【大相撲】貴乃花部屋と朝日山部屋から新十両誕生/貴ノ花と大受、両部屋の知られざる因縁とは
日本相撲協会は5月23日、東京・両国国技館で大相撲名古屋場所の番付編成会議を開き、
2004年に二子山部屋を継いだ貴乃花親方が育てた初の関取となる貴ノ岩(貴乃花部屋)と、
初土俵から所要71場所で出世した鬼嵐(朝日山部屋)の、モンゴル出身力士二人の十両昇進を決めました。
http://hochi.yomiuri.co.jp/sports/sumo/news/20120523-OHT1T00038.htm
貴乃花部屋については上に書いた通りですが、朝日山部屋は歴史も古く、多くの関取を輩出してきた部屋です。
ただし、今の18代朝日山親方=元大関大受は、朝日山出身ではなく、先代の急死に伴って、
よそから迎えられた師匠です。
大受が一から育てた直弟子としては、今回の鬼嵐が初の関取ということになると思います。
実は貴乃花の父親で師匠でもあった故二子山親方=元大関貴ノ花と大受は、
同い年で初土俵も一場所違い、スピード出世で同じ時代に大関を張り、
共に1970年代のホープといわれたライバル同士だったのです。
その大受の直弟子第一号の関取と、
貴ノ花の息子である貴乃花の弟子最初の関取が同時昇進とは、
何か因縁を感じさせます。
今回は大受のキャリア中心に二部屋の因縁に少しこだわります。
貴ノ花 利彰(たかのはな としあき、1950年2月19日 - 2005年5月30日)
大受 久晃(だいじゅ ひさてる、1950年3月19日 - )
貴ノ花と大受は共に1950年(昭和25年)の早生まれ、
初土俵は大受が1966年の三月場所、貴ノ花が五月場所と一場所ずれていますが、
中学卒業と同時の入門です。
タイプはまったく逆。
スリムな、いわゆるソップ型で四つ相撲が得意の貴ノ花に対し、
大受はアンコ型の押し相撲。
よく「突き押し」という言い方をしますが、大受は突っ張りもあまりない押し一筋でした。
十両・幕内への史上最年少出世記録を更新した貴ノ花には少し遅れますが、
大受も19歳で十両、二十歳そこそこで幕内と順調に出世を続けます。
1971年に発行された子ども向け相撲入門書には貴ノ花と大受、
後に横綱になる輪島が時代を担う三大若手として掲載されていました。
大受は1972年はちょっと伸び悩んで、貴ノ花と輪島に大関昇進で遅れを取りますが、
1973年には復調、七月場所は関脇で13勝2敗の好成績を上げ、
史上初の三賞(殊勲賞 敢闘賞、技能賞)独占という偉業を達成、大関に昇進しました。
しかし、大受の全盛期はここまででした。以降は負傷がちで苦しい土俵生活となります。
実は貴ノ花も大関昇進後は病気や怪我で苦闘が続きましたが、
それでも大関在位50場所、優勝2回を達成しました。
しかし、大受は僅か5場所で大関から陥落。
その後は平幕で一進一退でしたが、1977年に十両転落、27歳の若さで引退しました。
引退後は年寄楯山を襲名、元々所属していた高島部屋を離れ、
同じ一門の伊勢ヶ濱部屋の部屋付き親方として後進の指導、
また相撲協会の審判員を務めてきました。
自分が独立して部屋を持とうとは、おそらく考えていなかったでしょう。
引退から20年経った1997年、一門の朝日山部屋の師匠、
17代朝日山親方(元小結若二瀬)が場所中に急死します。
力士は師匠がいなければ土俵に上がれません。朝日山部屋内には後継者がおらず、
急遽、大受が18代朝日山を襲名、部屋を継承することになったのです。
その後、先代から引き継いだ弟子からは関取が育っていますが、
2000年初土俵の鬼嵐が一から育てた初の関取ということになるのです。
一方の貴ノ花は藤島親方→二子山親方として二人の息子、三代目若乃花と貴乃花を二横綱を育てたのを初め、
多くの関取を育成しましたが、2005年に55歳の若さでなくなりました。
部屋は貴乃花、「一代年寄貴乃花」として継承しています。
その貴乃花と大受の弟子が同時昇進とは、
貴ノ花と大受の現役時代を知る世代としては、因縁を感じます。
しかも貴乃花部屋の貴ノ岩は入門から3年そこそこのスピード出世ですが、
鬼嵐は初土俵から71場所、外国出身力士として最も遅い昇進です。
7月の名古屋場所で両力士がどんな相撲を取るか、注目です。
◆貴ノ岩(たかのいわ=本名アディヤ・バーサンドルジ)
モンゴル・ウランバートル出身、貴乃花件部屋。相撲留学した鳥取城北高から09年初場所初土俵。
得意は右四つ、寄り、投げ。180センチ、128キロ。22歳。
◆鬼嵐(おにあらし=本名ウルジーバヤル・ウルジージャルガル)
モンゴル・ウランバートル出身、朝日山部屋。00年名古屋場所初土俵。
得意は左四つ、寄り、上手投げ。185センチ、128キロ。29歳。
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