【ドラマ】『刑事7人』妻子の死は迷走の末の迷決着/天樹の復讐劇は『相棒』的倫理観へのアンチテーゼか
第3シーズンを放送中のテレビ朝日・東映制作の警察ドラマ『刑事7人』。
視聴率も二桁をキープしてまずまず好調です。
今日8月16日放送の第6話「家路」は節目の回でした。
第1シーズン以来の謎であった主人公・天樹悠(東山紀之)の
妻子の死についての真相が明らかになったからです。
しかしこの件、はっきりいって迷走の末の迷決着だったと思います。
シリーズ初回以来の命題
天樹の妻子の死は今から12年前、
2015年の第1シーズンの時点では10年前の出来事でした。
元々警視庁捜査一課の有能な刑事だったらしい天樹は、
妻子の死以来10年間、遺失物係として引きこもり状態だったのですが、
そこを捜査一課12係長の片桐正敏(吉田鋼太郎)に「そろそろ出てこい」と
引っ張り出されて現場復帰するところからこのドラマは始まりました。
その段階で妻子についての詳細は明らかにされません。
旧知の関係である筈の片桐すらよくは知らないようです。
こうなると、この問題がシリーズを通しての縦のメインテーマなのだろうと思います。
基本1クールのドラマとして放送されるのだから、
第1シーズン最終回までに驚くような真相が明かされるのかと思いました。
ところが、結局曖昧なまま1クールが終了してしまいました。
実はこの件は元々無理があったのです。
普通に考えれば、天樹絡みの事件に巻き込まれでもしたのかというところですが、
それだと、片桐はじめ警視庁関係者が事情を知らないというのが無理です。
第1シーズンは視聴率一桁で続編の可能性は低いと思われたので
失礼だけど、つじつまを合わせられず、続編もあり得ないから解明を放棄したのではないかと思いました。
激変の第2シーズンで妻子問題は棚上げ
ところが、第2シーズンが始まりました。
しかし、メインライターも変わり、天樹の性格もまるで別人かというほど激変してしまいました。
もちろん、ドラマ全体の雰囲気も変わりました。
このあたりついては昨年の放送時にこのブログにも書いています。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/72-4-1439.html
そして、妻子についてはほとんど・・・、もしかしたらまったくふれられなかったと思います。
視聴率は少し上げて二桁確保。
第3シーズンで妻子の件復活
そうして迎えた第3シーズンは基本路線は第2シーズンを踏襲。
そこに、棚上げになっていた妻子の問題を持ち出してきた。
ここまでの流れはそんな感じです。
さて明かされた真相は・・・。
天樹の妻と娘は工事現場の崩落事故で亡くなったとされていたのですが、
実はある陰謀のために仕組まれた殺人事件だったということでした。
おまけに天樹のキャラの変化や機動捜査隊への異動の事情まで、一気に片を付けてくれました。
これまでの事情を考えれば当然ですが、かなり無理やりでした。
正直、突っ込みどころは満載なのですが、あまり細々とは書きません。
それにしても今回の脚本の真野勝成さんという方は最近は『相棒』もよく書いており、
『刑事7人』は第2シーズンからメインライターを務めていますが、作風が独特です。
全体の雰囲気も癖があり、そこは良い面もあるのですが、
とにかく最初に驚かせ、これは一体どういうことかと引っ張っておいて、
結局その説明がない、いわゆる“回収”をしないという事が多いと思います。
ここは感心しません。
今回も冒頭近くで天樹が、義父(妻の父)でもある堂本俊太郎(北大路欣也)から
妻が妊娠していた事を告げられ、「僕の子ではない!」と返す衝撃の発言がありましたが、
どういうことだったのか、結局曖昧なまま終わりました。
アンチ杉下杉下右京的倫理観
しかし、ひとつ面白かった点があります。
天樹が妻子を死に追いやった男を言葉で攻めて殴りかからせ、
額で受けて拳を破壊、チェロリストとして終わらせてしまい、自殺に追い込むという形で
妻子の復讐を果たすという確信犯的展開。
刑事が私怨で犯人に復讐。
しかも結果的に死に追いやるとは。
テレ朝刑事ドラマ・・・というか、今の警察ドラマ全般に蔓延しているように思える、
『相棒』の杉下右京(水谷豊)的倫理観・正義感を覆すアンチテーゼとして興味深い、
などと感じました。
視聴率はこのドラマとしては過去最高の13.0%とのこと。
獲りましたね。
Old Fashioned Club 月野景史
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