【消えた主演女優】 篠ひろ子/最後の出演も1997年 連続ドラマ主役
あの俳優最近見かけないなと思っても、実は2時間ドラマに出ていたり、舞台をやっていたりとか、時々あります。
例えば大ベテランの浜木綿子さん。ドラマはまったく出なくなりましたが、舞台には主演として立ち続けています。
しかし、ここに一人、ちょっと特異な方がいます。
長く第一線で活躍。
特に1980年代半ばからは10年以上にわたり、毎年のように連続ドラマに主演してきました。
確認される最後の出演も1997年、連続ドラマの主役。当時まだ40代。
それを最後に、おそらくなんのアナウンスもなく、一切の表舞台から消えた女優。
篠ひろ子さんです。
「ああ、そういえば!」と思いましたか?
別に消息不明というわけではありません。
ご主人が直木賞作家の伊集院静氏で、彼の口から近況も語られています。
追記:伊集院静氏は2023年11月に亡くなりました。
しかし、自身の女優業は19年前から完全に休止状態ですし、おそらくトークやバラエティにもで出ていないかと思います。
それでは、篠さんのキャリアを簡単に振り返ってみます。
篠ひろ子(しの ひろこ、1948年3月8日 -)
歌手としてデビュー~女優へ
篠ひろ子さんはいずみたく氏に師事して1968年、20歳の年に歌手としてデビューしています。
これも少し意外。
3枚目のシングル『悪い遊び』
小悪魔的なイメージ
しかし、歌手としては芽が出ず、70年代になって女優として映画やドラマに出るようになり、
1973年に人気ドラマ『時間ですよ』への加入で知名度を上げ、以降は女優として安定した活動を続けます。
ただ、主演スターとはいえず、どちらかといえば個性派脇役といったポジション。
不幸な過去を背負ったような役も多かったです。
80年代 主演女優に
その状況が1980年代半ばになって変わってきます。
不倫ドラマとしてブームになった「金妻」シリーズの第二弾である
『金曜日の妻たちへII 男たちよ、元気かい?』(1984年、TBS)への出演で人気を集めました。
これが36歳の年。
翌年『毎度おさわがせします』(1985年、TBS)の大ヒットで、更にお茶の間への浸透度を上げました。
このドラマでは木村一八さんや故堀江しのぶさんらの母親役。
思春期の息子や娘の子育てに奮戦する明るい主婦をコミカルに、パワフルに演じてピッタリはまり、新境地を開きました。
中山美穂さんの出世作なので、彼女の母親役と勘違いされる事もありますが、
中山さんは木村さんの同級生の役なので違います。
(中山さんの母親役は夏木マリさん→新藤恵美さん)
『金妻II』は主演ではありませんでしたが、以後の金妻路線では主役・ヒロインに格を上げ、
『毎度おさわがせします』も大人気で続編が作られ、
更に、これも主役ではありませんが、復活した『時間ですよ』シリーズにも出演するなど、
篠さんは大変な売れっ子となりました。
主演女優としては遅咲き、三十代も後半に差し掛かってのブレイクでした。
このようなキャリアの女優さんがそもそもかなりレアだと思います。
例えば片平なぎささんや浅野ゆう子さんもアイドル歌手てとしてのデビュー後、
女優としては長く脇役を務めていましたが、
それにしても主役を張るようになったのは20代のうちです。
90年代も別格の主演スター
篠さんは40代になり、1990年代を迎えても、コンスタントに主演・ヒロインを務めます。
田村正和さんとの夫婦役を演じた日曜劇場『カミさんの悪口』(1993年 TBS)は高視聴率で95年に続編も作られました。
田村さんとはこれ以前も主役ペアとして共演があり、この時代の40代の最強ペアといえるかも知れません。
象徴的だったのは内田有紀さんと母娘役で共演した『半熟卵』(1994年 フジテレビ)。
当時は内田さんのアイドル女優としての絶頂期で、ドラマにも連続主演していたのですが、
この『半熟卵』だけは、母親役の篠さんに主演を譲っています。
いかにこの時代の篠さんのバリューが高かったがわかります。
その篠さんの最後の出演作と思われるのが1997年1月-3月放送の『彼(かれ)』(フジテレビ)
もちろん主演です。
相手役はSMAPの稲垣吾郎さん、共演は沢口靖子さん!
沢口さんとはおそらくW主演のような位置付けだったろうとは思いますが、
それにしても沢口さんを差し置いての主役とは、この時点でも確固たるポジションにいた事がうかがえます。
突然、そして無言の退場
そして、この『彼 』を最後にドラマのみならず映画、舞台も、一切の出演が確認できません。
まさか、突然仕事が来なくなったなんて考えられません、自発的に引いたのでしょう。
でも「篠さんはどうした!」と騒ぎになったような記憶もないですね。不思議です。
しかし現在でも、売れっ子の脇役俳優は毎クールのようにドラマで見かけますが、
主演スターは、1本連ドラの主役をやったら、しばらくインターバルを置くことが多いです。
むしろ1年に1本くらいのペースが普通でしょう。
半年や1年ドラマに出なかったからといって、特に騒がれたりもしないと思います。
そういう意味では、篠さんもあまり気にされないうちに時間が経ってしまったのでしょう。
ですから、出演歴だけを見ると、突然途絶えたように感じますが、
実際は静かにフェイドアウトしていったというところでしょう。
特に篠さんの場合は夫が有名文化人ですから、彼が活動しているうちは、消息不明というわけではなく、
出ないことで騒がれもしなかったのでしょう。
たとえば、結婚して女優業は休業状態で、たまにCMで見かけたり、雑誌に出たりするような人はいます。
篠さんもそのような方のうちの1人みたいな印象でいて、気がついたら一切出ていない状態、
そして20年近く経ってしまった・・・という感じでしょうか。
最後の『彼』が49歳になる年の作品。
ということは、50歳で区切りをつけたということでしょうか。
前述のように、長いキャリアがあるとはいえ、主演スターとしたは遅咲きの人で、
しかも、実年齢よりも少し上のイメージの役が多かったかと思います。
年齢を区切りとしての実質引退とは、早かったように思います。
しかし、まさに綺麗な引き際といえるのかも知れません。
Old Fashioned Club 月野景史
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