【美術】神話「ピグマリオン」超入門/来日中のバーン=ジョーンズの絵画より
先日、このブログでも紹介したように、
東京丸の内の三菱一号館美術館で8月19日まで、
「バーン=ジョーンズ展 ― 装飾と象徴 ―」展が開催中です。
バーン=ジョーンズ展 ― 装飾と象徴 ―
会期: 2012年6月23日(土)~8月19日(日)
会場: 三菱一号館美術館
http://mimt.jp/bj/
同展の看板作品のひとつとしてこの絵が来日しています。
『ピグマリオンと彫像 女神のはからい』(1878年)
この絵はギリシア神話を題材としています。
描かれた全裸と半裸の美しい女性二人は何をしているのか。
元の話を知らずに、この絵を観ただけでテーマを推測するのは難しいでしょう。
今回はピグマリオンの物語と、この絵について簡単に紹介します。
ピグマリオン(ピュグマリオーン)とは、ギリシア神話に登場するキプロス島の王(男)です。
しかし、 この絵に描かれている人物はどちらも女性に見えますね。
実はこの絵は、ピグマリオンをテーマにした連作4点のうちのひとつで、
他の3点にはピグマリオンも登場するのですが、この絵のみ出ていないのです。
他の3点も来日・展示中です。
それでもあえてパンフレット等にこの絵を使ったのは、ヴィジュアル的に映えて美しいからでしょう。
では、ギリシア神話のピグマリオンのエピソードを簡単に紹介します。
キプロス島の王で、彫刻家でもあるピグマリオンは現実の女性に失望していました。
彼は、自身で作ったガラテアの像を、生ある女性であるかのように愛します。
その思いを汲み取った愛の女神アフロディテが、ガラテアを人間に変えます。
ピグマリオンとガラテアは結婚して、幸せに暮らしました。
ギリシア・ローマ神話にしては波乱のない、幸せなお話ですね。
アフロディテはローマ神話における愛と美の女神ウェヌス(ヴィーナス)。
もっともポピュラーな女神です。
つまり上で紹介した絵はアフロディテ(左)が、彫刻のガラテアを人間に変えたシーンなのです。
では、連作『ピグマリオンと彫像』を順番に見ていきましょう。
『ピグマリオンと彫像 恋心』
現実の女性に失望しているピグマリオンは理想の女性像の制作に打ち込む。
『ピグマリオンと彫像 心抑えて』
自ら作り上げたガラテアの像に恋し、結婚を望むピグマリオン。
『ピグマリオンと彫像 女神のはからい』
ピグマリオンの思いを汲んだアフロディテ(左)はガラテアを人間に変える。
『ピグマリオンと彫像 成就』
思いがかなったピグマリオンはガラテアの手に口づけを。
だいたい物語の流れがわかったかと思います。
ピグマリオンは元々アフロディテにあこがれており、
彼女を理想としてガラテアを作ったという説もあるようです。
このお話を元にジョージ・バーナード・ショーによる戯曲『ピグマリオン』が書かれ、
それは舞台、映画の「マイ・フェア・レディ」の原作にもなりました。
ピグマリオン効果
更に「ピグマリオン効果」という言葉も生まれました。
教育心理学における心理的行動の1つで、教師の生徒への期待によって、
生徒の成績が向上することを指します。
神話に当てはめれば、ピグマリオンの思いの強さに応えるように、
ガラテアが人間になったことからきていると解釈できますが、
神話から直接生まれた言葉なのか、ショーの戯曲からなのか、定かではないようです。
Old Fashioned Club 月野景史
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