【美術】ゴッホ『星月夜』 6/6『美の巨人たち』より/語られなかったもうひとつの「星月夜」
2015年6月6日放送のテレビ年京系『KIRIN~美の巨人たち~』テーマ作品「今週の一枚」は
フィンセント・ファン・ゴッホ『星月夜』(1889年)でした。
ニューヨーク近代美術館所蔵の作品。
番組を見て、ああこっちか!と思った人も少なくないでしょう。
ゴッホにはもうひとつ、「星月夜」と名付けられた傑作があるからです。
『ローヌ川の星月夜』(1888年)
こちらはパリのオルセー美術館所蔵。
2010年に国立新美術館で開催された「オルセー美術館展」に来日しました。
その時のタイトルは『星降る夜』のだったと思います。
この2点、描かれた年も1年しか違いません。
しかし・・・、ゴッホを語る上で、この1年の差は大変大きいのです。
番組ではこの絵の画像も出てきましたが、具体的に論じられはしませんでした。
フィンセント・ファン・ゴッホ
Vincent Willem van Gogh、1853年3月30日 - 1890年7月29日)
オランダ出身のゴッホは紆余曲折を経て、1886年パリへ、
そして1888年2月、芸術家の理想郷作りを目指し、南仏プロヴァンスのアルルを移住します。
すべて後年の評価ですが、このアルル時代が画家ゴッホの全盛期となります。
『ローヌ川の星月夜』はその年、9月頃に描かれた作品です。
ゴッホの作品の中でも一際美しい。
タイトルは「星月夜」ですが、街の灯りらしきものも描かれており、
“夜景”を描いた絵画の元祖でしょうし、一大傑作だと思います。
さて、その1888年10月、ゴッホの理想郷作りの呼びかけに応じ、ゴーギャンがアルルにやってきます。
しかし、二人の関係はまもなく破綻。ゴッホは精神を病んでしまいます。
1989年5月、ゴッホはアルルから約20キロ離れたサン・レミの病院に入院します。
それから間もない6月頃に描かれたのが、今回のテーマ作『星月夜』でした。
この時期の作品の見られる、精神の不安定さ感じさせる渦巻き状が特徴です。
ゴッホは日本美術、特に浮世絵に強く影響を受けた画家です。
番組では葛飾北斎の傑作『神奈川沖浪裏』(1831年頃)の構図からの影響について解題されました。
今回の番組ではアルル、サン・レミから終焉の地となったオーヴェールと取材し、
ゴッホの足跡を追いました。
大変良い企画でしたが、30分で、しかも浮世絵との比較をメインにしてしまったのは、
少々もったいなく感じます。せっかくなら前後編か拡大版でじっくりやってほしかったですね。
Old Fashioned Club 月野景史
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