【美術展】※必見「生誕90周年記念 山下清展」日本橋三越本店/あの放浪の天才画家の画業を俯瞰する絶好の機会☆1月14日迄
東京日本橋の三越本店で1月14日まで、
「生誕90周年記念 山下清展」が開催中です。
生誕90周年記念 山下清展
2012年12月27日(木)-2013年1月14日(月・祝)
日本橋三越本店
www.mitsukoshi.co.jp/store/1010/yamashita
山下清
(やました きよし、1922年(大正11年)3月10日 - 1971年(昭和46年)7月12日)
山下清画伯は日本人画家として、一~ニを争う有名人でしょう
なぜ有名か? やはり1980年代から1990年代にかけて放映された、
芦屋雁之助さんが主演人気テレビシリーズ『裸の大将放浪記』の影響が大きいでしょうね。
清については、以前代表作の『長岡の花火』がテレビ東京の『美の巨人たち』に取り上げられた際、
テレビドラマについても併せて、このブログに書いたことがあります。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/79-b222.html
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/79-c939.html
しかし、山下清の芸術活動全般についてよく知っている人は、多くはないでょう。
本展は清が放浪生活に入る前、10代前半の頃から、49歳で亡くなる最晩年まで、
その画業全般を、またその生涯を俯瞰する、希少な展覧会です。
この展覧会は既に昨年から広島の福山、福井、佐賀、大分と巡回しており、
更に本展の後は、以下のように開催予定です。
富山県水墨美術館(2月1日~3月10日)
松坂屋美術館(3月16日~4月9日)
しかし、この日本橋展は正味18日間という短い日程で、
しかも百貨店の催事としての開催ということもあり、
東京近辺の展覧会の情報を集めたサイト等でも、あまり紹介されていません。
大変貴重な機会だけに残念に感じます。
展示点数も150点あまり、百貨店の催事と思っていくと、
消化し切れないほどのボリュームです。
なにより、すべての作品にではないですが、清本人のユニークなコメントを添えられており、
それを読むだけでも、それなりの時間が費やされます。
私は山下清の何を知っているわけでもないので、軽々しくは言えませんが、
これはもう「山下清のすべて」と言い切っていいほどの展示ではないかと感じました。
展示構成は以下の通りです。
第1章:少年期の山下清そして放浪
第2章:芸術家としての挑戦
第3章:初のヨーロッパへの旅と遺作・東海道五十三次
以下、簡単な年譜と共に、山下清の画業を振り返ります。
1922(大正11)年3月10日、東京市浅草区田中町に生まれる。
1925(大正14)年 重い消化不良からの高熱で、軽い言語障害となる。
1934(昭和9)年 千葉県の養護施設「八幡学園」に入園。「千切り絵」が清の画才を発揮させ、彼独自の技法による貼絵となる。
1940(昭和15)年 18歳
11月18日に突然、学園から姿を消し放浪の旅に出る。
幾つかの職業を転々としながら千葉県内、そして日本各地を放浪。
時折、母の家や学園に戻り、脳裏に焼き付いた旅先での風景を貼絵にした。
1953(昭和28)年
アメリカの雑誌『ライフ』が清の作品を見て驚嘆、放浪中の清を捜し始める。
1954(昭和29)年 32歳
1月10日、鹿児島で発見される。弟・辰造が迎えに行き、清の放浪生活は終わりました。
『桜島』 貼絵/1954(昭和29)年
放浪生活最後の地、鹿児島を描いた作品。
このように、テレビでおなじみの清の放浪生活は18歳から32歳まで、
太平洋戦争を挟んでの14年間のことでした。
実はドラマとは違い、旅先で創作をすることはありませんでした。
その抜群の記憶力を頼りに、学園に戻っている間に制作に励んだのです。
すっかり有名になり、個展も開かれるようになった清は画家として生きていきます。
もちろん旅は続けました。
ただし、今度は放浪ではなく、画家として制作のための旅行です。
1961(昭和36)年 39歳 ヨーロッパ他9カ国を訪問。
本展では欧州を描いた作品も多く展示されています。
そのセンス・技術は更に洗練されています。
『ロンドンのタワーブリッジ』 貼絵/1965(昭和40)年
1964(昭和39)年
素描による『東海道五十三次』の創作を始める。
しかしその最中、高血圧による眼底出血に見舞われ、療養生活に入ります。
1971(昭和46)年 7月10日の夜、突然の脳出血で倒れる。7月12日朝永眠。
最後の言葉は『今年の花火見物はどこに行こうかな』でした。享年49歳。
『東海道五十三次』は中絶に終わったかと思われましたが、
清は療養生活の間も周囲に隠れて制作を続けており、
ペン画として55点が残されました。
山下清の作品はおなじみの貼り絵の他にはペン画が多く、一方で、油彩画は少ないです。
記憶を頼りに一気に作り上げる清にとって、
絵の具が乾くまで時間がかかる油彩は性に合わなかったようです。
本展ではその油彩画も多く展示されています。
他に、自ら好んだという陶器の絵付けや、独自の水彩画も。
そして貼絵も、年齢と共に確実に洗練されていっていることがわかります。
生誕90周年、「日本のゴッホ」「放浪の天才画家」と称される山下清は、
本当にすばらしい芸術家であったむことを改めて実感しました。
最後にユニークな作品を紹介しましょう。
『ソニコンロケット』 貼絵/1959(昭和34)年頃
増田屋コーポレーション所蔵
玩具工場を見学した清は、この玩具「ソニコンロケット」を大変気に入り、
後日、この貼絵を玩具会社に進呈したそうです。
Old Fashioned Club 月野景史
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