【美術】フェルメール『真珠の耳飾りの少女』7/14『美の巨人たち』/美しき青いターバンの少女ともう一人の少女
2012年7月14日放送のテレビ東京系『美の巨人たち』テーマ作品「今週の一枚」は
ヨハネス・フェルメール『真珠の耳飾りの少女』(1665年頃)でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/120714/index.html
* 一昨日のブログで予告編的なことを書いたのですが、
グイド・レーニの『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』について、
17世紀前半の作品と記しました。
この絵のデータは少なく、典拠は2005年の同じ『美の巨人たち』の放送記録からなのですが、
今回の放送では1662年の作とされていました。
しかし、グイド・レーニは1642年に亡くなっているので、これはおかしいです。
実は『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』はレーニの作品と断定されてはいません。
ですが、今回の番組ではレーニ作と明記されていました。それなら1662年作はあり得ません。
伝えられているレーニの没年にまで異論あり、とするなら別ですが。
さて、今回の番組は『真珠の耳飾りの少女』の美しさを徹底的に賞賛する内容でした。
合間に『白雪姫』の魔女と鏡の会話が何度も挿入されましたが、
絵の解題とは関係ないですね。
魔女と鏡の会話により、この絵の、そして描かれた少女の美しさを強調するのが狙いだったのでしょう。
ヨハネス・フェルメール
(Johannes Vermeer 1632年-1675年)
いわゆるバロック絵画の時代、レンブラントと並び17世紀のオランダを代表する画家ですが、
現存する作品は、わずか30数点。その多くは、街の人々の日常を描いた風俗画でした。
しかし、今日の一枚は少し違います。
背景は黒く塗りつぶされ、少女の視線が画面の外、つまりこちら側に向けられています。
一目で見る者全てをとりこにする絶世の美女。
画家が生まれ育ち、結婚し、亡くなったオランダの街デルフトで彼女も生まれました。
『真珠の耳飾りの少女』は絵画史上最も美しいとまで言われる少女が描かれた作品です。
特定の人物を描いた肖像画ではなく、理想的な人物を描いた“トローニー”とされます。
縦45cm、横39cmの小さな絵。
ふと振り返ったところなのか、それとも何かを言い残し立ち去ろうとしているのか。
謎の微笑みをたたえながら、少女が佇んでいます。
耳に飾られた大きな真珠と、髪を包む鮮やかな青いターバンが彼女の美しさを際立たせています。
実は、当時のオランダにはターバンを身につける習慣は無かったといいます。
では、なぜ彼女はターバンを巻いているのでしょうか?
貿易大国だった当時のオランダには様々な輸入品が持たらされていました。
フェルメールは日本の着物らしき衣類をモデルに着せています。
このトルコ風のターバンもそのひとつでしょう。
そしてもうひとつ、今日の一枚をほうふつとさせる作品があります。
『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』グイド・レーニ
制作年代の件は上に書いた通りなので、これ以上はふれません。
頭に巻いたターバン、こちらに振り返り、何かもの言いたげな表情…。
そこには数多くの類似点が存在するのです。
ベアトリーチェ・チェンチ
(Beatrice Cenci, 1577年2月6日 - 1599年9月11日)
実在の女性です。
イタリアの貴族の家に生まれましてが、父のフランチェスコは不道徳で暴力的な男で、家族を虐待しており、
美しかったベアトリーチェとは近親姦の関係にありました。
耐え兼ねた彼女ら家族は遂に父殺しを決行するのですが、捕らえられ斬首されてしまいます。
この絵は処刑直前のベアトリーチェを描いたとされます。
頭に布を巻いているのは、斬首の際に髪が邪魔にならないようにするためです。
この美しく可愛らしい絵は、実はそんな残酷な悲劇を描いているのです。
番組では、手紙などの流通手段でフェルメールがこの絵の模写を見た可能性を指摘していました。
特に悲劇性との関わりには言及していませんでした。
そしてターバンの青。
フェルメール・ブルーともいわれる、フェルメールお馴染みのウルトラマリンブルー。
番組ではターバンが他の色だった場合も検証し、青いターバンの効果を探りました。
青から受ける印象は「上品な 幼い 美しい」
これが赤だと「派手、情熱的、活発な 明るい」なのだそうです。
さて、来日中の作品がテーマの場合はもはや通例のようですが、
本編中ではこの絵が、上野の東京都美術館で9月17日まで開催中の、
「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」の
http://www.asahi.com/mauritshuis2012/
看板作品として展示中であることは言及されませんでした。
次回予告後の視聴者プレゼントコーナーで紹介されていましたが。
Old Fashioned Club 月野景史
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