【美術】ルノワール『浴女たち』1/19放送『美の巨人たち』/印象派の巨匠、最晩年の回帰
1月19日放送のテレビ東京系『KIRIN~美の巨人たち~』のテーマ作品「今週の一枚」は
オーギュストルノワール 『浴女たち』(1918年-1919年) でした。
今回は今年初めて、西洋絵画がテーマでした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/130119/index.html
ピエール・オーギュスト・ルノワール
(Pierre-Auguste Renoir、1841年2月25日 - 1919年12月3日)
印象派の巨匠、19世紀フランスのビッグネーム、ルノワール。
水浴する裸身の女性たち、「浴女」はルノワールがよく描いた主題です。
前回も書きましたが、本作はその中でも最晩年の作、絶筆といわれます。
同じ印象派の巨匠で親友の間柄とはいえ、クロード・モネと比べると、
モネは風景のイメージが強く、ルノワールは人間、特に女性のイメージが強いですね。
高さ110cm、幅160cm。
陽光降り注ぐ新緑の上に、ゆったりと体を横たえる2人の乙女。
よく見るとも画面奥の池では、更に3人の女性が楽しげに戯れています。
しかし、なんといっても目につくのは、女性達の豊満な…
いささか豊満過ぎるにうにも思える肉体です。
木々も大地も肌の色も一つに溶け合った、光輝く色彩の饗宴。
ルノワール自身が、自らの画業の集大成と呼んだ作品です。
ルノワールは、1841年フランス中部の街リモージュで生まれ、3歳の頃に家族とパリに移住。
13歳で陶磁器の絵付け職人に弟子入りし、次第にその才覚を発揮し始めました。
ルノワールのそのキャリアを意識してか、今回の番組は現代のパリに生きる絵付け職人の青年と、
その師匠を狂言回しに進みました。
「絵は楽しく、美しく、愛らしいものでなくてはならない」
それが画家ルノワールの生涯にわたるテーマでした。
実はルノワールは、生涯果敢に新たな表現を求め続けた画家で、
その作画法も時代と共に変わっていきました。
印象派の技法で市井の人々の幸福な日常を描いた初期、
乾いたタッチと輪郭線で古典絵画へと回帰した「堅い時代」と呼ばれる中期、
次第に柔らかく、紅色に輝く肌を持った新たな女性像へと転じていきます。
美しく、幸福な絵を描き続けたルノワール。
しかし後年、ルノワールは怪我やリューマチで手を患い、絵筆を満足に握れなくなります。
そんな苦境の中、画家は包帯で筆を手に括りつけ、凄まじい執念で制作を続けました。
よく知られている話ではありますが、あの明るいの裏側にそんな壮絶なことがあったとは。
元々、ルノワールは美しくふくよかな女性を多く描いてきましたが、
それにしても最晩年を迎え、なぜこれほどまでに豊満なミューズを描いたのか?
番組ではその答えとして、画家が若きに憧れたバロック絵画の巨匠、
ルーベンスへの回帰と結論付けました。
ピーテル・バウル・ルーベンス 『三美神』 (1635年頃)
ルーベンスといえばこの豊かな肉体表現、トレードマークです。
たしかに、今週の一枚『浴女』の裸体表現はルーベンスを強く感じさせますね。
そういえば、今年は3月9日から渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで、
「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」展が開催予定です。
http://rubens2013.jp/
そして、先行する2月9日からは丸の内の三菱一号館美術館で、
「奇跡のクラーク・コレクション ― ルノワールとフランス絵画の傑作」が開催されます。
(ただし、今回のテーマ作『浴女』は来ません。)
http://www.mimt.jp/clark/top.html
もちろん、3月2日には国立西洋美術館でラファエロ展も始まります。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/32-8221.html
ラファエロ、ルーベンス、ルノワール、女性を美しく明るく描いた画家達の競演ですね。
Old Fashioned Club 月野景史
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