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2013年1月28日 (月)

【小説】江戸川乱歩翻訳のポー作品『赤き死の仮面』 初の書籍化

江戸川乱歩がエドガー・アラン・ポーの作品を唯一自ら翻訳した『赤き死の假面(仮面)』が、
1949年の探偵小説雑誌「宝石」での掲載以来、初めて書籍化されたと、
YOMIURI ONLINEが伝えています。

The_masque_of_the_red_death
『赤き死の仮面』1919年の挿絵より

エドガー・アラン・ポーはアメリカの作家。いわばミステリ作家の始祖。
江戸川乱歩はそのポーの名を模した、日本のミステリ界の父。
乱歩によるポーの翻訳となれば、ミステリや幻想小説のファンとしては垂涎の作、
これは読みたいです。

なのですが…、ちょっと気になる点もあり、
とりあえずニュース記事を引用します。

☆☆☆
乱歩訳ポー作品、初の書籍化…「赤き死の假面」
作家、江戸川乱歩(1894~1965)が、ミステリーの先達、エドガー・アラン・ポー(1809~49)作品を唯一自ら翻訳した「赤き死の假面かめん」が、1949年の探偵小説雑誌「宝石」での掲載以来、初めて書籍化された。

乱歩にとってポーは、ペンネームに名前を借用したほど愛読した作家で、日米のミステリーの祖の“合作”が約60年ぶりによみがえった。

この本を出したのは、豪華本の文化を守ろうと昨年、一人で限定版専門の出版社、藍峯らんぽう舎を設立した新潮社OBの深江英賢ひでたかさん(64)。敬愛する乱歩関連の作品から、埋もれていた本作を見つけ、第1弾として書籍化した。箱入り牛革の背表紙の豪華装丁。疫病に襲われた国の宮廷で起こる怪異譚たんが、〈暗黒と、頽廢たいはいと、「赤き死」とが凡すべてを支配した〉など、幻想味あふれる文体で訳されている。
(2013年1月27日17時36分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20130126-OYT1T00603.htm?from=ylist
★★★

さて、この記事を読んでも、肝心の書籍の価格等、データがよく判りません。
普通に書店で売ってるのでしょうか?

そこでネットで調べると、発行元のらんぽう舎(藍峯舎)のサイトがありました。
ここに詳しく書かれています。
http://www.rampousha.co.jp

このサイトによると、同書は既に昨年12月末に発売されているようです。
内容は表題作に、乱歩によるポーの評論12編を加えて、
350部限定 価格は10.000円。
この部数ですから、一般書店には流通しておらず、購入方法は限定されます。

そして、10.000円という価格は…おいそれとはいきませんね。
とりあえず、価格についてはこれ以上言及しません。
この『赤き死の仮面』について少し記します。


『赤き死の仮面』(The Masque of the Red Death)
エドガー・アラン・ポー(ポオ)作 1842年

誤解してしまいそうてすが、乱歩による翻訳の書籍化が初めてなだけであって、
この小説自体の日本語訳本はいくらでもあります。

本作の題名は『赤死病の仮面』と訳されることも多く、Wikipediaもそれを採用しています。
が、私見ですがゴシック小説のタイトルとしては、断然『赤き死の仮面』が優れていると思います。
10.000円の書籍になるくらいだから、大長編と思われるかも知れませんが、短編です。

ある王国を舞台に、恐ろしい疾病をテーマとする恐怖小説。
幻想的、また退廃的、そのストーリーは難解です。

藍峯舎のサイトによると、乱歩がポー作品を翻訳したのはこの1点だけとのことです。
これも意外ですね。
乱歩は翻訳家ではないですが、海外小説の日本への紹介に力を尽くした人です。
翻案小説も少なからず書いています。

ましてポーは自らその名をもじった作家であり、短編が多いのだから、
もっと訳していてもいいように思えます。
しかも1949年なので戦後、晩年とまではいえなくも、だいぶ後年ですね。
そして、それが雑誌に掲載されただけで、今まで書籍化がなかったというのも意外です。

この乱歩訳版『赤き死の假面』の、探偵小説雑誌『宝石』(岩谷書店)への掲載は
昭和24年(1949年)11月号。
同誌ではポーの没後100年祭記念として「ポオ怪奇探偵小説傑作選」の特集が組まれ、
8篇の短篇を掲載されたのですが、大半が旧訳の再録だったようですが、
そのトップを飾ったのが乱歩訳し下ろしの『赤き死』であったとのことです。

乱歩の『赤き死の仮面』…読んでみたいですが。


ここからは蛇足です。
乱歩からは離れますが、クラシックホラー映画ファンとしては、
この小説の映画化作品を紹介せずにはいられません。


The_masque_of_the_red_death1964
『赤死病の仮面』(1964年)

アメリカの映画会社AIPは、1960年からロジャー・コーマン監督による
ポー作品を原作とする映画シリーズを連続で制作をし、世界的にも成功をおさめました。
本作はその第7作目であり、最高傑作ともいわれます。
このシリーズのほとんどに主演してきた、戦後アメリカ怪奇映画の第一人者、
ヴィンセント・プライスが本作でも堂々の主役を務めています。

ただ、このシリーズはちょっと難解な面もあり、その為かは判りませんが、
これ以前のシリーズ作はだいたい日本でも劇場公開されていますが、本作は劇場未公開です。
ビデオやDVDは発売されています。



予告編
これを観ても、難解なイメージは受けるでしょう。

同時代ですと、イギリスのハマー・フィルム・プロダクションが制作した、
フランケンシュタインやドラキュラといった、おなじみの怪物達が登場する怪奇映画は、
ほとんど漏れなく公開されています。
やはりこちらの方が、少なくとも日本人わかり易いのですね。
しかし、その荘厳な雰囲気と、言い知れぬ恐ろしさはやはり極上です。

怪奇ファンとしては、ハマーの代表的な作品でヒロインを演じたヘイゼル・コートが、
アメリカに渡って『赤死病の仮面』に出演しており、その意味でも興味深い作品なのです。
このキャリアなので、ヘイゼル・コートは「ホラー・クイーン=怪奇映画の女王」とも呼ばれます。


Vincent_price_hazel_court
ヴィンセント・プライス(右)とヘイゼル・コート
(別の映画のスチールですが。)
怪奇スターとはいっても、クラシックホラーの名優は美しくて、気品があるのです。


Old Fashioned Club  月野景史

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