【美術展】「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」国立新美術館/優れた美術品の収集こそ我が一族の誉れ
東京六本木の国立新美術館で12月23日まで、
「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」展が開催中です。
会期もあと一週間ほどとなってしまいました。
リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝
2012年10月3日(水)-12月23日(日)
国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)
主催:国立新美術館、朝日新聞社、東映、TBS
後援:外務省、リヒテンシュタイン侯爵家財団、スイス大使館、オーストリア大使館
http://www.asahi.com/event/liechtenstein2012-13/
リヒテンシュタイン侯爵家
さて、展覧会のタイトルになっている「リヒテンシュタイン家」とは?
この一族と、美術品との関わりを簡単に紹介します。
ハプスブルク家の寵臣として活躍したリヒテンシュタイン家は、
1608年に世襲制の「侯」の位を授与され、侯爵家となります。
その後、1719年に神聖ローマ皇帝カール6世より帝国に属する領邦国家として承認され、
リヒテンシュタイン侯国が誕生しました。
ヨーロッパの独立小国ですね。スイスとオーストリアに囲まれるように位置します。
優れた美術品の収集が一族の誉れとなる
一族のなかで、本格的に美術品の収集に着手し、コレクションの核を築いたのは、
カール1世侯(在位1608-27年)と息子カール・オイゼビウス侯(在位1627-84年)でした。
カール・オイゼビウス侯は「優れた美術品の収集が一族の誉れとなる」という理念を記しています。
以来、この家訓は歴代の諸侯に受け継がれていきます。
18世紀初頭、侯爵家の避暑用の住まいとして、ウィーン郊外のロッサウに造営された「夏の離宮」。
落成から約1世紀を経た1807年より、ここで侯爵家の美術コレクションが公開されました。
華やかな欧州の貴族社会、21世紀の日本人からすれば、おとぎ話の世界です。
しかし、それも現実の激動に飲み込まていきます。
オーストリアがナチスドイツに併合された1938年、コレクション公開中止となり、
安全な場所への移動が計画されました。
ナチスの妨害を逃れ、決死の努力によって奇跡的に難を逃れたコレクションは、
最終的に侯国の首都ファドゥーツに移送されました。
戦後、侯爵家は再度の公開を希望したとされますがかなわず、
コレクションはファドゥーツ城に秘蔵されてきました。
今世紀に入って2004年、ウィーンの夏の離宮で66年ぶりに再公開に至ったのです。
そして今年、待ち望まれてきた日本での公開が遂に実現しました。
リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝
本展の構成は以下の通りです。
◆エントランス
◆バロック・サロン
◆リヒテンシュタイン侯爵家
◆名画ギャラリー
・ルネサンス
・イタリア・バロック
・ルーベンス
◆クンストカンマー:美の技の部屋
◆名画ギャラリー
・17世紀フランドル
・17世紀オランダ
・18世紀-新古典主義の芽生え
・ビーダーマイヤー
一見してわかるように、バロック美術が中心です。
単に絵画を展示するだけでなく、本拠地である「夏の離宮」を再現したような
荘厳な空間が演出されており、タイムスリップしたような気分に浸れます。
『マリア・デ・タシスの肖像』アンソニー・ヴァン・ダイク(1629/30年頃)
ヴァン・ダイクの肖像画は、上流階級の人々の間で、絶大な人気を博しました。
マリア・デ・タシスは、アントウェルペンの上流市民の出身と伝えられます。
気品と同時に親しみやすさを巧みにとらえる画家の力量が際立っています。
やはりヴァン・ダイクの肖像は魅力的です。
『虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人』
エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(1793年)
少し時代が下がって、18世紀末の作品。
フランス王妃マリー=アントワネットの公式画家として名を馳せたヴィジェ・ルブラン。
私の好きな画家です。
ルブランはフランス革命時に国外に脱出、ウィーン滞在中に制作された絵です。
アロイス1世候(在位1781-1805年)の侯妃カロリーヌが、
ギリシャ神話の虹の女神イリスとして、古代風の装いで描かれています。
新古典主義の時代には、とりわけ女性の間で、古代の著名人や神々に自身をなぞらえた肖像画が流行しました。
何かと忙しい年の瀬を迎えてしまいましたが、
現実をしばし忘れる荘厳の世界を、ぜひ体験してみてください。
*本展は東京会場終了後、以下のように巡回予定です。
高知県立美術館 2013年1月5日(土)-3月7日(木)
京都市美術館 2013年3月19日(火)-6月9日(日)
Old Fashioned Club 月野景史
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