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2012年7月 6日 (金)

【美術展】「バーン=ジョーンズ展 ― 装飾と象徴 ―」三菱一号館美術館/物語や神話を美しく劇的に描いた画家

東京丸の内の三菱一号館美術館で8月19日まで、
「バーン=ジョーンズ展  ― 装飾と象徴 ―」展が開催中です。

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バーン=ジョーンズ展  ― 装飾と象徴 ―
会期: 2012年6月23日(土)~8月19日(日)
会場: 三菱一号館美術館

主催: 三菱一号館美術館、東京新聞
後援: ブリティッシュ・カウンシル
協力: 日本航空、J-WAVE
http://mimt.jp/bj/


サー・エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ
(Sir Edward Coley Burne-Jones, 1833年8月28日 - 1898年6月17日)
日本では、すごく有名ではないけど、そこそこには知られている、
そのくらいのポジションでしょうか。

物語や神話の世界を美しく、ドラマチックに描いた画家、
そんな形容がわかり易いかもしれません。
今回が日本初の個展になります。

バーン=ジョーンズはイギリスの工業都市バーミンガムで額縁職人の家に生まれました。
オックスフォード大学において生涯の友ウィリアム・モリスと出会い、
1861年にはアーツ・アンド・クラフツ運動の起点となる共同事業を創始します。
そして19世紀末には、その詩情にみちた静謐な画風によって、
ヴィクトリア朝絵画の頂点をきわめました。

ただ、バーン=ジョーンズの活動については、これまでラファエロ前派やモリス商会との
関わりから注目されることが多く、その全体像が十分に把握されてきたとはいえない面もあります。

元々聖職をめざしていたバーン=ジョーンズが芸術の道へと転換したのは、
モリスと北フランスの大聖堂を巡った1855年のことです。
翌年、大学を去ったバーン=ジョーンズは、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティに弟子入りし、
美術批評家ジョン・ラスキンの導きでイタリア美術を学びます。

ロセッティはラファエル前派を代表する画家ですね。
そのロセッティの弟子なので、バーン=ジョーンズもラファエル前派と絡めて論じられることが多いのです。
バーン=ジョーンズが弟子入りした頃、ラファエル前派は事実上解散していたので、
バーン=ジョーンズ自身をラフファエル前派とは呼び難いのですが。

師匠のロセッティも美しい女性を描きますが、顔が少し男性的という特徴があります。
弟子であるバーン=ジョーンズもその傾向があるように思います。

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本展は、日本初の個展としてバーン=ジョーンズの全貌に迫っています。
ランカスター大学ラスキン図書館・研究所長スティーヴン・ワイルドマン氏を監修者に迎え、
世界屈指のコレクションを収蔵するバーミンガム美術館の協力を得て、
油彩画、水彩画、素描、貴重書、タペストリなど、国内外から厳選した約80点を、
聖書・神話・物語のテーマごとに展示、バーン=ジョーンズ芸術の真髄を伝える、
代表的連作が紹介されています。


それでは、いくつか紹介します。


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『果たされた運命-大海蛇を退治するペルセウス』
連作『ペルセウス』より 1882年頃


ギリシア神話の半神の英雄ペルセウスをテーマとした連作の1点。
大海蛇を倒し、生贄として鎖につながれていたエチオピアの女王アンドロメダを救うシーンです。
甲冑のデザインの装飾性も際立ちますね。
アンドロメダの白く美しい裸身との対照が見事です。


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『メドゥーサの死 Ⅱ』 連作「ペルセウス」より 1882年

これも『ペルセウス』から。
ペルセウスは、その顔を見ると石に変えられてしまうという、
蛇の頭髪の怪物メドゥーサの退治を王から命じられ、首を切り落としました。
今まさに首を抱えて去ろうとするシーンです。

ペルセウスーは一番右、その足元に倒れているのが斬首されたメドゥーサですが、
わかり難いのは一番左の女と、中央の羽をつけた女(?)ですね。
これはメデューサの二人の姉、ステンノーとエウリュアレーです。
メドゥーサは三女に当たり、ゴルゴーン(ゴーゴン)三姉妹と呼ばれます。

二人は、妹が殺されたので、ペルセウスを追おうとしているようです。
追ってるのか、逆に逃げているのか、構図からではちょっと判り難いですね。
でも凄い迫力です。


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『ピグマリオンと彫像-女神のはからい』1878年

これも『ピグマリオンと彫像』というシリーズの1点です。
ピグマリオン(ピュグマリオーン)はギリシア神話に登場するキプロス島の王(男)です。
えっ! どちらも女性に見えるけど…、
実はややこしいことに、この絵にピグマリオンは描かれていません。
この絵と、ピグマリオンの神話についてはこちらに記しました。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-309b.html



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『眠り姫』-連作「いばら姫」より 1872-74年頃
洗礼の日から100年の眠りにつかされた王女が、美しい王子によって目を覚まされる物語。
いわずと知れた有名なお話ですね。
1891年公開された時にはロンドンの観衆が熱狂したという、バーン=ジョーンズの代表作です。


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『慈悲深き騎士』1863年

11世紀のフィレンツェの騎士物語が題材。
仇敵に出会った折、復讐せずに許しの行為をしたとして、
キリストから慰めを受ける騎士を描いています。


いかがでしたか。
僅かな点数を見ただけでも、神話や物語の魅力的な題材をより魅力的に、
劇的に描いていることが伝わるかと思います。
一方で、好き嫌いが分かれる面もあるかと思いますが、
神話・物語好き、美しいもの好きの私としては、大いに推奨します。


三菱一号館美術館 中庭・付近

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狭いながらもちょっとした都心のオアシスです。


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三菱一号館美術館で開催中の 「バーン=ジョーンズ展 装飾と象徴」に行って来ました。 http://mimt.jp/bj/ エドワード・バーン=ジョーンズ(1833-98)好き過ぎて上手く彼の作品の魅力を伝えられないのが歯がゆいところ。ラファエル前派のウォーターハウスやミレイも大好きですが、このグループ似ているようで、実は全然違う魅力を湛えているのが魅力のそして人気のひとつなのかもしれません。 これまで、何度も「バーン=ジョンズ展」を観て来たように思っていましたが、彼単体を取り... [続きを読む]

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