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2013年2月11日 (月)

【美術展】「奇跡のクラーク・コレクション ― ルノワールとフランス絵画の傑作」三菱一号館美術館~兵庫県立美術館/印象派巨匠の美に圧倒

付記【9月1日まで、兵庫県立美術館で開催中です

東京丸の内の三菱一号館美術館で5月26日まで、
「奇跡のクラーク・コレクション ― ルノワールとフランス絵画の傑作」が開催中です。

ルノワールといえば、誰が観ても明るく美しく綺麗、それはみな知っている事でしょうが、
本展に来日した絵画達は、本当にその点が際立っています。
この展覧会は推奨します。是非鑑賞ください。

Clark_kiseki_2013
奇跡のクラーク・コレクション ― ルノワールとフランス絵画の傑作
2013年2月9日(土)-2013年5月26日(日)
三菱一号館美術館

主催 :三菱一号館美術館、読売新聞社、クラーク美術館

※巡回:兵庫県立美術館 2013年6月8日(土)-9月1日(日)
http://mimt.jp/clark/top.html


東京では1月から東京都美術館で「エル・グレコ展」が開催中ですが、
これは昨年大阪で開催された展覧会の巡回ですので、
本展が事実上、今年の西洋絵画の本格展の皮切りになります。

この後、東京では3月にラファエロ展、ルーベンス展と、
ルノワール展と合わせて“3R”の展覧会に加えて、ミュシャ展もあり、
大変美しい絵たちが揃う催しが次々と開幕、美術ファンの楽しみは尽きません。


◆奇跡のクラーク・コレクション ― ルノワールとフランス絵画の傑作
さて本展です。
実は今週、本展の美術系ブロガー向けのイベントが予定されているのですが、
私は選にもれたので、安心して開幕二日目に鑑賞してきました。
(内覧会で無料で観れるのに、その前にお金払っていくのは勿体ないからという意味です(笑))

10日(日)に行った印象ですが、私の知る限り、この美術館の企画展としては、最高の混み具合で、
本展の注目度の高さを感じました。

ところで、本展はタイトルに「奇跡」とあります。
さすがにそれはやや大袈裟にしても、大変希少な機会なのは間違いありません。
なぜそうなのか?
それを知るには、まずクラーク美術館を知らねばなりませんね。


クラーク美術館
(Sterling and Francine Clark Art Institute、通称The Clark)

クラーク美術館は1955年開館の、アメリカのマサチューセッツ州ウィリアムズタウン所在の美術館。
ルノワール中心の展覧会ということなので、フランスかと思ってしまいますが、そうではないのです。
ニューヨーク・ボストンから車で約3時間。広大な森の中に立地します。

Clark_art_institute


20130210043

創業者のロバート・スターリング・クラークはアメリカの実業家。
彼がフランス人の女優であった妻フランシーヌと、欧米で収集したコレクションを所蔵しています。

ルネサンスから、近代に至るまでのヨーロッパ絵画、また陶器や銀器などの工芸といった、
時代と地域を越えた幅広い作品が揃えられています。
中でも、30点以上に及ぶオーギュスト・ルノワールによる油彩画は、大変貴重なコレクションです。
他にもピサロ、シスレー、モネなど、印象派絵画の質の高さが特徴です。

このクラーク・コレクションがまとまった形で館を離れ、国外で展示されたことはありませんでした。
しかし2010年より、日本の建築家・安藤忠雄の指揮のもと、施設の増改築工事が行われており、
これに伴い2011年にコレクションの世界巡回展開催が決定し、日本展も実現したのです。

これまで、同館所蔵の作品が日本に来ることも、
また距離的な問題もあり、日本人が同館を訪れることも少なかったでしょう。
今回はルノワールを中心に19世紀フランス絵画73点が来日しますが、
そのうち59点が初来日とのこと、たしかに希少な機会です。


展示構成
本展に来日した絵画はすべて19世紀の絵画で、73点。
前述のように、印象派中心のフランス絵画。そのうちルノワールの作品は22点です。
タイトルになっているにしては、ルノワールの比率が低いようには思えますが、
22点は大変な数ですし、そのレベルは高く、本当に美しい絵が多かったです。
たしかに、“奇跡”の展覧会です。

展示は、印象派以前のバルビゾン派のコローから始まり、
中盤にルノワールの絵が何点かあり、「ん? これでおしまいかな?」
と思わせておいて、最後に更にルノワールの傑作で圧倒する、という流れでした。
目録は画家ごとに並べられており、展示順と必ずしも一致しない為に見づらいのが難点でしたが。

ピエール・オーギュスト・ルノワール
(Pierre-Auguste Renoir、1841年2月25日 - 1919年12月3日)

印象派の巨匠、19世紀フランス絵画のビッグネーム。
それでは、本展来日中の珠玉のルノワール美術を何点か紹介します。


Clark_001
『劇場の桟敷席(音楽会にて)』ルノワール 1880年
本展の看板作品。
美しさ極まる絵ですが、その制作背景にはなにやら由縁もあるようです。
当初は肖像画として描いたのですが、依頼主に受け取りを拒否され、
いわば風俗画として描き直したのだとか。
何が不満だったのでしょうか?


Clark_002
『金髪の浴女』ルノワール 1881年
裸婦画、特にこの「浴女」はルノワールがよく描いたテーマですが、
本展はヌードは少なく、ルノワールはこの1点だけ、
他の画家もテーマがヌードとまでいえるのは、他に1点くらいです。
しかし、この1点の存在感は圧倒的でした。
モデルは当時のルノワールの恋人、後の妻です。


Clark_003
『シャクヤク』ルノワール 1880年頃
ルノワールには静物画のイメージはあまり強くないように思いますが、
これは美しくて、ゴージャスですね。
「ルノワールの静物画の中で最も豪華」という説明がありました。


Clark_004
『鳥と少女』ルノワール 1882年
理想化された異国趣味を描いた作品で、ルノワールがいくつか描いたテーマですが、
本作はともかく可愛い、愛らしい、そして色が綺麗です。


美しく綺麗、理想化された美はルノワールの特徴ですが、
それににしても本展の作品は際立っています。
ルノワール再発見です。

といっても、別にルノワールの知らなかった一面を発見というわけではありません。
いにもルノワールらしい、明るく美しい作品ばかりです。
ただ、そのレベルがとても高く、それがたくさんあるのです。
これはもう、蒐集したクラーク夫妻の、ルノワールへの拘りというしかないでしょう。、

年代は1880年頃(ルノワール40歳頃)が中心、油の乗り切った時期と言っていいでしょうか。
22点のうち、20点が1874-5年から1885年の約10年間に描かれた絵で、
20世紀の作品は1点もありません。


というような次第で、ルノワールの美に圧倒されればいい展覧会かも知れませんが、
もちろん他の絵も傑作が多くあります。
ルノワールの盟友モネの作品は6点。


Clark_005_2
『エトルタの断崖』モネ 1885年
フランスのノルマンディー、エトルタの海岸の断崖。
モネがよく描いた画題ですが、本作はなかなかの迫力です。
かのアルセーヌ・ルパンシリーズの代表作『奇巌城』の舞台となった地ですね。


その他、同じ印象派のピサロ、シスレーにも良い絵がありますが、
彼らほど著名ではない画家から挙げると、
印象派とは対極のアカデミズム絵画の巨匠レオン・ジェロームの、
異郷をテーマとした3点はインパクトありました。


Gerome_snake_charmer
『蛇使い』ジェローム 1879年頃
男の子でしょうか? 妖しげな魅力が漂います。


そして、そのアカデミズム絵画の最高権威、私の好きなアドルフ・ブグローの絵画も1点だけありました。


Seated_nude_1884
『座る裸婦』ブグロー 1884年
理想化された美を描くといわれるブグロー。
この絵もたしかに顔や肌はそのようなイメージですが、
皺の寄ったウエストなどはリアルで、それ故の艶めかしさも感じます。


ルノワールの作品は人物画がほとんどですし、
他の画家も、今回紹介した絵は人物を描いた絵が多くなってしまいましたが、
印象派中心なので、風景画の比率も高いです。

ともかく、色々楽しめる展示です。
三ヶ月半のロングラン開催で、まだ始まったばかり。
美しく、親しみ易い作品が多いのも特徴、お薦めします。

…しかし、「クラコレ」という略称はどうなのでしょう? まぁいいか(笑)
最後に、会場の三菱一号館美術館について紹介しておきます。


三菱一号館美術館
2010年4月、近年再開発が進められてきた東京・丸の内に開館した比較的新しい美術館。
まもなく、オープン3周年ですね。
1894年に原設計されたという煉瓦造り、明治期の重厚なデザインが再現されています。
http://mimt.jp/

美術館、及び周辺を少し写真で紹介します。


Dsc00948_3
低層階のレンガの建物が美術館。



Dsc00955
中庭への入り口付近。この建物は美術館ではありません。



Dsc00956
中庭にはちょっとした都会のオアシス。



Dsc00962
美術館の中庭からの入り口付近。



20130210038
最後の写真は、館内3階通路から中庭を写したものです。
この中庭を美術館と、カフェなどの飲食店やショップが囲むように作られています。
都心の、ちょっとした異空間ですね。


この美術館は、小さな展示室が数多くあるのが特徴です。
欧米の貴族のお屋敷で、絵画を鑑賞するような風情が魅力でもあるのですが、
狭いので、混み合うと立ち位置に困るような面があります。
開幕早々の三連休も終わり、最初のピークは過ぎたかと思いますが、
なるべく空いてそうな時間を探して、行かれることをお薦めします。


Old Fashioned Club  月野景史

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コメント

こんにちは。
私もクラーク・コレクション展に行ってきました。
見てきた作品を思い出しながら、興味を持って読ませていただきました。
今まで見たことのなかったような作品をたくさん見ることができました。
クラーク夫妻の好みで集めたコレクションということで、今まで見た印象派
の作品とは、少し違った雰囲気の作品が多かったように思いました。
特にルノワールの作品は質、数とも見てよかったと思いました。

この美受展のルノワールの作品を中心に、感想とその魅力についてまとめてみました。
よろしかったら、読んでいただき、ご感想、ご意見など何でも結構ですから、
ブログにコメントなどをいただけると感謝します。

dezireさん
コメントありがとうございます。
お返事が遅くなりごめんなさい。
私も本展のルノワール作品は質・量とも本当に良いと思いました。
明るくて美しくて綺麗で…、誰にでも薦められる展覧会です。
そちらのブログにもお邪魔しますね。

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