【ドラマ】『ロング・グッドバイ』/ギムレット ロックグラスの謎の真相
放送中のNHKドラマ『ロング・グッドバイ』。
これまで4回にわたり、劇中でのギムレットの扱いに絞って、ブログを書いてきました。(→前回ブログ)
カクテルグラスのイメージの強いギムレットがなぜロックグラスで出されたのか?
さて、このドラマでのギムレットの扱いについて、推測で色々書いてきましたが、
5月17日の最終回を前にして、少し確実なところをと、実際に動いて情報収集を試みました。
そもそもの疑問。
なぜ増沢磐二(浅野忠信)と原田保(綾野剛)がバーで飲んだギムレットは、
一般に知られるショートスタイルではなく、ロックスタイルだったのか?
ショートスタイル(カクテルグラス)
ロックスタイル(ロックグラス=オールドファッショングラス)
その真相は?
とりあえず先に答えを書くと、
時代考証的にはおかしいのは承知の上で、演出効果を優先した、という事のようです。
正式な取材ではないので、情報元は示しませんが、確かな筋からです。
ここでいう“時代考証”とは、もちろん日本でのことですが、
それを説明する前に、簡単に原作にふれておきます。
原作小説でのグラス
レイモンド・チャンドラーによる原作『長いお別れで(The Long Goodbye)』の舞台はアメリカ。
フィリップ・マーロウとテリー・レノックスが飲むギムレットのグラスの種類は明記されていません。
ただ、ヒントになる表記はあります。
レノックスがギムレットを飲み干して、からになったグラスを逆さにし、
水滴が落ちる様子を眺めるシーンがあるのです。
これはやはり、ごついロックグラスよりも、スマートなカクテルグラスの方が相応しく思えます。
それに、氷の入ったロックグラスを逆さにしたら、氷が散らばってしまいますし。
また、その後でレノックスがテーブルの端に、グラスを叩きつけて割るシーンもあります。
これはどのグラスでやろうと、随分乱暴な行為ですが、
それにしても、番組に出てきたような重そうなロックグラス(オールドファッションドグラス)
でやったとしたら、ちょっと乱暴過ぎるし、危険に感じます。
以上を考慮すると、どちらかといえばカクテルグラスの方がイメージし易く思えます。
無論、断定はできません。
当面の問題は、日本を舞台にしたドラマでのことなので、原作についてはここまでにします。
それではドラマの話に戻ります。
考証する時代、ドラマ『ロング・グッドバイ』の舞台は・・・、1950年代前半から半ばの日本。
テレビの民間放送が始まる前後です。
実はこの頃の日本では、氷を入れたロックグラスで酒を飲むことは、まだあまりなかったそうです。
これはちょっと意外に感じました。
追跡で色々取材もしたいと思いますが、とりあえず“確かな筋”からの情報です。
つまり、ドラマで描かれたような描写は、時代考証的にはおかしいということになります。
ではなぜ、それでもこのドラマでは、増沢と保にロックグラスでギムレット飲ませたのか?
それはつまり、男二人が脚の長いカクテルグラスで飲む姿は似合わない、
ロックグラスの方が相応しいから、ということのようです。
もちろん、女性はカクテルグラスの方が似合う。
だから、第3話で高村世志乃(冨永愛)がギムレットをオーダーした時は、ショートスタイルだったのです。
これは、言われてみればわかるような気もします。
私も、バーに通うようになる前は、カクテルグラスはおしゃれ過ぎて、
男が飲むのは気恥ずかしく、女性向けのように思っていたことがありました。
実際にカクテルを知ると、ショートスタイルのカクテルは強くハードなものが多く、
まったくイメージが変わってしまうのですが。
ですから、この制作スタッフの意図は解らないでもないのですが、
カクテルを知らない故の少しずれた判断にも思え、ちょっと残念な気もします。
しかし、視聴者にも、昔の私のように思う人がいるかも知れず、
そこを考慮した可能性も含めれば、仕方ないのかも知れません。
ともかく、男はロックグラス、女性にはカクテルグラスが似合うから、そう演出した。
これが、ドラマ『ロング・グッドバイ』におけるギムレットのグラス問題の、一応の真相です。
さて、後は来週土曜日の最終回でギムレットがどう描かれるか、注目しましょう。
Old Fashioned Club 月野景史
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