【相棒】“片棒時代” 異色の傑作 season7第11話「越境捜査」/右京と角田の好連携が冴える
※本作は2023年8月30日(水)15:48~にテレビ朝日で再放送されます
あまり一般的ではないと思いますが、『相棒』シリーズ16年の歴史の中で、
ファンの間で俗に“片棒時代”などと呼ばれている時期があります。
どういう意味か?
これは、杉下右京(水谷豊)の相棒役が不在で、特命係が右京1人だった時期のことです。
“時期”と言ってしまうと、設定上、そういう時期はいくらでもあります。
例えば、第1回放送開始時点まではそうでしたし、
その後も、旧相棒退場~新相棒登場のタイミングなどで何度もあるのですが、
実際に『相棒』において、特命係が右京1人の回が放送されていたのは、ある一時期だけです。
それは、初代相棒・亀山薫(寺脇康文)の退場(シーズン7第9話)から、
2代目相棒・神戸尊(及川光博)の登場(シーズン7第19話)の間。
つまり、初代相棒の亀山がシーズン半ばで退場し、
その後、最終話まで2代目の神戸が登場しなかったので、その間が“片棒時代”ということです。
話数でいうと、シーズン7の第10話から第18話までの9本ということになります。
この時期はなかなか面白い話も多く、視聴率も良かったのです。
その中でも、異色の話であり、傑作といわれるのが第11話「越境捜査」です。
相棒season7 第11話「越境捜査」 (本放送:2009年1月14日)
この回、片棒時代の杉下右京は冒頭から角田課長(山西惇)率いる警視庁組対5課の応援で、
銃器不法所持犯の摘発の為に町田市にいます。
特命係が組対5課と同行で、銃器や麻薬等、組織暴力関係の摘発・・・というと、
似たような展開はこの後には何度かありますが、この時が最初だったと思います。
珍しく組対5課とがっちり絡む話なので、伊丹刑事ら“トリオ・ザ・捜一”は登場しません。
その分、角田はもちろん、組対5課の小柄の大木長十郎(志水正義)と大きい小松真琴(久保田龍吉)、
いわゆる“大小コンビ”が活躍します。
おなじみの特命係の部屋も登場しません。
さて、5課と右京らはかなりの人員で臨んだにも関わらず犯人を逮捕しそこね、
県境を越えて神奈川に逃げられてしまいます。
そこで、タイトル通り“越境捜査”となり、神奈川県警と連携することになるのです。
そうなると、警視庁勢と県警側で軋轢が生まれるだろうと思いきや、
意外にも連携はうまくいき、銃器所持の犯人は比較的早く捕まります。
何やらあっけないくらいの展開。
主筋は別の事件?
しかし、その一方で、これは冒頭からなのですが、どうもよくわからない描写が差し込まれています。
どうやら、右京たちが追いかけている案件とは無関係の誘拐事件が、たまたま近くで進行しているようなのです。
視聴者からすると、何が起こっているのか、銃器犯と誘拐事件は絡んでいるのか、
そして、そもそも何がこの回の主題なのか?
あえて解り難くく進めるトリッキーな展開、そして緊迫感のある見せ方が魅力です。
ゲストの俳優陣もなかなか個性的で、楽しめます。
メインゲストは益岡徹さん。
『相棒』と同じテレビ朝日・東映制作の『京都地検の女』で池内刑事役を務めてきた人で、
当時も出演中でしたが、 この役はまた独特でした。
また、銃器不法所持犯の土平ドンペイさん、その人質になる野口かおるさんも
主筋とは無関係で、前半だけの登場ですが、強烈なキャラで印象的です。
特に、ストーリーに大きくは絡まない、不運にも巻き込まれて人質になってしまうだけのモブ的存在の女性に、
あのキャラを持ってくるセンスは面白い。
そしてラスト
右京と角田の、シリーズ屈指の鮮やかな連携による事件解決が見どころ。
ここに至ってようやく視聴者にも起こっていた出来事の全貌が、
そして、右京が何に気づき、何を考え、何をやっていたかが明らかになるという、なかなか上手い見せ方です。
このユニークな回の脚本担当はハセベバクシンオーさん。
1960年代から映画やテレビドラマで活躍し、2009年に亡くなるまで『相棒』でも多くの作品を手掛けた長谷部安春監督の子息。
おとうさんは監督、息子は脚本です。
バンクシンオー氏はこの回が『相棒』初執筆で、現在まで『相棒』は僅か5本しか手掛けておらず、この点もレアです。
Old Fashioned Club 月野景史
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