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2015年6月14日 (日)

【訃報】クリストファー・リー死去/ドラキュラ・怪奇映画の大スター 8か国語を操る国際俳優

イギリスの俳優、クリストファー・リーが6月7日、亡くなりました。93歳。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG11H9D_R10C15A6CZ8000/

Christopher_lee_01

戦後のクラシックホラー映画(怪奇映画)の大スター。
特に吸血鬼ドラキュラ役で高名。
私が特に敬愛するピーター・カッシングとは、怪奇の名コンビとして知られます。

・・・といっても、それは主に1950年代末から1970年代半ば頃までの話で、
その後も長く世界を舞台に活躍した国際的名優ですので、怪奇俳優との呼び方は失礼かも知れません。
ではありますが、この分野のファンとして、やはり敬意を込め、
このブログでは怪奇名優として、追悼の辞を書かせていただきます。


クリストファー・フランク・カランディーニ・リー
(Sir Christopher Frank Carandini Lee, CBE、1922年5月27日 - 2015年6月7日)
英国出身ですが、母親は名門貴族の家系を継ぐ家の生まれ。
しかし俳優としては、193cmの身長を持て余し、1950年代半ばまではあまり役に恵まれませんでした。


ゴシックホラー映画
主に19世紀以前を舞台とし、ドラキュラやフランケンシュタイン、
狼男やミイラ男が跋扈する、恐ろしくも優雅で魅惑的な世界。
戦前、アメリカのユニバーサル映画が多くの名作を送り出しましたが、戦後は廃れていました。

その復興に乗り出したのが、英国のハマ―・フィルム・プロダクション。
第1弾として、『フランケンシュタイン』のリメイクにとりかかります。


最初は“フランケンシュタインの怪物”から
紆余曲折を経て、ハマーの『フランケンシュタインの逆襲』(1957年公開)は
怪物の創造者であるフランケンシュタイン男爵を主役とすることとなり、
英国のテレビドラマのトップスターだったピーター・カッシングの起用が決まりました。

怪物の方は、戦前の怪奇スター、ボリス・カーロフが扮した有名なユニバーサルタイプの
デザインは採用せず、
オリジナルでいくことになり、配役されたのがリーだったのです。


The_curse_of_frankenstein_01_3
リーが扮した“フランケンシュタインの怪物”

古典ホラ―の復活は歓迎され、映画は世界的大ヒットしました。
ただ、定着していたユニバーサル版モンスターのイメージとは違うリーの怪物の評価は高くはありませんでした。
少しグロテスク過ぎた面もありました。


ドラキュラ役で怪奇の大スターへ
さて、フランケンシュタインで当てたハマ―は、次はドラキュラにとりかかります。
主演はもちろん、一躍世界的怪奇スターとなったカッシング。
ただ、ドラキュラではなく、正義のヒーローであるヴァン・ヘルシングを演じることになりました。
そして、リ―がドラキュラに起用されたのです。

Christopher_lee_dracula_01

同じ怪物とはいえ、言葉もしゃべれずヨタヨタ歩くグロテスクなモンスターに比べ、ドラキュラ伯爵は貴族です。
よく配役されたものですが、これがピッタリはまりました。
公開されたハマーの『吸血鬼ドラキュラ』(1958年)は前作を上回る世界的大ヒット。
そして長身、貴族の血をひく風格ある佇まい、圧倒的迫力、力のある美声、
リ―はユニバーサルのベラ・ルゴシと並ぶドラキュラ俳優としての名声を得ました。

以降、リーはカッシングと共に怪奇映画の大スターとして、多くの映画に出演していきます。
「ピーター・カッシング&クリストファー・リー」は怪奇映画の代名詞となりました。
ただ、ドラキュラ役については、イメージの固定化を嫌い、ハマーに懇願されて再演するまで8年間演じませんでした。
せっかく掴んだ当たり役なのに、それに固執しないあたり、元々大物なのですね。


Horror_of_dracula
『吸血鬼ドラキュラ』(1958年) 英国版ポスター

ピーター・カッシングとは怪奇の名コンビとして22本の映画で共演。(非ホラ―含む)
ドラキュラはハマーのシリーズでは1973年まで7本で演じました。(その内、カッシングとの共演は3本)
また、怪奇分野の戦後のアメリカの大スター、ヴィンセント・プライスとの共演も実現しました。

70年代半ば。ハマー・フィルムは活動を停止し、60歳を過ぎたカッシングも出演が減少していきますが、
50代そこそこだったリ―は活躍の場を世界に、そして様々な分野の作品に広げていきます。


8か国語を操る、真の国際俳優
リ―は語学能力に長け、英語以外に7か国語(フランス語、イタリア語、スペイン語、
ドイツ語、スウェーデン語、ロシア語及びギリシャ語)を自在に語ると言われており、
実際にドイツ語、フランス語をしゃべって出演した作品も多数あります。

国際的スターなどと言われる人は多いですが、リーは本当の国際俳優ですね
スティーヴン・スピルバーグ監督の『1941』(1979年)では、
ドイツ軍の大佐として三船敏郎と共演していますが、少しだけ日本語も話しています。

21世紀を迎え、80代になっても『ロード・オブ・ザ・リング』や、『スター・ウォーズ』シリーズなど世界的な話題作に出演。
特に盟友カッシングが『スター・ウォーズ』第1作(1977年)にターキン総督役で出演していた事もあり(カッシングは1994年死去)
2002年にドゥークー伯爵を演じたリーとは、時空を超えた競演として話題になりました。

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『スター・ウォーズ』シリーズでのリー(左)とピーター・カッシング


出演作は250本以上にも上り(インターネット・ムービー・データベースでは278本)、
世界で最も多くの映画に出演した俳優としてギネスブックに記載されています。

戦後の怪奇映画の大スター。そして息の長い国際派の名優。
本当にこの人はドラキュラ伯爵と同様、不死身なのではと思っていました。

謹んで哀悼の意を表します。

Old Fashioned Club  月野景史

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