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2017年2月 7日 (火)

【ドラマ】『嘘の戦争』 俳優・草彅剛の魅力全開/騙しがテーマの手堅い復讐劇

フジテレビ(制作はカンテレ)の草彅剛主演ドラマ『嘘の戦争』。
第5話まで終わって11%~12%台の堅調な視聴率で推移しています。
私も不満ゼロではないですが、俳優・草彅剛の力量を生かした面白いドラマとして楽しんでいます。

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不振が続くフジドラマの救世主
散々話題になっていますが、視聴率の面ではフジテレビは苦戦しています。
これは地デジ化になった2011年頃から言われ始めた事ですが、
ことドラマに関しては全般に不振の中、特にフジだけが悪いということもありませんでした。

しかし、2015年以降は民放4局の中では明らかに一人負け状態です。
フジはゴールデンタイム・プライムタイムに週4本連続ドラマ枠があり、
年間16本制作するのですが、2016年は二桁視聴率のドラマがゼロでした。
一桁と二桁を勝ち負けのラインとすれば16戦全敗。当然あの“月9”も全敗です。

ですが、『嘘の戦争』は平均二桁はおそらく大丈夫でしょう。
SMAP解散後初の大仕事となった草彅さんですが、2015年の『銭の戦争』でも好視聴率を残しており、
今回もフジテレビの救世主となったようです。もっとも制作はフジではなく系列のカンテレですが。


ちょっと異質な復讐物
『嘘の戦争』は30年前に家族を殺された主人公・一ノ瀬浩一による復讐がテーマ。
といっても、浩一は詐欺師なので、復讐も暴力ではなく、詐欺的手口で行われます。
詐欺師なので様々なタイプ・職業の人間になり済ましますが、草彅さんは実に上手い。
彼だけではなく、ヒロインで、詐欺師としての相棒である十倉ハルカ役の水原希子さんも同様です。
ただ、私が“異質”というのはこの点だけはありません。


初回でラスボスが判明?
身内の復讐が全編通してのテーマというと、
近年では『ウロボロス』、『探偵の探偵』なとが思い浮かびます。

これらのドラマでは仇となる主犯(ラスボス)の正体も事件の経緯も深い謎に包まれており、
主人公がそれを追い、事件に関わった末端の人間を潰しつつ、驚愕の真相にせまるのが通例です。
この2作がそうだということではありませんが、あまりに伏線めいたものを張り散らし、
結局何が真相だかよくわからないなどという事も起こり得ます。

しかし、『嘘の戦争』は第1話で家族殺害の主犯と思われる人間が
大企業であるニシナコーポレーション会長の二科興三(市村正親)であること、
更に第2話までには事件が起こった経緯まで、あらかたわかってしまいます。
もちろん、これはこの先ひっくり返る可能性もありますが、 ここまで観た印象としてはそうです。

では、その後の第3~5話までは何をやったかというと、興三のラインから枝葉の人間を割り出し、
先にそちらから順に復讐していったのです。
先に書いた“通例”とはほぼ逆ともいえる、かなり違う流れで進んでいます。

しかし、これからはいよいよ二科家本体に切り込むことになるようです。


二科晃の問題
第5話のラストでは、二科興三の長男・二科晃(安田顕)が、
浩一の家族惨殺事件の発端となった30年前の大学生達による
OL殺人事件に関わっていたことが明らかになりました。

浩一はもちろん興三への復讐の為に晃に近づいたのですが、
純朴で正直な性格の晃と微妙な友情が生まれつつあったので、衝撃の展開でした。
ただ、ネット上でこの展開は予想されていました。
前に晃の生年が1968年で、30年前に大学生であったらしき事を示す描写があったからです。

演じる安田さんは1973年生まれなので、その年齢で考えるとこの推理はできません。
こういうのを「きちんと伏線を張っている」と言うのでしょう。
伏線めいたものを張り散らして全然回収しないドラマが多い中、真面目な作りだと思います。


三瓶守の問題
このドラマで最初から、実はラスボスではなどと推測されているのが三瓶守(大杉漣)。
元は浩一の父の同僚の医師で、その後は浩一が身を寄せた児童施設に務め、
浩一を見守ってきた役柄で、タイから帰国した浩一は現在もこの施設に寝泊まりしています。

演じるのが大物個性派脇役俳優の大杉さんですから、
このまま善意の第三者という事もないだろうとは誰もが感じるし、何か秘密があるでしょうが、
ラスボスといった風でもないように思います。
では、過去の件にどう関わっているのか?
キーマンである事は間違いないでしょう。

今まで観た印象だと、このドラマは比較的手堅い作りで、
あまり奇想天外な展開、極端なサプライズはないように思います。
順当に行けば、今後はいかに二科興三を追い詰めていくのかというところでしょうが、
といっても、さすがにまだいくつか山はある筈。
それは二科家サイドと、浩一の詐欺仲間側にもでしょう。

今後の展開を、まずはキーマンとなる三瓶中心に予想してみます。


六車は三瓶か?
第4話より興三達の口から30年前の実行犯らしき「六車」という名前が出ています。
名前だけで、まだ本人は登場していません。
荒事の専門家、プロの殺し屋といったイメージですが、実像は不明です。

既に登場しているキャストの中に六車がいるとしたら、
年齢的には三瓶か、または興三自身しか考えられません。

「六車=興三」 はトリッキー過ぎて、このドラマではないように思います。
「六車=三瓶」はあり得なくはないでしょう。
まず現状、明確に否定する理由はありません。
二科隆が三瓶の顔を知らなかったのだから、三瓶=六車ではないとの見方もありますが、
元々隆は父から六車の名は聞いていても、顔は知らない可能性が高いです。

もし三瓶=六車なら、その後の浩一との関係は何なのか?
例えば、なんらかの事情で浩一の家族殺害に加担してしまったが、
それを悔い、贖罪として浩一を養育したというような事情も考えられます。


三瓶の娘は
三瓶は自分には娘がいるという発言をしています。
あえてそんな事を言わせるからには、何かに繋がるのではと推測できます。

もし、既に登場しているキャストの中にいるとしたら、
浩一の相棒である十倉ハルカは諸条件から考え難いので、
興三の娘で女医の二科楓(山本美月)か、
興三の二男でニシナコーポレーション社長・二科隆の秘書の四谷果歩(野村麻純)、
隆の妻の梨恵(たくませいこ)あたりか。

楓は晃・隆とは腹違いなので、連れ子という可能性もなくはないですが。
それが事件全体とどう絡んでいるのかが焦点でしょう。
もっとも、娘の件はスルーされる可能性もありますが。


まさかの晃=ラスボス!
晃については優秀ではない、どちらかといえば劣等生ながら、
正直で純朴な人間に描かれています。
30年前の事件に関わっていたとしても、浩一の家族惨殺はもちろん、
OLが死んだことすら知らない可能性もあります。
その晃に対し、浩一がどのような復讐を仕掛けるのかが当面の焦点になります。

ただ、実は晃はすべてを知っていて、浩一をも利用して会社乗っ取りを企ている…
つまり晃がラスボス的存在という可能性もゼロではないと思います。
可能性は低いと思いますが、どうも『嘘の戦争』というタイトルなのに、
戦争相手の二科家側の人間がみな何でも正直にしゃべり過ぎなようにも思えるので、
何かあるのではと勘繰ってしまうのです。


詐欺師仲間は? ハルカは??
一方、浩一サイドも波乱含みです。
詐欺師の師匠である百田ユウジ(マギー)は今までのところ復讐に協力していますが、
浩一のやり方には不満で、不穏な発言をしています。

しかし、一番の焦点はヒロインのハルカでしょう。
楓を絡めて、浩一との関係がどうなるか?
それにしてもハルカ役の水原希子さんは好演ですね。
ネットでは下手だとの批判的意見もあるのですが、私はよく演じていると思います。
草彅さんによって光らされている面もあるでしょう。


というわけで楽しんでいるこのドラマですが、不満があるとしたらそもそもの設定です。
大企業グループに詐欺を仕掛けるには、浩一のグループはあまりに脆弱なのにも関わらず、
浩一は無防備に手の内をさらし過ぎだし、相手に近付き過ぎです。
それなのに、巨大な力がある筈の二科家側が未だに浩一の正体を特定できないとは、あまり不自然。

つまり、純粋に騙しのトリック、テクニックが主題の作品として観ると、色々詰めが甘いのです。
・・・ですが、そこはドラマなので、割り切って楽しみましょう。
ともかく、今後の展開に注目です。


ところで草彅さん、『スペシャリスト』の第2シリーズはやらないのでしょうか?
そちらも楽しみにしているのですが。

Old Fashioned Club  月野景史

【嘘の戦争 CAST】
一ノ瀬浩一(旧姓名:千葉陽一) 草彅剛
二科隆 藤木直人
十倉ハルカ 水原希子
八尋カズキ 菊池風磨(Sexy Zone)
百田ユウジ マギー
七尾伸二 姜暢雄
四谷果歩 野村麻純

三瓶守 大杉漣

二科楓 山本美月
二科晃 安田顕
二科興三 市村正親

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