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2017年8月13日 (日)

【おんな城主 直虎】小野政次(高橋一生)は『樅ノ木は残った』の原田甲斐か

2017年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』も早や後半、
8月13日放送で第32回が終わりました。

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中盤のクライマックスともいえる徳川の遠江侵攻が近づくにつれ、
ああ、これは『樅ノ木は残った』をやりたいのか、と思うようになりました。
もちろん、ネットでも同様の意見を見かけます。


『樅ノ木は残った』
山本周五郎作の歴史小説。
江戸時代前期に 仙台藩伊達家で起こったお家騒動「伊達騒動」が題材。
従来は悪人・奸臣とされてきた原田甲斐を主人公とし、
幕府による取り潰し政策から伊達藩を守り、すべての汚名を背負って死んだ忠臣として描かれました。
悪役→善玉へ、原田甲斐の人物像、また歴史観を覆したわけです。
1970年には大河ドラマにもなり、平幹二郎さんが甲斐を演じました。


そうであるなら、『直虎』において原田甲斐に当たるのはいうまでもなく小野但馬守政次(高橋一生)。
一般に知られる史実としては、家老職にありながら井伊家乗っ取りを謀った逆臣。
計略に敗れ、処刑されたと伝えられています。
それに沿って描けば、政次は前半から中盤にかけての悪役・トップヒールに座る筈です。

ただ、演じるのは注目度・好感度とも上昇中の俳優・高橋一生さん。
ドラマでのポジションも中盤の準主役格に当たります。
さて、どう展開するのかと思っていました。


高橋さん演じる政次は得体の知れない面もありましたが、
回が進むにつれ、主人公・井伊直虎(柴咲コウ)と表面は対立しながら、
主家である今川家も、身内である一族や家臣、領民たちも欺く形で、
井伊家を守るためにしっかり繋がっていきます。

ああ、政次=『樅ノ木』の原田甲斐かと思ったのです。

ただ、更に回が進むと、少しおかしくなってきました。

この時代の井伊家の資料は乏しく、そもそも直虎という人物自体よくわかっていません。
ですので、直虎周辺の出来事の多くはフィクションです。
それならば、ドラマとしては政次=甲斐という解釈も面白いかと思ったのです。

しかし、フィクションとはいえ歴史ドラマ。
政次が逆臣として処刑されたこと、
そして井伊家の記録に奸臣として名を残っていることは変えようがないでしょう。
そこをどうつじつまを合わせるのかが注目点でした。

ところが、直虎が家臣たちに早々と政次と繋がっていることを明かしてしまい、
家臣の大半たちも「やっぱり! 政次様は味方と思ってました。」と納得してしまったのです。
めでたしめでたし・・・ともいえるのですが、これでは『樅の木』的展開には繋がり難くなりまし、
それ以上に、現在の認識に繋がりません。

もしかしたら、更に裏をかく展開、つまり政次が直虎を本当に裏切るという、
逆サプライズ的な展開もあるのかとまで考えました。

発売されている公式ガイドブックには最近の回のあらすじは載っていません。
どうなるかは放送を見なければわからない・・・
という状況で迎えたのが今回でした。

この回では中盤で家康にまで直虎と政次との信頼関係が伝わり、
更に政次自身が井伊家復興を高らかに宣言し、ますますめでたしめでたしと思わせておいて、
思わぬ伏兵を出してきました。
井伊谷三人衆の1人、近藤康用(橋本じゅん)です。
この男が今までの良い流れをすべて覆してしまいました。

井伊谷三人衆は一般には井伊家を支えた家として認識されていますが、
たしかにこのドラマでは、今までのところそう描かれてきませんでした。
特に近藤はそうで、井伊家とは確執ばかりでした。

ただ、これまでの近藤の井伊への確執は主に直虎に対してで、
政次は無関係に思えたので、やはりこの展開はちょっと意外でした。

もし、こういう人間が出てくるとしたら、
家臣の中で唯一政次への疑念を捨てていない中野直之(矢本悠馬)かと思ったのですが、
これは違いました。ミスリード要員だったかも知れません。
さすがに、ここで直虎と直之の関係まで壊れたら、
これから武田の侵攻で更に苦難が続く井伊家がその前にガタガタになってしまいます。

しかし、いくらフィクションと割り切っても、
この展開はいささかトリッキー過ぎて感心しません。
まぁ、次回を観てから論評すべきかも知れませんか。


次回8月20日 放送の第33回は「嫌われ政次の一生」。
このドラマはサブタイトルで過去作品のタイトルをパロディにするのです。
元ネタは『嫌われ松子の一生』。
もちろん、政次退場編となるのでしょう。

Old Fashioned Club  月野景史

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