【美術】ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』4/21『美の巨人たち』/ルネサンスの象徴たる名画
昨日、2012年4月21日放送のテレビ東京系『美の巨人たち』のテーマ作品は、
サンドロ・ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/120421/index.html
先日、このブログで本作こそルネサンスを象徴する絵画かと書きましたが、
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/421-d2b2.html
番組も同じような視点でした。
様々な課題が提起され、やや消化不良にも感じましたが、
最初の方で識者の言として、この絵に籠められた意味を完全に理解することは誰もできない、
と前振りをしていますので、それも仕方ないでしょう。
さて、今回は『キイハンター』のテーマ曲に乗って展開する絵画警察編。
冒頭でルネサンスの都、フィレンツェを代表する画家は、
レオナルド・ダ・ヴィンチではなくボッティチェリだと断定しました。
しかし、その理由の説明はありませんでしたね、
少し不親切。
番組側がどのような意図で、そう絵画警察に語らせたかはわかりませんが、
フィレンツェからミラノ、ローマ、後年はフランスと
活動拠点を変えていったレオナルドに対し、
ほとんどフィレンツェを離れることのなかったボッティチェリの方が、
この街を代表する画家、といえるのは当然といえば当然なのです。
サンドロ・ボッティチェリ(ボッティチェッリとも)
Sandro Botticelli 1445年3月1日? - 1510年5月17日
繁栄を謳歌していた15世紀フィレンツェで、革なめし職人の家に生まれる。
14歳の頃、画家フィリッポ・リッピの工房に入り、精緻な画力を身につけました。
ヴェロッキオ工房を経て25歳で独立すると、画家として人気を博していきます。
特にフィレンツェを支配していたメディチ家というパトロンを得て、多くの宗教画を描きました。
そのボッティチェリが『ヴィーナスの誕生』で描いたのは、
いうまでもなく古代から崇められてきた愛と美を司る女神ヴィーナス。
しかしヴィーナスは神話の世界の住人。本来キリスト教とは相容れません。
キリスト教社会でタブー視されてきた裸体をなぜ描けたのでしょう。
この時代、メディア一族や周辺の知識人達は文化サロンを形成して古典の研究を行っており、
神話と聖書は補完しあうものとの見解を出していたとのことです。
だからこのような美しい裸体画が生まれたのですね。
ところで、番組ではヴィーナスをギリシャ神話だと一貫して説明していました。
実際はヴィーナス(ウェヌス)はローマ神話で、
ギリシャ神話ではアフロディーテにあたるのですが、
ここまで拘るとややこし過ぎるので仕方ないですね。
それにしてもこの絵はどのような経緯で描かれたのか?
この絵のヴィーナスにはモデルがいるとされています。
イタリアの港町ポルトヴェネレ出身の美女シモネッタ。
ボッティチェリは彼女をモデルに聖母像などを描いています。
彼女はボッティチェリのパトロンであるメディチ一族のジュリアーノ・デ・メディチの愛人でもありました。
しかし、シモネッタは23歳で肺結核で亡くなりました。
まもなく、ジュリア―ノも敵対勢力により暗殺されてしまいます。
そのおよそ6年後に描かれたのが『ヴィーナスの誕生』でした。
ボッティチェリはこの世での生を失ったシモネッタを
天上の美神、ヴィーナスとして再生させたのです。
彼女の故郷の名、ポルトヴェネレは「ヴィーナスの港」の意味です。
というのが、番組の解釈でした。
まぁ、そのような事情など知らずとも、
その美しさに感嘆できる絵だと結論付けていましたが。
ところで、絵画警察編のBGMは昭和40年代の人気スパイアクションドラマ、
『キイハンター』のテーマだと、以前このブログでも書きました。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-ecbc.html
今回も同様でしたが、最後の解決のシーンには同じ昭和40年代に
『キイハンター』と人気を二分した捜査系ドラマ『ザ・ガードマン』の
テーマ曲がミックスされていました。
このような音源が存在するのか、番組で編曲したのかわかりませんが、
マニアックなスタッフがいるようです。
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