【美術】『民衆を導く自由の女神』9/1放送『美の巨人たち』/革命画に託した芸術の革命
前回、2012年9月1日放送のテレビ東京系『美の巨人たち』テーマ作品「今週の一枚」は
ウジェーヌ・ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』(1830年)でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/120901/index.html
この番組としては少し久しぶりに西洋絵画がテーマ、それも超大作が登場しました。
19世紀前半のフランス画壇、ロマン派を代表するドラクロワの代表作として、
誰でも一度は目にしたことがある、といっていい有名作でしょう。
しかし、革命がテーマであることは想像できますが、よく解らない点もある絵です。
その革命ですが、あまり西洋史に詳しくない人間としては、
当然フランス革命(1789年~)がテーマだと誤解してしまうのですが、
そあではなく、1830年のフランス7月革命が題材です。
歴史画のような雰囲気がありますが、リアルタイムの出来事がテーマなのですね。
そして、フランス革命からさほど経っていないのに、また革命?
などとも思ってしまいます。
西洋史に詳しくないと、解り難いです。
フランス7月革命は、1815年に復活した王制が、圧政に怒る市民により再び打倒された革命なのです。
ウジェーヌ・ドラクロワ
(Eugène Delacroix、1798年4月26日 - 1863年8月13日)
フランスの19世紀ロマン主義を代表する画家。
次回予告からある程度予想できましたが、
今回の番組の視点は、ドラクロワが描いた7月革命と、
ドラクロワ自身による絵画界の革命を重ね合わせるものでした。
夭折したテオドール・ジェリコーの影響を受け、ロマン主義を継承したドラクロワ。
ドラクロワが感銘を受けたという、
ジェリコーの『メデューズ号の筏』(1818年-19年)
ドラクロワの描く絵が持つ劇的な画面構成や華麗な色彩表現は、
当時のフランス絵画の主流であった新古典主義、アカデミズム絵画からは受け入れ難いものでした。
しかし、ドラクロワはひるむことなく、自ら信じる道を邁進、
ついには画壇の権威、アカデミー・デ・ボザールの会員として認められます。
『民衆を導く自由の女神』
導くとはありますが、多くの民衆はこの圧倒的な存在感の女神を見ていません。
そう、彼女は革命の象徴であり、人々の目に見える存在ではないのです。
その中で、ただ一人女神を見ているように思える人間。
彼女の足元にひざまづく青い服の男。
この男が、画家が自分自身を託した姿である、というのが番組の解釈でした。
(この説には異論もあります。)
Old Fashioned Club 月野景史
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