべき構図です。

ただ、『羊飼いの少女』は、他の2作よりは知名度で落ちるかもしれません。
制作年代も7年ほど下ります。

それでも、番組の予告文では、ミレーの評価を一変させた作品としています。
さて、ミレーとこの絵について、どんな物語が聞けるのか?

※放送は終了しました。感想等はこちら。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/123-26ef.html


以下、番組公式サイトより引用
☆☆☆
次回の作品は、19世紀フランスを代表する画家、ジャン・フランソワ・ミレー作『羊飼いの少女』。
ミレーを国民的画家に押し上げた代表作です。寒村バルビゾンで農民の普遍的な美を追求するものの評価を得られないミレー。親友のアドバイスがその絵に転機をもたらします。画家の評価を一変させたその言葉とは?男性の仕事とされてきた羊飼いを少女として描いた理由は…?この絵が描かれた地バルビゾンで、画家の思いを探ります。
★★★

Old Fashioned Club  月野景史

2016年1月 9日 (土)

【美の巨人たち】1/9放送 ゴッホ『タンギー爺さん』 /タンギーと背景を飾る浮世絵の秘密

2016年1月9日、テレビ東京系『KIRIN~美の巨人たち~』
本年最初の放送のテーマ作「今週の一枚」は、フィンセント・ファン・ゴッホ『タンギー爺さん』でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/160109/index.html


Photo_3

今年は西洋絵画史上の超ビッグネームの登場で幕開けです。
ゴッホの作品か取り上げられる場合、後年の南仏アルルか、
あるいは更にそれ以降に描かれた絵が多いのですが、
本作はゴッホがパリ時代の作品です。

モデルはゴッホの数少ない友人のタンギー。
パリのモンマルトルで画材屋を営なんでいたタンギーは、貧しい画家たちに手を差し伸べており、。
ゴッホもその恩恵にあずかっていたひとりでした。

この絵はパリ時代のゴッホ作品としては有名な絵のひとつです。
その大きな理由はタンギーの爺さんの背景。
よくみると日本の雪景色に花魁いった…6枚の浮世絵で埋めつくされているのです。

ゴッホがタンギーを描いた本当の理由とは…?
また浮世絵に隠されたゴッホの本音とは?

絵画関係の仕事とはいっても、タンギーは絵の具職人で画材店を経営しており、画商的なこともしていたといわれますが、
実際に店内に日本画がたくさん展示されていたのではないようです。

浮世絵はゴッホが強く影響を受け、実際に収集していました。
そしてタンギー爺さんこと、ジュリアン・タンギー。
普仏戦争の兵士であり、その後パリ・コミューンに参加して投獄されていた過去を持つタンギーは、
若く貧しい画家達を支援いる義侠心の強い人物でした。

ゴッホは彼への敬愛を籠め、あこがれの浮世絵と組み合わせて、イコンとしてこの描いた、
これが番組の見解でした。

Old Fashioned Club  月野景史

2015年7月24日 (金)

【美術】7月25日『美の巨人たち』は『舞台用冠ユリ』/ミュシャ&ラリック&サラ 魅惑の顔合わせ

明日2015年7月25日放送テレビ年京系『KIRIN~美の巨人たち~』のテーマ作品は
ミュシャ&ラリック『舞台用冠ユリ』 です。   

Photo

画家 グラフィックデザイナー アルフォンス・ミュシャ
ガラス工芸家 ルネ・ラリック
そして大女優 サラ・ベルナール

19世紀末に咲いた、アール・ヌーヴォーを象徴する3人の偉大な芸術家がコラボする作品。
これはそそられます。

そもそも、ミュシャとベルナールの関係は有名です。
1895年、ベルナール主演の舞台『ジスモンダ』のポスターを描いたことが
ミュシャの飛躍のきっかけとなり、その後も彼女の芝居のポスターを多く手がけました。

今回の作品はミュシャがデザインし、ラリックが立体化した舞台用冠。
ラリックはアール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代にわたって活躍した、
エミール・ガレと並び、おそらく史上最も高名なガラス芸術家。

さて、番組はどんな切り口で進むのでしょうか?
注目です。

Old Fashioned Club  月野景史

2015年6月 8日 (月)

【美術】ゴッホ『星月夜』 6/6『美の巨人たち』より/語られなかったもうひとつの「星月夜」

2015年6月6日放送のテレビ年京系『KIRIN~美の巨人たち~』テーマ作品「今週の一枚」は
フィンセント・ファン・ゴッホ『星月夜』(1889年)でした。

Photo_4

ニューヨーク近代美術館所蔵の作品。
番組を見て、ああこっちか!と思った人も少なくないでしょう。
ゴッホにはもうひとつ、「星月夜」と名付けられた傑作があるからです。


Photo_2
『ローヌ川の星月夜』(1888年)
こちらはパリのオルセー美術館所蔵。
2010年に国立新美術館で開催された「オルセー美術館展」に来日しました。
その時のタイトルは『星降る夜』のだったと思います。

この2点、描かれた年も1年しか違いません。
しかし・・・、ゴッホを語る上で、この1年の差は大変大きいのです。
番組ではこの絵の画像も出てきましたが、具体的に論じられはしませんでした。


フィンセント・ファン・ゴッホ
Vincent Willem van Gogh、1853年3月30日 - 1890年7月29日)

オランダ出身のゴッホは紆余曲折を経て、1886年パリへ、
そして1888年2月、芸術家の理想郷作りを目指し、南仏プロヴァンスのアルルを移住します。
すべて後年の評価ですが、このアルル時代が画家ゴッホの全盛期となります。
『ローヌ川の星月夜』はその年、9月頃に描かれた作品です。

ゴッホの作品の中でも一際美しい。
タイトルは「星月夜」ですが、街の灯りらしきものも描かれており、
“夜景”を描いた絵画の元祖でしょうし、一大傑作だと思います。

さて、その1888年10月、ゴッホの理想郷作りの呼びかけに応じ、ゴーギャンがアルルにやってきます。
しかし、二人の関係はまもなく破綻。ゴッホは精神を病んでしまいます。

1989年5月、ゴッホはアルルから約20キロ離れたサン・レミの病院に入院します。
それから間もない6月頃に描かれたのが、今回のテーマ作『星月夜』でした。
この時期の作品の見られる、精神の不安定さ感じさせる渦巻き状が特徴です。

ゴッホは日本美術、特に浮世絵に強く影響を受けた画家です。
番組では葛飾北斎の傑作『神奈川沖浪裏』(1831年頃)の構図からの影響について解題されました。
Photo_3


今回の番組ではアルル、サン・レミから終焉の地となったオーヴェールと取材し、
ゴッホの足跡を追いました。
大変良い企画でしたが、30分で、しかも浮世絵との比較をメインにしてしまったのは、
少々もったいなく感じます。せっかくなら前後編か拡大版でじっくりやってほしかったですね。

Old Fashioned Club  月野景史

2015年4月 7日 (火)

【美術】ラファエロ・サンツィオ『一角獣を抱く貴婦人』 4/4『美の巨人たち~』より/曰く因縁ある絵

2015年4月4日放送のテレビ年京系『KIRIN~美の巨人たち~』テーマ作品「今週の1枚」は、
ラファエロ・サンツィオ『一角獣を抱く貴婦人』(1505年頃)でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/150404/index.html

Photo_3
今回から番組もリニューアル。
ナレーションも小林薫さんに蒼井優さんが加わって二人体制になりました。
オープニングも変わりましたね。

テーマ作品も西洋美術の大立者ラファエロ・サンツィオ。
・・・なのですが、選ばれた作品はちょっと微妙でした。
この絵は、2009年~2010年に開催されたボルゲーゼ美術館展の看板作品として来日しています。
数あるラファエロの名画の中で、それほど有名というわけでもありません。


ラファエロ・サンツィオ
(Raffaello Sanzio da Urbino1483年4月6日 - 1520年4月6日)

美の貴公子ラファエロ。
彼がルネサンスの聖都フィレンツェにやってきたのは1504年頃、21歳の時。
それからまもない22歳頃に描かれたとされる作品です。

絵画にさほど詳しくない人でも、有名な絵に似ていると思うでしょう。
そう、あのレオダルド・ダヴィンチ『モナ・リザ』(ラ・ジョコンダ)
ラファエロは『モナ・リザ』を見て、スフマートなどの技法を会得し、
『一角獣を抱く貴婦人』描いたとされています。

といっても、ダヴィンチからの影響について、はっきり記録に残ってはいません。
ダヴィンチはこの絵を手元において加筆を続け、最後はフランスで亡くなります。
だから『モナ・リザ』はイタリアではなく、フランスのルーブル美術館にあるのです。
つまり、『モナ・リザ』はダヴィンチの生前に公開されることはなかったのです。
ラファエロはダヴィンチの工房を訪れ、『モナ・リザ』を目にしたとされています。

番組ではテレビのオークション番組をテーマにしたミニドラマ風演出で、
『モナ・リザ』と今日の1枚を対比させ、その魅力にせまりました。


しかしながら、番組でもふれられてはいましたが、
『一角獣を抱く貴婦人』にはもうひとつの曰く因縁があるのです。

20世紀の初頭まで、この絵は作者不詳の『アレクサンドリアの聖カタリナ』とされてきました。
女性の手元には一角獣ではなく、壊れた車輪が描かれていたのです。

Photo_4

これは当時のこの絵を撮影した白黒写真です。

なぜ車輪を! と思うでしょうが、アレクサンドリアのカタリナはよく絵画の題材にもなる、
有名な聖女・殉教者で、車輪は彼女のアトリビュート(持物)なのです。

ところが、どうもこの絵は上から塗り足されているのではとの疑いが浮上し、
修復したところ、一角獣が現れ、技法等からラファエロの作であることが判明したという次第です。

作者不明の絵画を修復したら、巨匠ラファエロの絵画が出てきた!
世紀の大発見。

しかし、これはどうも解せない話です。
ラファエロは生前からルネサンス絵画の最高峰に登り詰め、
死後も長く西洋絵画の規範とされたほどの画家です。
そのラファエロの絵に誰がいつ上から塗り足し、別の絵にしてしまったというのか?
不可思議な話ではあります。

Old Fashioned Club  月野景史

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