【美術】ゴヤ『着衣のマハ』11/25『日曜美術館』より/画家が命を賭して描いた新時代の女性像
今日、11月27日放送のNHK『日曜美術館』のサブタイトルは
「永遠のマハ ~ゴヤが見つめた女性たち~」
テーマはもちろん、現在、上野の国立西洋美術館で開催されている、
「プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影」 (2011年10月22日-2012年1月29日)
に来日、展示中のフランシスコ・デ・ゴヤ 『着衣のマハ』(1805年頃)と、
先行して描かれた対となる裸体画『裸のマハ』でした。
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2011/1127/index.html
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11月19日に放送されたテレビ東京系『美の巨人たち』のテーマ作品「今週の一枚」も
『着衣のマハ』でした。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/1119-8a37.html
来日中の名画ですので、相次いでレギュラー放送の美術番組で取り上げられたのですね。
しかし、番組としてのアプローチ、そして視聴して受ける印象はだいぶ違うものでした。
フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス
(Francisco José de Goya y Lucientes, 1746年3月30日 - 1828年4月16日)
『美の巨人たち』ではふたつの『マハ』はゴヤ自身も含めた宮廷・上流社会の
爛熟、退廃も感じさせる恋愛関係の中で生まれた絵のような印象を与えるものでした。
それに対して今回の『日曜美術館』は…、
宮廷画家に上り詰め、得意の絶頂にあったゴヤですが、
46歳の時、病気により突然聴覚を失ってしまいます。
その頃からゴヤは「マハ」と呼ばれる、下町に生きる粋な女性たち見つめ始めます。
前回も書きましたが、「マハ」とは人名ではないのです。
ゴヤは、街を歩き、社会の底辺で生き生きと暮らすマハたちを素描に描きます。
その数、数百枚。それらはやがて「着衣のマハ」と「裸のマハ」に結晶していく…。
やがてスペインはフランス、ナポレオン軍の侵攻により戦乱の時代を迎えます。
番組ではゴヤの『マハ』のポーズをこの絵と比較しました。
『ヴィーナスとオルガン弾き』(1550年) ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
同じ横たわる姿勢ながら、この絵と違って『マハ』が筋肉を強く使っており、
全体に緊張感に溢れていることを指摘します。
『着衣のマハ』の靴先が短剣をイメージしているとの指摘もありました。
ふたつの『マハ』の制作はフランス軍の侵攻よりも先と見られているので、
戦争との関係は微妙ではあるのですが。
スペインの絶対王政が崩壊していく時期、その時代を強く生きた、
新しい世紀の象徴、それが「マハ」との見方が提示されています。
前回も書きましたが、ゴヤは後に『マハ』を描いたことで異端審問に掛けられます。
もし『着衣のマハ』がなければ、『裸のマハ』はヴィーナスを描いた神話画だと
主張できたでしょう。
その意味で、『着衣のマハ』はゴヤが命を賭して描いた作品だとの見方も提起されました。
今回の『日曜美術館』も、『美の巨人たち』もそうですが、
様々な見方を提起していますが、番組としての結論は出していません。
簡単に出せるものではないので、当然なのですが。
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