【美術展】「みんなのミュシャ」文化村ミュージアム/ミュシャとその影響を受けた作品たち
東京渋谷の文化村 ザ・ミュージアムでは9月29日まで、
「Bunkamura 30周年記念 みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ ― 線の魔術」が開催中です。
Bunkamura 30周年記念 みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ ― 線の魔術
2019/7/13(土)~9/29(日)
Bunkamura ザ・ミュージアム
主催:Bunkamura、ミュシャ財団、日本テレビ放送網、BS日テレ、読売新聞社
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_mucha
アルフォンス・ミュシャ
(Alfons Maria Mucha 1860年7月24日 - 1939年7月14日)
チェコ出身でフランス等で活躍した画家、グラフィックデザイナー
特に美しく華やかなポスター芸術で知られます。
19世紀末から20世紀初頭のアール・ヌーヴォーの時代。
ミュシャが作り出した「線の魔術」ともいえるポスターは、
没後80年経った今でも、世界中の人たちを魅了し続けています。
本展は彼が手がけたポスターなどのグラフィック作品をはじめ、
その作品に強い影響を受けた日本の明治期の文芸誌、
1960年代を中心にアメリカ西海岸やロンドンで一大ブームを巻き起こしたグラフィック・アート作品、
そして日本のマンガ家やグラフィック・アーティストの作品などおよそ250点を展示し、
時代を超えて愛されるミュシャの人気の秘密を探る、斬新な展覧会です。
本展のタイトルは「みんなのミュシャ」
たしかにミュシャの人気は日本でも大変高い。
このブログ「Old Fashioned Club」 第1回のテーマもミュシャでした。
その後、2017年に東京六本木の国立新美術館で開催されたミュシャ展には
晩年の油彩画の超大作『スラブ叙事詩』が展示されました。
圧倒的なスケールで、連日満員の大盛況でした。
今回はこの時に比べれば小規模ですが、
ミュシャといえばポスターに代表されるグラフィックアート。
それは充分に揃えられています。
展示作品から少し紹介します。
『ジスモンダ』(1894年)
ミュシャの出世作として伝説的な作品。
19世紀末のパリ。
ミュシャは故郷のチェコを離れ、この芸術の都にいました。
絵の勉強に励むも支援を打ち切られ、本の挿絵などで生計を立てるその日暮らし。
1894年のクリスマスの時期。
ミュシャが校正の仕事をしていた印刷所に、
大女優サラ・ベルナールの公演『ジスモンダ』の急なポスター制作依頼が舞い込みます。
ミュシャにポスターの原画制作の実績はありませんでしたが、
年末の休暇の時期で他に人がおらず、ミュシャが手がけることになります。
出来上がったポスターはベルナールに気に入られたのみならず、
パリ中の話題になり、ミュシャは一躍時代の寵児となりました。
虚実入り交ざっているかも知れませんが、これがミュシャの成功譚の大枠です。
当時、ミュシャは既に34歳。
今ならともかく、当時としてはだいぶ遅咲きです。
『舞踏(ダンス)』~連作『四芸術』より (1898年)
今回の看板作品としてパンフレットにメインで使用されています。
『四芸術」という4点の作品からなる連作の1点です。
他の“三芸術”は『詩』『絵画』『音楽』。
本展では『詩』と『絵画』も出展されていますが、『ダンス』とは別の場所にあります。
ポスターと装飾パネル
この作品は『ジスモンダ』と同様のグラフィックアートですが、
ポスターではありません。
ポスターは広告宣伝の為に制作される非売品。
商品、イベント等、なんらかの告知が含まれています。
『ダンス』の方は観賞用インテリアとしての販売を目的に作られたもので、
宣伝は含まれていません。
このような作品は「装飾パネル」と呼ばれます。
ただ、この名称はあまり一般的ではないかも知れません。
「装飾パネル」でネット検索しても、建築素材がヒットしたりします。
ともかく、印刷物ですから当然、本画よりは廉価
一般市民が広く芸術を楽しむようになった時代を象徴するアイテムといえるでしょう。
若き日の作品も
本展には、上述のベルナールとの出会い以前、
ミュシャが20代の頃に描いた貴重なイラストや、
本人がコレクションしていた書物・工芸品も数多く展示され、
ポスター画家として一世を風靡するまでの足跡をたどることができます。
その中には鳥や花が描かれた日本の七宝焼の壺など、
19世紀後半からヨーロッパで流行した日本趣味(ジャポニスム)の工芸品も含まれます。
ミュシャの孫であるジョン・ミュシャによると
ミュシャはジャポニスムから大きな影響を受けており、
『ジスモンダ』など縦長の作品の形状は、間違いなく日本美術の影響があるとのこと。
他にも、ミュシャがわずか8歳で描いたという『磔刑図』も必見。
ミュシャの影響を受けた作品群
本展には後の時代においてミュシャの影響を受け描かれたとされる作品が多く展示されています。
1960-70年代にアメリカやイギリスで発売されたレコード・ジャケットやロック・ポスター。
そして、日本の文芸誌やマンガ、イラストの数々。
つまり、ミュシャの生きた時代だけどはなく、現代に至る作品が展示されているので、
大変多彩な展覧会になっているのです。
Old Fashioned Club 月野景史