【美術】牧野邦夫作『未完成の塔』 4/27『美の巨人たち』/写実と幻想の画家
2013年4月27日放送のテレビ東京系『KIRIN~美の巨人たち~』
テーマ作品「今週の一枚』は牧野邦夫『未完成の塔』(1975年~未完)でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/130427/index.html
牧野邦夫
1925年(大正15年)-1986年(昭和61年)
大正末の東京に生まれ、昭和を生きた画家。
61歳、早過ぎるともいえなくも、道半ばで亡くなった人です。
実は今、東京の練馬区立美術館で、「牧野邦夫―写実の精髄」展が開催中なのです。
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/makinokunio2013.html
本作も展示されており、まさにタイムリーな企画でした。
こういう場合、この番組では展覧会についてちゃんと紹介しない場合も多いのですが、
今回はしっかり紹介されましたね。
なぜかと思えば、この展覧会、テレビ東京が主催者に名を連ねているのです。
いわば“タイアップ企画”ですね。
まぁそれはともかく…。
牧野邦夫
それほど有名ではないかも知れません。
Wikipediaにも、一応項目はありますが、ごく概略だけしか記されていません。
しかし、大変興味深い画家です。
練馬での展覧会は6月2日までと、まだ充分会期はありますから、
番組を見て興味を惹かれた方は、是非鑑賞を薦めます。
この展覧会については、また改めて書きます。
『未完成の塔』(1975年~未完)
さて、今週の一枚です。
そびえ立つ未完成の塔。
その麓には、さまざまな人間の姿が。
番組でも再三語られたように、
牧野邦夫はバロック期オランダの大画家レンブラントに薫陶した人です。
しかし、この絵だけを観て、レンブラントを思い起こすでしょうか?
私は、別の大画家を想い起こしてしまいました。
北方ルネサンス、ネーデルランドの大画家、ピーテル・ブリューゲルです。
これは同感の方もいるのではないでしょうか。
大勢の人間の様々な生態を緻密に書き込むのはブリューゲルの真骨頂ですし、
また、ブリューゲルにはまさに“未完の塔”を描いた『バベルの塔」という作品もあります。
番組では一切ふれられませんでしたが、
果たして彼は、ブリューゲルを意識したのかどうか?
番組では「写実と幻想」という言葉が何度も出てきました。
しかしこの絵は…、緻密な描写はありますが、
あまり「写実」というイメージは沸かないように思います。
しかし、彼の他の作品には、そのイメージにぴったりの絵が多いように思います。
番組は古書店主と女子高校生の対話を軸に、この絵を解題していました。
「63歳で亡くなったレンブラントに追いつくには、
自分は90歳まで生きねばダメだ。」
と語っていたという牧野。
2年ほど京都に暮らした画家は、五重の塔を観て回ったといいます。
そして塔を「描く」ではなく「建てる」と語っていたとも。
90歳までのライワークとして建て始めた塔は、志半ばにして終わったのでしょうか。
それとも、古書店主が言っていたように、既に完成しているのか?
練馬区立美術館「牧野邦夫―写実の精髄」展については改めて書きます。
Old Fashioned Club 月野景史