【ドラマ】 『遺留捜査』 (上川隆也主演) 超入門/紆余曲折の歴史を辿る
今回はテレビ朝日・東映制作の上川隆也さん主演の警察ドラマ『遺留捜査』の基礎知識です。
テレビ朝日の数ある人気警察シリーズのひとつで、
第5シーズンが2018年7月12日20時の木曜ミステリー枠でスタートします。
しかしこのドラマは今まで紆余曲折の歴史を経てきました。
昨日の『刑事7人』の記事と同じような書き始めになってしまいましたが、
『遺留捜査』は『刑事7人』とも違い、放送されてきたペースもかなりバラバラです。
それでは足跡を簡単に振り返っていきます。
『遺留捜査』第1期は2011年4月クールのスタート。
『相棒』を放送する水曜21時枠で、東日本大震災の直後のスタートでした。
警視庁捜査一課の科学捜査係で、遺留品にこだわるマイペースで風変りな刑事・糸村聡(上川隆也)か主人公。
独自の捜査を行い、周囲の反発を受けながらも、遺留品から被害者の声を聞き真相を解き明かす。
ラストで事件関係者から3分の時間をもらい、隠れされていた真実を伝えるのが定番です。
ヒロインは捜査一課刑事役の貫地谷しほりさんでした。
1期は14.3%の高視聴率を残し、当然のように続編が作られました。
第2期は翌2012年の少しずれて7月クール、枠を木曜21時に移しての放送。
第3期は2013年の4月クール、そして枠も水曜21時に戻り、3年連続で放送されました。
クールと枠にずれがあったとはいえ、3年続いたのだから安定していたように思えますが、
実は第1期→2期で、糸村の本庁から所轄の月島中央署刑事課への異動に伴い、
レギュラー陣がほぼ総入れ替えになっています。
ヒロインポジションは上司の刑事課長役の斉藤由貴さんに代わりました。
高視聴率だったのになぜキャストをほとんど入れ替えたのか?
異例だと思います。
正確な事情はわかりませんが、ネットでの情報によると、
続編の製作決定が急で、1期キャストのスケジュールを抑えられなかったともいいます。
枠やクールの変更からも、制作背景に少しバタバタがあったと考えた方が納得いきます。
2期の視聴率は12.5%と、1期よりはだいぶ落としました。
3期で一旦休止
次の3期は月島中央署の舞台はそのままで、キャストを少し入れ替えて作られました。
この時、1期のレギュラーが一部復帰しています。
2期が1期に比べて数字を落としたので、テコ入れの意味があったのかも知れません。
このような変動があっても、1期~3期までいいクオリティをキープしていたと思いますが、
数字は1期から14.3%→12.5%、そして3期は11.5%と残念ながら右肩下がりに終わりました。
ここまでで連続ドラマとしては一旦休止となりました。
今考えると3期の11.5%という数字も立派に思えますが、
この2013年頃までは、同じテレビ朝日の長寿サスペンスドラマだった
『おみやさん』や『京都地検の女』がやはり11%台で休止になっていますし、
『遺留捜査』は1から3までで明らかに下降しているので、
ここらで潮時と判断されてもやむを得なかったと思います。
特に3期のメンバーはバランスはよかったので、もったいなく感じました。
しかし、連ドラとしては休止となってもシリーズ継続の意図はあったようで、
2015年5月まで4本の単発スペシャルが製作されました。
まさかの京都で復活
しかし、それから更に丸2年以上経過し、さすがにもう続編はないかと思われた矢先、
2017年7月クールで枠を木曜ミステリーに移し、
そして舞台を京都府警に移し、
当然糸村以外のレギュラーもほぼ入れ替えて、連続ドラマ第4期が作られたのです。
木曜ミステリーは伝統的に東映京都撮影所製作のドラマが放送されてきましたが、
近年は『科捜研の女』以外は不振で6~7%台の低視聴率が続いており、
遂に4月クールは2016年から東京製作の『警視庁・捜査一課長』に譲り渡していました。
そんな事情で、実績のある『遺留捜査』を京都に持ってきて作ったのでしょう。
新たな舞台は京都府警の中でも特殊な事案を扱う特別捜査対策室(特対=トクタイ)。
糸村は警察庁キャリアとは思えないので、警視庁から京都府警への異動などあり得ない筈ですが、
そこはドラマなので、無理な理屈付けもせず異動させてしまいました。
ニューヒロインには特対の同僚女性刑事の栗山千明さん。
京都科捜研も登場
そして大幅なメンバーチェンジを繰り返してきたこのドラマで、糸村以外で唯一1期から残っているのが、
いつも糸村からの無理な鑑定依頼に振り回される科捜研の村木繁(甲本雅裕)。
村木も警視庁から京都府警の科捜研へ、こちらは期間限定の人事交流という理屈付で異動してきました。
京都府警の科捜研といえば長寿シリーズ『科捜研の女』の舞台。
同一世界ではないようですが、『科捜研の女』を連想させるパロディ表現も挟み込まれています。
そういえば、糸村は東京時代から自転車ユーザーで京都でも引き続き愛用していますが、
『科捜研の女』の主人公榊マリコ(沢口靖子)も自転車通勤が定番です。ただ最近はあまり見かけませんが。
京都編は緩やか
上述のようにこのドラマは風変りでとにかくマイペースに行動をする糸村に周囲が振り回され、
過剰な反発を受けるのが定番でした。
それが名物でもあり、行き過ぎに感じられる時もありました。
京都編はそのような面も含め、過去に比べるとよくも悪くも緩やかでした。
東京からいきなり来た人間が勝手な行動をするのだから反発を受けて当然のように思いますが、
特対の面々は少々呆れながらも意外とすんなり受け入れた印象。
この緩さは木曜ミステリーらしいといえるかも知れません。
あえて指摘すれば、緩やかはいいのですが、その分新レギュラーのキャラの打ち出しが弱く感じました。
しかし、だからこそ安心して観れたともいえるでしょう。
初夏から盛夏にかけて撮影されたろう京都の街や森の風景が印象深いドラマでした。
第4期の視聴率は11%。
過去のシーズンと比べると低い数字ですが、
『科捜研の女』以外の京都製作のドラマとしては久々の二桁獲得でした。
ですので、引き続き第5期が作られる可能性が高いと思っていました。
しかし、今年になって上川さんが1月クールの木村拓哉さん主演の『BG』に続き、
4月クールは『執事 西園寺の名推理』主演とドラマ連投で、どうなるかと思いましたが、
無事放送が発表されました。
新シ―ズンは大きな変更はなし
第5期は引き続き京都編で、特対メンバーもほぼ留任。
ただ、妙な大物感のあるユニークなキャラだった室長役の段田安則さんは降板で、ちょっと残念ですが、
前期は同僚刑事だった戸田恵子さんが室長代理に昇格するので、雰囲気が大きく変わることはないでしょう。
戸田さんが昇格する分、同僚刑事として梶原善さんが加わり、僅かながら若返りするようです。
ともかく、もはや長期シリーズで前期からメンバーもほぼ変わらずとなれば、
まさか『刑事7人』のようなキャラや路線の変更はないだろうから安定は必然。
となれば期待されるのは各話のクオリティー。
楽しみにしています。
Old Fashioned Club 月野景史
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