【特撮】昭和ウルトラシリーズ慨史② 『ウルトラマン』の誕生/分かり易く解説
昭和、平成、令和と続く「ウルトラシリーズ」(ウルトラマンシリーズ)
その金字塔である初代の『ウルトラマン』の誕生ヒストリーをどこよりもわかり易く解説します。
前ブログ「『ウルトラQ』の誕生」の続編。
簡潔にするために仔細は極力省略します。
ウルトラQからウルトラマンへ
1966年1月から放送された『ウルトラQ』は日本中に怪獣ブームを巻き起こしました。
円谷プロダクションとTBSは『Q』の反省も踏まえ、次作の構想に取り掛かります。
『Q』の放送は1966年1月からですが、前年中に全28本を撮り終えており、準備の時間は充分ありました。
そして『ウルトラQ』の終了後すぐにスタートすることになる『ウルトラマン』は
『Q』からの正常進化の枠を飛び越えた驚異の、奇跡の作品となりました。
以下、その進化の経緯を中心に記していきます。
対怪獣専門チーム「科学特捜隊」の誕生
『ウルトラQ』の主人公三人は民間人でした。
このうち、紅一点の桜井浩子さんの役は新聞社の女性カメラマンなのでまだわかりますが、
佐原健二さんと西條康彦さんはセスナ機やヘリコプターで荷物の輸送等を行なう小さい航空会社のパイロットで、
この三人が毎回大事件に遭遇し、解決に重要な働きをするのは無理があり、ストーリーも作り難い。
ただ、この主人公が民間人というのは東宝特撮映画の伝統でもありました。
多くの東宝の怪獣映画では自衛隊に類する組織(防衛隊と呼ばれることが多い)が登場し、
怪獣と戦いますが、防衛隊員が主役となることはありません。
だいたいいつも、主役はたまたま事件に深く関わってしまう民間人でした。
しかし、基本的に単発ストーリーの映画ならそれでよくても、
毎回の主人公が固定されている連続ドラマでは無理があります。
それで怪獣が関わる事件を専門に対処するチームを登場させることになりました。
これも、当初はトップ屋集団なども構想されていたようですが、
実際に武器を持って怪獣や侵略宇宙人と戦うチームが設定されました。
いうまでもありません。
科学特捜隊の誕生です。
「パリに本部を置く国際科学警察機構の日本支部に科学特捜隊と呼ばれる5人の隊員たちがあった。
彼らは怪事件や異変を専門に捜査し、宇宙からのあらゆる侵略から地球を防衛する重大な任務を持っていた。」
第1話冒頭ナレーションより
この設定があれば、例えば『ウルトラQ』で起きたようなどんな怪事件でも、
科学特捜隊が真っ先に捜査に乗り出せます。
これだけでも充分な正常進化で、科学特捜隊をタイトルロールとして新番組を作ってもよかった思います。
しかし、企画はますます進化を続けます。
宇宙人との共闘
前ブログで記したように、『ウルトラQ』に先行して、
フジテレビと円谷プロダクションとの間で進行していた『Woo(ウー)』という企画がありました。
不定型の宇宙生物が地球人と協力して事件を解決するというユニークな話でしたが、
残念ながら実現には至りませんでした。
この宇宙生物を登場させて人間と協調、というプロットが生かされることになります。
企画が進むうちに宇宙生物の設定は不定型から、怪獣に近い外見の「ベムラー」、
人間型のヒーローに近い「レッドマン」と進み、「ウルトラマン」へと繋がっていきました。
既に東宝特撮映画では、かつては人類の恐るべき敵であったゴジラが、
強大な宇宙怪獣キングギドラと、地球を守るために戦うヒーローに転換しつつありましたが、
「ウルトラマン」はそこから一歩進んだ、友好的な人間型でありながら巨大、超絶な能力を持つ、
世界のSF・娯楽作品にもおそらく例のないスーパーヒーローの誕生でした。
一心同体の変身ヒーロー
更にまだ別の進化ポイントがあります。
“変身ヒーロー”スタイルの融合です。
今となれば、ウルトラマンは変身するのが当たり前なので、何を大げさなと思うかも知れませんが、
これもまた画期的なアイデアでした。
変身ヒーロー自体は、アメリカではスーパーマン、バットマン、
日本のテレビ作品でも月光仮面をはじめ、無数にありました。
遡れば、時代劇の鞍馬天狗、怪傑黒頭巾等も同様です。
しかし、これらはみな基本的には同じ人間が、
覆面などで変装して正体を隠して戦うのが基本パターンです。
それに対して『ウルトラマン』では地球人と宇宙人が故あって一心同体となり、
状況に応じて宇宙人の姿になり、怪獣や侵略宇宙人と戦うという、斬新なアイデア。
これにより、主人公の人間が変身により強大な力を得て、
巨大な怪獣と互角以上に戦えることになるという、
今となっては、あまりに当たり前の変身ヒーローのスタイルがうまれたのです。
以上、三つ新機軸の結晶により、『ウルトラマン』は誕生したのです。
Old Fashioned Club 月野景史
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