【相棒6】第3話「犯人はスズキ」 “町内会”という閉ざされた世界の事件/亀山期異色の佳作
以前、アガサ・クリスティ作の有名ミステリ『オリエント急行の殺人』
(または『オリエント急行殺人事件』1934年)を基とした
『相棒』の4本のエピソードについて書いたことがあります。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/4-ab9e.html
その1本が以下の回でした。
◆『相棒』season5 第3話 「犯人はスズキ」
2006年10月25日放送 脚本:岩下悠子 監督:森本浩史
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_05/contents/story/0003/
※本作は2023年11月29日午後にテレビ朝日にて再放送されます。
それに合わせ、あらためてこの回について記してみます。
さて、『オリエント急行の殺人』は題名通り、欧州を縦断する長距離列車内で起きた殺人事件に
名探偵エルキュール・ポアロ(ポワロ)が挑む推理小説。
対して「犯人はスズキ」は列車内の殺人などまったく出てこず、どこが関係するのかと思うでしょう。
では改めて、『オリエント急行殺人事件』の特徴を挙げてみます。
①外界から閉ざされた寝台列車内という、大きな密室状態の場での殺人事件。
②犯行の動機は過去の少女誘拐殺人犯への、遺族・関係者による復讐。
③同じ意志を持つ複数の人間による計画的犯行。
④関係者が他人を装って集まる。
「犯人はスズキ」は②と③の要素を色濃く持っています。
特に②の少女誘拐殺人事件の犯人への、遺族による復讐という点はまさにそのままです。
ただし③については、『オリエント』での復讐殺人は、多数の関係者による計画性の高いものですが、
この回の復讐殺人は少女の父親による突発的なもので、それ自体に計画性は乏しい。
その代わり、事実を知った町内会の人々が父親を庇おうとしての偽装工作が計画的で、
それを右京と亀山が崩していくのがメインストーリーでした。
結果的に導き出された真相は違いますが、捜査の過程は『オリエント』と似ているのです。
シーズン5なので、『相棒』は亀山時代後期。
町内会という独特にコミュニティを“密室”に見立てたともいえる、ユニークな佳作です。
亀山が右京とほぼ同等の推理力を披露しているのも特徴。
ただ、偽装の過程で誘拐殺人とは無関係の人間(犯罪者ではあるが、極悪人とまではいえない)を
計画の為に巻き込み、殺害してしまう流れがあり、この男が通称スズキなのですが、
この点は同情し難く、少々残念に感じます。
『科捜研の女』の日野所長 斉藤暁出演作
本作には『相棒』と並ぶテレビ朝日の長寿警察ドラマ『科捜研の女』に研究員→所長役で
長くレギュラー出演する斉藤暁さんの、現在までて唯一の『相棒』出演回です。
斉藤さんは元警官で、計画の首謀者の1人の役でした。
斉藤さんは水谷豊さんのひとつ年下の1953年生まれで、当時53歳。
劇中では警察官を定年(60歳)で退職したとは明示されていなかったと思いますが、
印象としては定年退職後の元警官という感じでした。
昔から老成したイメージがある人で、今や好々爺風ともいえますが、
この頃の『科捜研』ではまだ所長ではなく、一研究員としてボケ役を担っており、少し違うイメージでの出演でした。
現在のだいぶ落ち着いた日野所長のイメージに近いかも知れません。
Old Fashioned Club 月野景史
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