【ドラマ】『シグナル 長期未解決事件捜査班』初回終了/悪くはないが不可解点多過ぎ ★韓流原作の視聴を推奨
4月10日、坂口健太郎さん初主演のカンテレ制作、フジテレビ放送のドラマ
『シグナル 長期未解決事件捜査班』初回第1話の放送が終わりました。
話はまだ完結しておらず、次回との前後編ということになります。
本作は2016年制作の韓国製警察ドラマ『シグナル』(キム・ウニ脚本)を原作としたリメイク作品。
現在の刑事が、過去を生きる刑事と無線で交信しながら事件捜査をするという
非現実のSF的・・・というより、超常現象をテーマとしたようなドラマです。
他の主要キャストは上の画像にも載っている北村一輝さん、吉瀬美智子さん、渡部篤郎さんと豪華。
更に甲本雅裕さん、池田鉄洋さん等、特に警察ドラマ好きには魅力的なメンツが並びます。
役柄としては、坂口さんが主役である現代を生きる刑事。
北村さんが現在は行方不明になっている刑事で、坂口さんと無線機で交信して捜査にあたる、
時空を超えたバディ、相棒といったところのようです。
といっても、どういう話になるか、初回だけではまだイメージが湧き難いですが。
吉瀬さんはかつて北村さんと親交のあった女性刑事で、タイトルにある長期未解決事件捜査班で坂口さんの上司になる役。
(初回の時点では所轄署の刑事課勤務、坂口は交番巡査なので、まだ上司・部下の関係ではない。)
渡部さんは警視庁刑事部長ですが、今回は野心家のヒールのようです。
さて、初回を見た感想ですが、雰囲気もよく緊迫感もあり悪くありません。
実はあまり期待していなかったので、拾い物感があります。
ただ、かなり不可解・不自然な点が多く、解り難い話でした。
今の日本のドラマは序盤にやたら難解な伏線めいたものを張り散らかして
視聴者を引っ張ろうとする傾向があるので、珍しくはありませんが、それにしても不可解過ぎのような。
そもそも、過去と無線で交信という荒唐無稽な主題なので、不可解なのは当然ともいえますが
テーマが非現実的であればこそ、その周辺をリアルにきっちり描く事も大事かと思います。
その点では不安も感じるスタートでした。
時効制度撤廃が足かせに
実は、話を解り難くしてしまった理由がひとつあります。
元ネタの第1話のメインとなる事件が、少女誘拐殺人事件の公訴時効がテーマである事。
日本は2010年に殺人罪の時効制度が撤廃されていますので、
そのまま現代日本を舞台にリメイクできないのです。
そこで、第1話の劇中年代を時効廃止前の2010年4月に設定したのでしょう。
2010年に坂口さんや吉瀬さんが時効間近の誘拐殺人の捜査を行う。
北村さんはその10年前の2000年から行方不明で、現在の坂口さんにトランシーバーで連絡してくる。
坂口さんはわけがわからないまま、北村さんとの通信内容を元に事件を追うという展開でした。
この劇中年代設定については来週以降どうなるのか?
公式サイトの予告文を見ると、次回は当面今回の続きですが、
一段落ついた後半以降で時間は8年後の2018年に飛び、
現在を舞台に「警視庁 長期未解決事件捜査班」が活躍するドラマとなるようです。
ただ、これはちょっとややこしい。
元々、「現在を生きる坂口さん」と「過去を生きる北村さん」がバディという非現実的な話で、
現在と過去の二つの時間がテーマなのに、
坂口さんのいる現在側に2018年と2010年という、更に二つの時間軸ができてしまいました。
しかも更に解り難いのは、坂口さんが2010年と2018年をタイムスリップかタイムリープしているような、
あるいは単にそれぞれの時代を並べて描いてるだけかも知れませんが、
ともかく二つの年代が錯綜しているような表現があるのです。
しかし、このシーンの持つ意味が不明です。
そもそも2010年と2018年のタイムラグは日本版で時効を描くための苦肉の策で、原作にはない筈。
そして、この他にも不自然なシーンがたくさんあります。
どうにも消化不良感が強いので、ここは元ネタの韓流原作ドラマを観てみる事にしました。
現在、動画配信サイトのGYAO!にて、
原作である韓国ドラマ『シグナル』 第1話 日本語字幕版を無料視聴できます。
https://gyao.yahoo.co.jp/p/00697/v12431/
実は私はいわゆる“韓流ドラマ”をちゃんと観るのは初めてだったのですが、
これはなかなかよくできたドラマでした。
第1話だけなので、もはやネタバレということもないでしょうから、
興味を持った方、日本版初回に消化不良を感じている方には視聴をお薦めします。
原作でも過去との交信という謎については不思議なままですが、
それ以外の日本版にあった不自然さはほとんど感じませんでした。
まさに上に書いたように、荒唐無稽なテーマだからこそ、しっかりドラマ作りをしています。
そして、そもそも過去との交信がテーマなので、現在と過去が錯綜したかのような描写はありますが、
日本版にあった、現在側である2010年と18年とでタイムスリップしたような意味不明なシーンはもちろんありません。
他にも日本版で感じた不自然な点、例えば
少年時代、誘拐を目撃した主人公の訴え方が弱いのではないかとか、
なぜベテランの刑事達がなんの実績のない主人公の進言をあっさり受け入れるのかとか、
その他色々、細かい点についてもしっかり描かれています。
それと見比べると、残念ながら日本版は出来のあまり良くないリメイクとの印象を持ちました。
もちろん第1話だけ、それも2話完結の前編だけを観ての比較です。
次回以降の展開で納得させてもらえることを期待しています。
1995 2000 2010 2018
しかし年代の設定について更にややこしい問題があります。
原作では誘拐殺人が起きるのと、北村さんにあたる刑事が消息を絶つのは同じ2000年ですが、
日本版では誘拐殺人は1995年、北村さん失踪は2000年と5年のタイムラグがあります。
これにより原作では現在=2015年、過去=2000年と明解なのですが、
日本版は2018年、2010年、2000年、1995年とキーとなる年が4つもできてしまいました。
誘拐殺人発生を1995年としたのは、2010年の時効成立まで15年という期間からの逆算でしょうが、
北村さんの失踪をその5年後とした理由が不明です。
あえて推測すれば、北村さん失踪の時点で吉瀬さんが同僚刑事でなければいけないので、
失踪を1995年にしてしまうと、吉瀬さんの現在の年齢(43歳)と合い難くなるからでしょうか?
これに今後は主人公の兄の事件が起きた年なども絡んでくるだろうから、更にややこしくなるでしょう。
この兄の事件というのは、おそらくこのドラマの縦軸のテーマということになってくるのでしょうが、
1話を見比べた印象だと、日本版は誘拐事件の後、対して韓国版は誘拐事件より前のように思えるので、
だとすれば時系列を変えていることになります。
視聴率は9.7%と発表されました。
二桁にもう一歩というところでしたが、不振のフジテレビ系としてはますまずか。
前評判の高かった月9の『コンフィデンスマンJP』の9.4%を上回りました。
今後はどうなりますか。
Old Fashioned Club 月野景史
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