【写真】『板塀』木村伊兵衛 9/29『美の巨人たち』/苦悩する大写真家が農村で出会った光景
前回、9月29日放送のテレビ東京系『美の巨人たち』のテーマ作品「今週の一枚」は
木村伊兵衛の写真「板塀」(1953年)でした。
木村伊兵衛
(きむら いへい 1901年12月12日-1974年5月31日)
戦前・戦後を通じて活躍した日本を代表する写真家の一人。
ライカの神様、スナップショットの達人と呼ばれた人です。
この番組でも写真家が取り上げられることは少なく、貴重な機会でした。
しかし、今回のテーマ作はなんとも不思議な写真です。
これが傑作なのでしょうか?
木村伊兵衛のレンズが捉えたのは、名もない市井の人々日常でした。
その何気ないひとコマをすくい上げるように、撮っていることを相手に気付かせず、
伝説的なスナップショットの数々を生みだしてきたのです。
戦後、木村は女性を撮らせたら天下一品ともてはやされていましたが、
ある写真に衝撃を受けます。
木村と同じくライカを駆使してフランスで活躍していたアンリ・カルティエ=ブレッソンの作品でした。
華やかな名声とは裏腹に木村は「これから自分は報道写真家として何をとればいいのか?」
内心では忸怩たる思いを抱えていました。
そんな時、写真展の審査を依頼され木村は秋田に向かうことになったのです。
敗戦後の混沌の中、見た目には何一つ昔と変わらない農村の暮らし。
それに魅入られた木村は度々秋田を訪れるようになります。
4度目に秋田へやって来た木村の心を捉えたのが、今回の作品『板塀』でした。
何百年かの歴史が染みついているかのような旧家の板塀に変わりゆく農村の実体があります。
板塀に囲まれていたのは広大な豪農の家。
しかし、戦後の農地改革で、地主と小作人と構図は崩壊しつつあった時期です。
それにしても、なぜ馬のお尻だけ?
板塀だけでは造形写真。
馬が中心にきては板塀が負けてしまう。
馬の尻尾だけ入れることによって板塀を主役に、生活も感じられるのです。
今回は「美術探偵夢子さん(山村紅葉氏)」編。
おっちょこちょいの夢子さんとフィルムカメラの取り合わせなので、
オチはすぐにわかってしまいました。
ところで、木村伊兵衛が衝撃を受けたとして紹介されたブレッソンの写真は、
あの大画家アンリ・マティスを写したものでしたが、
マティスのことを「印象派」と紹介していましたね。
あまりそう呼ばれることはないと思いますが。
関連My Blog 【写真】『日曜美術館』1/22「木村伊兵衛 天然色でパリを撮る」
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/122-b646.html
Old Fashioned Club 月野景史
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