【美術】ブリューゲル一族超入門/ピーテル、ヤン、(父)、(子)…フランドル絵画の名門
追記:2018年1月23日~4月1日、東京都美術館で「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」が開催中です。
ブリューゲル
西洋絵画の分野でよく聞く名前です。
実は16世紀から17世紀のフランドルで、多くの著名画家を輩出した一族の姓名なのです。
ただこの一族、ヤンもそうですが、(父)とか(子)とかついてややこしいのです。
これはつまり、一族の画家の中で、大リーガーのケン・グリフィー・ジュニアのように、
父と息子が同名のケースが二つあるのです。
だから、(父)とか(子)つけて、区別しないといけないのです。
では、一族を世代別に整理してみます。
◆太祖
ピーテル・ブリューゲル (父) (Pieter Brueghel the Elder, 1525年頃 - 1569年)
◆ピーテル(父)の子
ピーテル・ブリューゲル (子) (Pieter Brueghel the Younger, 1564年 - 1638年)
ヤン・ブリューゲル (父) (Jan Brueghel the Elder, 1568年 - 1625年)
◆ヤン(父)の子
ヤン・ブリューゲル (子) (Jan Brueghel the Younger, 1601年 - 1678年)
アンブロシウス・ブリューゲル (Ambrosius Brueghel, 1617年 - 1675年)
◆ヤン(子)の子
アブラハム・ブリューゲル (Abraham Brueghel, 1631年 - 1690年)
他にもいるのですが、とりあえず四世代の代表的な画家を挙げました。
名声でいえば圧倒的に太祖たるピーテル(父)が高いです 。
北方ルネサンスを代表する大画家。
次いで、彼の下の息子のヤン(父)ということになるでしょう。
では、それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。
ピーテル・ブリューゲル (父)
(Pieter Brueghel the Elder, 1525年頃 - 1569年)
ネーデルラントの大画家。
諺や寓話をテーマとした作品から、やがて農民を描いた風俗画を多く手がけ、
「農民画家のブリューゲル」と呼ばれました。
その絵には様々な寓意が籠められているように思われるのですが、
なかなか解釈が難しい場合も多いです。
ひとつには、画家の人物像が伝わっていない為でもあるのですが、
そのような謎めいた点も興味を集め、人気の高い画家です。
ピーテル・ブリューゲル (父) 『ネーデルラントの諺』 (1559年)
息子たちをはじめ、後進の多くの画家を彼の模作を描きました。
二人の息子も著名な画家となりましたが、
上の子が5歳、下の子が1歳の時に亡くなっており、
息子たちに直接絵の指導をすることはありませんでした。
(上の子には、お遊び程度に教えたかも知れませんが)
ピーテル・ブリューゲル (子)
(Pieter Brueghel the Younger, 1564年 - 1638年)
ピーテル(父)と同名の上の息子
自身の作品としては、宗教画や幻想的な絵画が多く、
地獄の風景が得意で「地獄のブリューゲル」という凄いニックネームがありますが、
画業の多くを父の作品の模写に費やしており、
オリジナルの画家としての名声は、弟に劣ります。
ヤン・ブリューゲル (父)
(Jan Brueghel the Elder, 1568年 - 1625年)
ピーテル(父)の下の息子
その色調から「ビロードのブリューゲル」、
静物画や植物描写を得意としたことから「花のブリューゲル」とも呼ばれます。
「花の」で覚えるのがいいと思います。
他の画家の共同制作も多く、人物を他の画家が、
ヤンが背景の植物などを描くパターンが主でした。
「マウリッツハイス美術館展」に来日中の二点の内のこの作品もその例です。
『四季の精から贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪』(1621-22年頃)
ヤン・ブリューゲル(父)とヘンドリック・ファン・パーレン(共同制作)
共作相手のファン・バーレンは神話画を得意とする画家です。
画題のケレスとは、ローマ神話の豊穣神、つまり農業などを司る女神。
ファン・バーレンによる美しい女神や精たちと、ヤンの描く瑞々しい果実たち、
最高の組み合わせです。
ヤン・ブリューゲル (子) (Jan Brueghel the Younger, 1601年 - 1678年)
ヤン(父)の同名の子
父親の元で修業し、父親と同じようなスタイルの作品を制作しました。
弟のアンブロシウス(Ambrosius Brueghel, 1617年 - 1675年)と共に、
細部まで描写した風景画や寓意画を描いた他、父の模作も手がけました。
アブラハム・ブリューゲル (Abraham Brueghel, 1631年 - 1690年)
ヤン(子)の子
父親の元で修業し、花を描いた静物画で知られます。
この一族、あえていえばピラミッド型で、世代が上の方が名声が高い、
と覚えておけば、我々素人はとりあえず良いと思います。
実際はそう短絡的に言い切れるものではないでしょうから、
興味が沸いたら探究してみてください。
Old Fashioned Club 月野景史
« 【美術】『モナ・リザ』のモデル女性の遺骨発見!?/そもそもモデルは特定されているのか? | トップページ | 【音楽】夏の名曲 松田聖子集/1980年代最大のアイドルは夏女 »
「02.Art 美術 (雑学 コラム)」カテゴリの記事
- 【美術展】「没後50年 藤田嗣治展」東京都美術館/画業を俯瞰する大型店 もちろん乳白色の裸婦も(2018.08.20)
- 【美術】日曜美術館10/13「「孤高の画家 夢を紡いで ギュスターヴ・モロー」/汐留で「モローとルオー」展も開催中(2013.10.13)
- 『日曜美術館』5/19 「アートの旅 中谷美紀 in 瀬戸内・直島」/不思議な存在感の女優さんの不思議な旅(2013.05.19)
- 【美術】5/12『日曜美術館』「ダ・ヴィンチ、ミケランジェロを越えろ ルネサンスの天才ラファエロ」/大画家の生涯を俯瞰(2013.05.12)
- 【美術】雑誌『Pen』5/15号「ルネサンスとは何か。Ⅱ ダ・ヴィンチ/ミケランジェロ/ラファエロ 3大巨匠を徹底解剖」(2013.05.10)
« 【美術】『モナ・リザ』のモデル女性の遺骨発見!?/そもそもモデルは特定されているのか? | トップページ | 【音楽】夏の名曲 松田聖子集/1980年代最大のアイドルは夏女 »
コメント