【美術】『モナ・リザ』のモデル女性の遺骨発見!?/そもそもモデルは特定されているのか?
ネットで美術関連のニュースが流れました。
あの『モナリザ』のモデル女性の遺骨を発見か、という話です。
『モナ・リザ』(1503-06年頃)
ルネサンス期イタリアの大芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチによる油彩画。
来日中の超人気作、フェルメールの『真珠の首飾りの少女』もこの絵には敵いません。
世界でも最も有名な絵画でしょう。
そのモデルとなった女性の遺骨が発見されたというのです。
なぜ、それが大発見か?
モナ・リザのモデルの第一候補とされる女性はいるのですが、
確定的ではなく、多くの異説があり、美術史上最大級のミステリーとされてきました。
モデルは男性だとか、レオナルド自身だとか、聞いたことがあるでしょう。
もちろん、他の実在の女性だという説も色々ありますが、
母親との縁が薄かったレオナルドが、理想の母のイメージを投影させたなどともいわれます。
さて、今回発掘された遺骨は、その第一候補の女性らしいということなので、
遺骨を調べれば『モナ・リザ』のモデルが確定される可能性がある、というわけです。
といっても、なかなか難しいことだとは思いますが。
『モナ・リザ』については色々な説があり、
ネットを見てても訳がわからなくなります。
例によってこのブログでは、本当の概略のみ記します、
モデル第一候補の女性
日本で『モナ・リザ』と呼ばれる絵の英語名は同じ『Mona Lisa』ですが、
レオナルドの母国イタリア語では『La Gioconda』、
そして、この絵があるフランス語では『La Joconde』と呼ばれます。
ジョコンド(Joconde)とは誰か?
イタリアのフィレンツェの貴族で裕福な絹商人だった、
フランチェスコ・デル・ジョコンドの妻、リザ・ゲラルディーニのことです。
ジョコンド夫人ということですね。
「モナ」は婦人の意味なのでリザ婦人ということ、つまり『モナ・リザ」も『ジョコンド』も同じ人を指しています。
『モナ・リザ」はレオナルドがジョコンド夫妻の依頼により、1503~06年頃に描いたとされます。
しかし、依頼されて描いた肖像画なら、依頼主である夫妻の手に渡る筈ですが、
そうはなりませんでした。この絵は生涯レオナルドの手元に置かれます。
レオナルドはイタリアの人ですが、晩年はフランソワ一世に招かれてフランスに移ります。
『モナ・リザ』には、そこで亡くなるまで手を加え続けたといいます。
だからこの絵はそのままフランスに留まり、フォンテーヌブロー宮殿を経て、
ルーブル美術館に収められ、フランスの至宝となったのです。
ジョコンド説の根拠
ではモデルがリザ=ジョコンドであるとの説の根拠はなにか?
レオナルドの遺稿の中に、それを示す記録は残っていませんでした。
レオナルドの死後、16世紀半ばに記された書物が出典元です。
自ら画家であり、芸術家を扱った伝記作家でもあるジョルジョ・ヴァザーリにより、
1550年に刊行された『画家・彫刻家・建築家列伝』の中で、
当時フォンテーヌブロー宮殿にあった『モナ・リザ』について、
モデルがフランチェスコ・デル・ジョコンドの妻であると言及されているのです。
しかし、ヴァザーリは1511年の生まれで、レオナルドにもリザにも会っているとは思われず、
ヴァザーリが何を典拠、今風にいえばソースにしたのかがわかりません。
レオナルド自身も『モナ・リザ』に関する確たる記録を残しておらず、
その為に様々な説が生まれたのです。
そもそもこの絵の制作年代とされる「1503~06年頃」にしても、
もしフィレンツェ在住のリザがモデルだとすれば、
リザの結婚後で、レオナルドがフィレンツェにいたのがこの時期しかないからです。
傍証であり、逆算ともいえます。
ところが、2008年になって、古書の欄外に記された、
「レオナルドは今、リザ・デル・ジョコンドの肖像を描いている」
という書き込みの発見が公表されました。
この書き込みは1503年10月になされたものとされ、時期的にも合致します。
これにより『モナ・リザ』=リザ・ゲラルディーニ説の信憑性が高まりました。
もちろん、それならばなぜ依頼主に渡さなかったのか? という疑問は残るのですが。
このような状況における今回の発見、
さて、どのような調査かなされ、何が分かりますか。
そこまでする必要があるのか? という疑問も感じますが。
Old Fashioned Club 月野景史
では長くなりますが、最後にこのニュースの全文を引用しておきます。
☆☆☆
「モナリザ」の遺骨を発見か、イタリア修道院で発掘調査
2012年07月25日 11:37 発信地:フィレンツェ/イタリア
世界一謎めいたほほ笑みで人びとを魅了する女性、「モナリザ(Mona Lisa)」。ルネサンス期の巨匠レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)が描いたこの有名な肖像画のモデルとなった女性の人骨を発見したかもしれないと、イタリアの考古学チームが24日発表した。名画の謎解明に大きな前進となるのではと期待が高まっている。
現在仏パリ(Paris)のルーブル美術館(Louvre Museum)に展示されている「モナリザ」は、1503~06年に制作された。モデルとしては、証拠はほとんどないものの、伊フィレンツェ(Florence)の貴族で裕福な絹商人フランチェスコ・デルジョコンド(Francesco del Giocondo)の妻だったリザ・ゲラルディーニ(Lisa Gherardini)が最有力候補との見方が、美術史家の間では一般的だ。夫のデルジョコンドが制作を依頼したと考えられている。
ゲラルディーニについては前年、新たな文献から夫の死後、娘2人が修道女となっていたフィレンツェの聖ウルスラ女子修道院(Convent of Saint Ursula)で暮らした後、同地に埋葬されたことが判明。後世に作られたコンクリート床を掘り起こして発掘調査が行われていた。
美術品をめぐる謎の解明を専門とするシルバノ・ビンチェティ(Silvano Vinceti)氏率いる調査チームは、これまでにも数体の遺体を発見しているが、今回見つかった人骨は非常に状態が良く、頭蓋骨も無傷で残っている点が特に重要だという。フランシスコ会の祭壇近くに埋葬されていて、埋葬時期もゲラルディーニものと一致するという。
人骨は今後鑑定へ回されるが、ゲラルディーニのものと断定されれば頭蓋骨から生前の顔を復元し、モナリザの特徴と比較したいと調査チームは話している。
ただ、これまで見つかった他の遺体と同じく無関係との鑑定結果が出る可能性もある。その場合、祭壇の反対側にあるより大きな墓に眠っているとみられる他の遺体の発掘作業が9月に開始される予定だ。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2891439/9288831
★★★
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