【相棒】「名探偵登場」「名探偵再登場」亀山・神戸期に跨る傑作姉妹編 マーロウ矢木登場/元ネタの映画版についても
「名探偵登場」相棒 season5 第10話 2006年12月13日放送 初代相棒亀山薫期
「名探偵再登場」相棒 season10 第11話 2012年1月11日放送 2代目相棒 神戸尊期
『相棒』22年の歴史の中でも、コミカル色の強い傑作といわれる回で、しかも姉妹編です。
1作目が初代亀山薫(寺脇康文)時代、2作目が2代目神戸尊(及川光博)時代に亘っていて、
どちらも面白いというのもいい。
メインゲストは高橋克実さん。
「マーロウ矢木」を自称する“チャンドラー探偵社”の私立探偵・矢木明を演じます。
名探偵というよりは“迷探偵”
「マーロウ」とは、ハードボイルド小説の巨匠レイモンド・チャンドラーが創造した
私立探偵フィリップ・マーロウのこと。
矢木は推理小説・ハードボイルド小説のマニアで、フィリップ・マーロウにあこがれており、
「チャンドラー探偵社のマーロウ矢木」などと名乗っているわけです。
マーロウが登場するチャンドラーの代表作『長いお別れ』と、
作中に登場する名セリフ「ギムレット」には早すぎる」、
カクテルのギムレットについて書いた記事は、当ブログの屈指の人気記事です。
「ギムレットには早すぎる」はマーロウのセリフではない/ギムレット超入門と『長いお別れ』
「再登場」では、カクテルのギムレットならぬ「ムギレット(麦レット)」もネタとして登場します。
※この2本は2023年4月20日(木)と21日(金)に二日連続でテレビ朝日で再放送されました。
タイトルの元ネタは外国映画
ところで、この2本のサブタイトルですが、元ネタはいずれも1970年代制作のアメリカ映画の邦題です。
『名探偵登場』(原題:Murder by Death) 1976年
『名探偵再登場』(原題:The Cheap Detective)1978年
脚本:ニール・サイモン 監督:ロバート・ムーア
両作とも私立探偵を主役とするパロディ作品。
邦題だと、2作目は1作目の続編みたいですが、そうではありません。
脚本・監督も同一で、極めて似たテイストではありますが。
1作目は豪華キャスト勢揃いの、名探偵大挙登場映画。
古典ミステリ小説や映画の名探偵のパロディキャラたちが競演します。
2作目は、1作目の名探偵の1人を演じたピーター・フォークの単独主演。
フォークはいわずと知れた『刑事コロンボ』の主演俳優。
フォークが1作目・2作目で演じた役は同一人物ではないですが、よく似たハードボイルドタイプ
つまり、コロンボとはまったく逆ともいえるキャラを演じています。
モデルとなっているのはマーロウではなく、こちらもハードボイルドの有名キャラクターサム・スペード。
そういえば、『相棒』の1本目で、矢木はサム・スペードの名も、少しだけ出しています。
要約すると→「西日暮里ではマーロウ矢木、戸越銀座ではサムスペード矢木と呼ばれています」
元の映画と『相棒』の2本のエピソード
タイトルが同じで、私立探偵を題材としたコメディである点は共通ですが、
ストーリーはあまり似ていません。
特に映画版第1作は名探偵総登場物なので、全然違う。
強いていえば、『相棒』の2本は、映画版第2作のパロディに近い、と言えなくもないですが、
それよりは本家マーロウシリーズのパロディと言った方がいいかも知れません。
1本目にはマーロウシリーズの『プレイバック』より、もうひとつの有名なセリフが出てきます。
「男はタフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない。」
しかし、なんといっても、高橋克実さん演じるマーロウ矢木のキャラクターが魅力。
杉下右京(水谷豊)や亀山、神戸とのやりとりも面白く、他のゲストキャラも良い味を出しています。
『相棒』の新作放送中にこの2本が再放送されたら、マーロウ矢木再登場への布石か!
などと思うところですが、先月最新シーズンが終わったばかりなので、とりあえずありません。
Old Fashioned Club 月野景史