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2012年7月24日 (火)

【美術展】「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」/『真珠の耳飾りの少女』以外にも傑作多数

東京上野の東京都美術館で9月17日まで、
「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」が開催中です。

Mauritshuis2012_000_2
東京都美術館 リニューアルオープン記念
マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝
2012年6月30日(土)-年9月17日(月・祝)

会場:東京都美術館
主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、朝日新聞社、フジテレビジョン
後援:オランダ王国大使館
http://www.asahi.com/mauritshuis2012/
(*本展閉幕後は、神戸市立博物館開館30年記念特別展として、9月29日-2013年1月6日に開催されます。)


改装なってオープンの東京都美術館初の大型企画展。
人気のフェルメールの超人気作『真珠の耳飾りの少女』が来日とあって、
6月30日の開幕以来連日大盛況、13日目で来場者が10万を突破したそうです。
一説によると、ディズニーランドの人気アトラクション並みの行列とか、
まったく恐るべしフェルメール人気。

この状況に対し、さすがに美術館側も動きました。
7月21日~8月30日まで、開室時間が通常の17:30から18:30まで延長されたのです。
それを受けて私も、22日の日曜日、本来の閉館時間に近い17:20頃に入館しました。
結果は…予想以上にゆっくり観賞することができました。

観賞してアピールしたいポイントは2点。
看板作の『真珠の耳飾りの少女』は予想以上によかったこと。
そして、この絵以外にも推奨したい良い絵がいくつもあったことです。

そのあたりを軸に、本展を簡単に紹介します。
まずは大元の美術館について


マウリッツハイス美術館
フェルメールやレンブラントの母国であるオランダ第3の都市ハーグの中心地にある美術館。
所蔵作品は約800点と小規模ですが、選りすぐりの名品を所蔵し、
「王立絵画館」の呼称で親しまれています。

なかでも、世界にわずか三十数点しか現存しないフェルメール作品を3点所有するなど、
17世紀オランダ・フランドル絵画の質の高さは比類ありません。

しかし、僅か800点の所蔵品から本展にどれほどの美術品を貸してくれるのか、不安に感じますが、
実は同館では大規模な増改築工事がスタートする為(2014年頃までの予定)、
その合間をぬって約50点の名品が来日するのです。


どうしても『真珠の耳飾りの少女』ばかりに注目が集まってしまいますが、
他にフェルメールは最初期の作品で神話がテーマの『ディアナとニンフたち』。
そしてフェルメールと並ぶオランダ絵画のスーパースター、レンブラントの作品が6点。
更にフランス・ハルス、ルーベンス、ヤン・ブリューゲル(父)、ヤン・ステーンら、
主に17世紀バロック期のオランダ・フランドル絵画の巨匠達の名作が来日を果たしました。
私見ですが、思っていた以上に良い絵画が多かったです。


本展の展示構成は以下の通り。

第1章 美術館の歴史
第2章 風景画
第3章 歴史画(物語画)
第4章 肖像画と「トローニー」
第5章 静物画
第6章 風俗画

西洋絵画の主要ジャンルごとの章設定。
時代は17世紀バロック、地域もオランダ・フランドルにほぼ絞られており、
統一感を感じられる展示です。
『真珠の耳飾りの少女』は第4章に展示。
この絵を観賞する為の特別行列スペースが設けられています。


Vermeer_030
『真珠の耳飾りの少女』(青いターバンの少女  1665年頃) ヨハネス・フェルメール

この絵は先日、テレビ東京の『美の巨人たち』に取り上げられた際にも、
このブログで色々記してますので、今回はあまり書きませんが、
実物も観た印象としては、予想以上でした。
少女の顔が明るくきれいなのです。
いわばポートレートなので、顔の肌色の美しさは重用なポイントです。


それでは、他の作品からいくつか紹介します。


Mauritshuis2012_001
『四季の精から贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪』(1621-22年頃)
ヤン・ブリューゲル(父)とヘンドリック・ファン・パーレン(共同制作)


名高きブリューゲル一族は(父)とか(子)とか、色々ややこしいのですが、
ヤン・ブリューゲル(父)は、かのピーテル・ブリューゲル(父)の下の息子で、
父に次ぐ有名画家です。

「花のブリューゲル」と呼ばれた植物・果実などを描く名手で、
本展には花を描いた単独の静物画も来ていますが、本項ではこの作品を取り上げます。
この人は共同制作も多く、他の画家が人物を、ヤンが花など植物を、
という組み合わせが主なのですが、まさにその一品です。

共作相手のファン・バーレンは神話画を得意とする画家です。
画題のケレスとは、ローマ神話の豊穣神、つまり農業などを司る女神。
ファン・バーレンによる美しい女神や精たちと、ヤンの描く瑞々しい果実たち、
最高の組み合わせです。

ブリューゲル一族についてはこちら


Mauritshuis2012_002_2
スザンナ』(1636年) レンブラント・ファン・レイン

6点が来日しているレンブラントはあえてこの作品を取り上げます。
レンブラントの裸婦といえば、『ダナエ』と『バト・シェバ』が有名です。
スザンナも含めた3人ともヌードの画題になることが多いですが、
ダナエがギリシア神話なのに対し、バト・シェバとスザンナは旧約聖書の登場人物です。

そして、二人とも水浴姿を覗き見られ、その為に禍に巻き込まれてしまう女性なのです。
このスザンナは、覗かれているのを気づき、慌て怯えたかのようなシーンですね。

物語のことはこれくらいにして、
このスザンナは現代の視点で観るとやや腹部にボリュームがあり過ぎるように思えますが、
整った顔立ち、白い肌の質感がレンブラントならではの明暗技法で照らし出され、魅力的です。



Mauritshuis2012_005
『親に倣って子も歌う』(1668-70年頃) ヤン・ステーン

17世紀オランダ絵画といえば、この人を忘れてはなりません。
民衆の生活をユーモラスに描いた風俗画で知られるヤン・ステーン。
同じ時代のオランダ風俗画といっても、フェルメールとは印象がかなり違います。

この人は諺や習わしを題材にして寓意を籠めることが多く、
この絵では親が子どもの悪い手本になってしまうことを描いてます。
酔っぱらって幼児にパイプを吸わせたり、今こんなこと描いたら大変ですね。

左端の女性が持つグラスに注がれている酒はロゼワインでしょうか。綺麗な色です。


他、各ジャンルからいくつか簡単に紹介します。


Mauritshuis2012_006
『農家のある森』(1665年頃) メインデルト・ホッペマ
風景画では巨匠ライスダールの作品を差し置いてこれを推します。
手前の木陰の暗さと、奥の陽光に照らされた広場の明るさの対比が良い。



Mauritshuis2012_008_2
『豪華な食卓』(1655年頃) アーブラハム・ファン・ベイエレン
静物画からはこれ。まさにタイトル通り。
果実の瑞々しさもですが、食器類の精緻さも凄い。場内でも一際目を引く大作です。



Mauritshuis2012_004
『デルフトの中庭』(1658-60年4頃) ピーテル・デ・ホーホ
風俗画からもう1点
ホーホはフェルメールと同じデルフトの地で風俗画を主に描いた人で、
フェルメールとはライバル関係にあったとのことですが、
このような屋外での風俗画はフェルメールにはないものですね。

この絵の魅力は色々あるのですが、私は女性が現代にもありそうなグラスで
ビールを飲んでいるのが珍しくて気に入りました。


以上、何点か紹介しました。
なかなか魅力的な展示ですが、できればゆっくり鑑賞したいものです。
とりあえず最初のピークは過ぎたのではないかと思いますが、
公式サイトでリアルタイムの混雑状況、及び過去のデータも見れますので、
可能な限り空いてる時間を狙っていただきたいものです。

リニューアルした東京都美術館もすっかり綺麗になりました。

20120715_001

今後も魅力的な展覧会を多く催してほしいものです。


Old Fashioned Club  月野景史

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