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2012年9月11日 (火)

【昭和プロレス】金髪の一匹狼 上田馬之助の自伝的著書『金狼の遺言 完全版』

昨年12月亡くなったプロレスラー上田馬之助さんの自伝的著書
『金狼の遺言 完全版』を読みました。

Kinrou

金狼の遺言 完全版(G SPIRITS BOOK)
2012年8月20日発行 辰巳出版


上田さん訃報にあたって記したブログはこちら。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-f0d6.html


(以下敬称略)

上田馬之助
(うえだ うまのすけ 本名上田裕司 1940年6月20日-2012年12月21日 72歳没)


昭和のプロレス界において稀大の 悪役レスラー、ヒールとして活躍し、
まだら狼、金髪の一匹狼などと異名とった上田馬之助。
彼は1996年に遭った交通事故の為、晩年はリハビリ生活を続けてきました。

Ueda

本書は上田が信頼を寄せていたプロレス記者、トシ倉森が上田の語る半生を口述筆記し、
東京スポーツ紙に連載(2007年1月~5月)した記事に大幅な加筆・修正を加え、単行本化したものです。

なんといっても、言葉を発するのも大変な状況で行われた後述筆記ですから、
言葉足らずになるのは当然だろうから、それは加味して読まねばなりません。

その上で、これは筆記者の技量によるところも大きいでしょうが、大変おもしろく読みました。
ただ、プロレス史の証言としては、そのまま受け入れていいかは、難しくも思えます。


本書には全編を通して、印象的な二つの特徴があります。

①「セメント」へのこだわり
セメント…つまりガチンコ、真剣勝負で闘って強いということですね。

本書では上田自身がセメントで最強であるかのように書かれていると同時に、
他のレスラーに対する評価も、セメントに強いかどうかに重きが置かれています。

たしかに上田はセメントに強いという言われ方をしてきたレスラーです。
しかし、最晩年である昨年発売されたDVD収録のインタビューでも、
ヒールへのこだわりの強さは感じますが、セメントという言葉は使ってません。
(前田日明への言及で「ガチンコ」とは言ってますが)
これは質問内容や編集で変わってくることなので、
DVDでは語ってないからおかしいということもありませんが、
本書でのセメントへの強い執着には若干違和感も感じました。

しかし、とにかく一貫していますし、それによって書かれているエピソードが引き立つ面もあります。


②アントニオ猪木の追慕
もうひとつはアントニオ猪木に対する強い思い。
まるで全編が猪木へのラブレターのようです。

ここでも「セメント」が出てきます。
猪木と上田はほぼ同期の入門、力道山道場での厳しい修練に耐え、
ともにセメント最強を目指して競い合った盟友という関係で語られています。

ただ、猪木の追慕・賛辞が多いので必然なのですが、
ジャイアント馬場には批判的な発言が多くなっています。
このあたりが、プロレス史の証言としてはそのまま受け取り難い部分です。
もちろん上田は、馬場が既に亡くなっているから勝手なことを言っているのではなく、
すべて真実だと主張していますが。


猪木クーデター・追放事件の真相
さて、上田馬之助がその人生を語るとなると、プロレス事件史的な意味で最も注目されるのは、
1971年、日本プロレスで起こったアントニオ猪木クーデター未遂~追放に関わる事件でしょう。
上田は猪木を裏切って密告、追放に至らしめた超本人とされてきました。
その後の新日本プロレスでの抗争では、皮肉にもこれが恰好のアングルになったのですが。

この件も当然、猪木寄り、アンチ馬場的な発言になっています。
まだ発売されてさほど時を経ていない書籍なので、あまり詳しく書くのは控えます。

印象としては…そうですねぇ、ひとついえるのは、
従来語られている説に比べて、上田の語った“真相”は比較的シンプルといえるかも知れません。
ちょっと読むと、聞き慣れない登場人物がいて、ややこしかったりもするのですが、
構造自体はだいぶ単純です。
ただ、それも体の状態による言葉足らずの可能性もあるので、判断は難しいですが。


親猪木 反馬場の理由
私は昭和プロレスファンで、平成以降のプロレス界の事情には疎いのですが、
上田が事故による負傷でリハビリ生活に入った後、
中心になって支援したのは新日本プロレスだったと思います。

事故の翌年、1997年に後楽園ホールで行われ、上田もテレビ電話で参加した、
「上田馬之助君を激励するプロレス大会」には猪木も登場してエールを送ったし、
1998年に熊本で行われ、上田自身も来場した「上田馬之助引退記念試合」には、
坂口征二を初め多くの新日のレスラーが参加しています。
他にもWAR、大日本プロレス、藤原組が協力しているようですが、
全日本プロレスの名は見当たりません。

普通に考えれば、上田の論調が猪木寄りになるのも当然かも知れません。
ただ、口述筆記がされた2007年頃となると、猪木は新日本から離れている筈ですし、
本書おける親猪木のスタンスが、事故後の新日への恩義からのみ出ているとも
考え難い面があります。
この点については私が疎いだけで、詳しい人ならわかるのかも知れませんか。


本書には賛否両論あるようですが、もちろん日本のプロレス界の事情ばかりでなく、
アメリカでの数々のエピソード、また武勇伝もあって面白いし、
上田のプロレス、あるいは人生についての考え方にも共感できる点も多かったです。

昭和プロレスファン、特に上田馬之助ファンなら、
当たり前ですが、必携の一冊だと思います。

Old Fashioned Club  月野景史

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