【美術】ホッパー『線路わきの家』6/2『美の巨人たち』/描かれた家は何処に
6月2日放送のテレビ東京系『美の巨人たち』のテーマ作品「今週の一枚」は
エドワード・ホッパー『線路わきの家』(1925年)でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/120602/index.html
エドワード・ホッパー
(Edward Hopper, 1882年7月22日 -1967年5月15日)
20世紀アメリカを代表する画家の一人です。
ニューヨーク近郊のナイアックに生まれたホッパーは、幼い頃より絵の得意で、
18歳でニューヨーク美術学校に入学。卒業後はヨーロッパへと旅立ち、
パリでモネやセザンヌら印象派に強い感銘を受けました。
しかし、ヨーロッパ絵画の影響を色濃く受けたホッパーの作品は、アメリカでは酷評されてしまうのです。
1920年代、アメリカは第一次世界大戦の特需で空前の経済発展を遂げました。
アメリカの画家たちも、繁栄を祝福するかのように、天へと伸びる摩天楼を描きます。
しかし、ホッパーは町の片隅や路地裏、寄る辺なき人々、
変わりゆく町に取り残されていく風景を描き続けたのです。
『線路わきの家』(線路わきの家)
今日の一枚はそんな時代、1925年に描かれました。ホッパーの評価を決定付けた作品です。
Wikipediaでは「最初期の連作」と書かれていますが、既に43歳、
若い頃から画業一筋の人なので、苦節25年というところです。
番組では私立探偵フィリップ・マローン(?)が、この絵に描かれた家を探す展開でした。
彼はこの家が、ある映画の中に出てくる家によく似ていることに気づきます。
『サイコ』
(1960年)アルフレッド・ヒッチコック監督
巨匠によるサイコ・サスペンス映画の傑作。
ヒッチコック自身、『線路わきの家』からの着想であることを認めています。
そして、私立探偵マローンは見事モデルとなった家を探し当てます。
まぁこれは、元から知られていたことなのかも知れませんが。
ただ、実際の風景では線路はもっと下にあり、このような構図にはなりません。
なぜホッパーは構図を変えたのか?
この家の建築様式は19世紀に流行した古いタイプ。
鉄道は20世紀を象徴する新しい産物。
家と線路を描き込むことで、古い時代と新しい時代、その境界を表現した、
というのが番組の解釈でした。
しかし、この絵が描かれてからもうすぐ90年。
古い象徴として描かれた家が今もまだ残っていて、
人が住んでいる(番組からはそう思えました)というのも興味深いことです。
今回は番組の構成も良かったですね。
入門編として、ホッパーに興味が湧いた人も多いかと思います。
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