【美術】藤田嗣治『秋田の行事』6/23『美の巨人たち』/“乳白色の画家”放浪の末の新境地
6月23日放送のテレビ東京系『美の巨人たち』のテーマ作品「今週の一枚」は
藤田嗣治作の『秋田の行事』のでした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/120623/index.html
藤田嗣治『秋田の行事』(1937年)
縦3m65cm、横20m50cmの大壁画。秋田県の平野政吉美術館所蔵作品。
描かれているのは秋田の静かな暮らしと熱狂の祭りです。
画面左には、雪深い秋田の情景。穏やかで慎ましい、人々の営み。
しかし、小さな橋を越えた右側には祭りの熱狂と興奮がほとばしっています。
藤田嗣治 レオナール・フジタ
(ふじた つぐはる、Léonard Foujita 1886年11月27日 – 1968年1月29日)
エコール・ド・パリの画家。
芸術の都、フランスはパリで大きな成功を収めた画家。
しかし、今回の絵はタイトルからわかる通り、日本の秋田県を描いたものです。
といっても、日本で制作していた時期もそれなりに長いので、さほど意外でもありません。
ですが、番組のオープニングは意表をつかれました。
いきなり南米の風景。
藤田嗣治で南米とは…、急遽放送予定が変わったのかと思ってしまいました。
1920年代、セーヌ川の左岸にあるモンパルナス。
若き芸術家たちが集うこの街に、おかっぱ頭に丸メガネ、藤田嗣治の異形もありました。
藤田といえば、白い裸身で描かれた美しい女性たち。
誰も見たことがなかった柔らかな乳白色と繊細な線で独自の世界を切り開き、
パリの画壇を騒然とさせていたのです。
そんなパリ時代の絶頂期、藤田は大きな壁画に挑みました。
しかし、藤田の乳白色や繊細な線は巨大な絵には向かず、不評に終わってしまいました。
「私は…欧州の空気に押しつぶされて、どうしても南米の大空を心ゆくまで吸って晴れ晴れしてみたい…」
パリでの栄光を捨て、南米の旅に出た藤田をメキシコで運命的な出会いが待ち受けていました。
画家は、革命に端を発した壁画運動に強い衝撃を受けたのです。
そうです、このいきさつが踏まえて、番組は南米から始まったのでした。
2年に及ぶ放浪の末に藤田は日本へ帰国しました。
しかし、求められるのは「パリの藤田」「乳白色の藤田」ばかり。
そんな時、藤田の絵に魅せられた秋田の資産家・平野政吉から、
秋田に美術館を作るので、そこに飾る絵を描いて欲しいと切り出されました。
依頼を受けた藤田は、何度も秋田を訪れ半年かけて構想を練った後、
174時間という驚異的な早さでこの大作を一気を描き上げました。
そしてそこには、乳白色の藤田の影は見当たらず、鮮やかな色彩が踊っています。
今回は久々に秋田に帰郷した女性の視点での構成で、紀行番組風でもありましたね。
女性を演じたのは女優・声優の藤田みずきさんでした。
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