【相棒9】第12話「招かれざる客」 まるで舞台劇 マニアック感漂う神戸尊時代の異色作
昨日のブログの続きということになります。
以前、アガサ・クリスティ作の有名ミステリ『オリエント急行の殺人』
(または『オリエント急行殺人事件』1934年)を基とした
相棒の4本のエピソードについて書いたことがあります。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/4-ab9e.html
その1本が以下の回でした。
◆『相棒』season9 第12話 「招かれざる客」
2011年1月19日放送 脚本:戸田山雅司 監督:近藤俊明
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou_09/story/0012/index.html
※本作は2023年11月28日午後にテレビ朝日にて再放送されます。
それに合わせ、改めてこの回について少し書いてみます。
さて、『オリエント急行の殺人』は欧州を縦断する長距離列車内で起きた殺人事件に
名探偵エルキュール・ポアロ(ポワロ)が挑む作品。
前回書いた「犯人はスズキ」同様、今回のテーマの「招かれざる客」にも
列車内の殺人などまったく出てこず、どこか『オリエント』と関係するのかと思うでしょう。
改めて、『オリエント急行殺人事件』の特徴を挙げてみます。
①外界から閉ざされた寝台列車内という、大きな密室状態の場での殺人事件。
②犯行の動機は過去の少女誘拐殺人犯への復讐。
③同じ意志を持つ複数の人間による計画的犯行。
④関係者が他人を装って集まる。
「招かざる客」は④の舞台設定が『オリエント』と非常に近いです。
過去の因縁で結ばれた人々が他人を装い、ひとつの場所に客として集う設定。
しかも、そのほとんどがある家の使用人であった点も同じ。
幸いなことに誘拐殺人は起きていませんが、その家の娘に纏わる話であることも共通しています。
郊外のオーベルジュ(レストランと宿泊施設を兼ね備えた施設)に偶然居合わせたように見える客達、
実はみな関係者であった。
そこに招かざる客の杉下右京(水谷豊)が現れて・・・。
探偵役が客の一人として参加する点も同じ。
ただし、ポワロか偶然でしたが、右京は意図的な参加。
といっても、それは話が進んでから明らかになります。
まるで舞台劇
更にいえば、舞台のほとんどはオーベルジュ内での展開であり、
全体に芝居がかったイメージで、舞台劇を思わせる雰囲気は、
戯曲も手掛けたクリスティ作品の持ち味が色濃く反映された作品と言えるのでしょう。
ゲストキャストが知り合いでありながら他人を装っているので、芝居がかっているのは当然なのですが、
探偵側の右京と神戸尊(及川光博)の二代目相棒コンビの計画的小芝居も魅力です。
列車も誘拐殺人も復讐もないので、この回を『オリエント急行』と結び付ける人はあまりいないかも知れませんが、
元使用人達の、かつての主(あるじ)と、その家の娘(孫)への強い思いという点は共通しています。
作品の持つテイストは、『オリエント』に近いと思います。
封印されたアウトロー水谷豊
この回はそれ以外にも、なにやらマニアックな雰囲気が漂っています。
小芝居の中で右京が演じたキャラは、『熱中時代』より前の若い頃の水谷さんの
封印されたアウトロー的な演技を彷彿とさせるものがあったりとか。
右京は身分を偽ることもありますが、アウトロー的人物を装うのは稀だと思います。
私の好きな作品です。
この回が放送された神戸期のシーズン9は視聴率にも『相棒』の全盛期で、本回も20.4%を記録しています。
Old Fashioned Club 月野景史
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