« 【美術展】「アール・デコの館」 東京都庭園美術館/歴史ある美術館が改装前にその全貌を公開 | トップページ | 【公園】新宿御苑2011.10.16 »

2011年10月16日 (日)

【美術】伝ブリューゲル『イカロスの墜落の風景」』10/15『美の巨人たち』より/不可解な絵に秘められた意味とは

10月15日放送テレビ東京系の美術番組『美の巨人たち』のテーマ作品「今週の一枚」は
伝ピーテル・ブリューゲル作『イカロスの墜落の風景』でした。
10月4週連続で放送のミステリー絵画シリーズ第3弾です。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/111015/index.html

前回、このブログでこの番組の展望を書きました。
前回の内容とダブりますが、改めてこの絵について番組中心に振り返ります。
Bruegel_pieter_011
元々謎多き画家の謎多き作品。
どのような切り口かと思いましたが、なかなか斬新、説得力ある解釈でした。
といっても、この番組独自のものではなく、中野京子氏の著書で示されていた解釈です。
ご本人も登場しましたね。


ピーテル・ブリューゲル
(Pieter Bruegel de Oude, 1525~30年頃-1569年9月9日)
ネーデルラント(フランドル、現在のベルギー)の大画家。
しかしその生涯には不明点が多いのです。

生前評価されていなかったわけではありません。充分されていました。
二人の息子も、父には及ばないにしろ著名な画家です。
特に次男のヤン・ブリューゲルは花、植物を得意とし、「花のブリューゲル」と呼ばれます。
更に孫や曾孫達も著名な画家となりました。
(ブリューゲル一族についてはこちら

二人の息子を画家として大成させた名伯楽で、画家一族の頂点、
いくら昔のこととはいえ、そんなに不明点が多いというのは不思議ですが、
これが一筋縄ではいきません。
実はブリューゲル、長男が5歳、次男が1歳の時に亡くなっているのです。
つまり二人の息子達はほとんど、あるいはまったく父から絵を教わってはいないのです。

謎めいた画家の謎めいた絵。
もっとも、ブリューゲルの絵は親しみやすいタッチのものが多いです。
ただ、そこにネーデルラントの諺に纏わる寓意が込められていたりするので解り難い、
こういう場合、画家の人生や人となりが解らないと余計つかみ難くなります。


『イカロスの墜落の風景』
ギリシア神話に登場する発明家ダイタロスと、その息子イカロスの物語。
ダイタロスの作った翼をつけて父と共に空に飛び立つも、太陽に近づき過ぎて、
翼を留めている蝋が溶けて海に墜落し死んでしまいます。

日本でも歌になったりして有名ですね。
本来の神話の主旨とは違い、その勇気や冒険心を賛美される傾向もあります。
そのイカロスの海への墜落を描いた作品。

でもイカロスはどこに?
わかります? 右側の船の手前に海から足だけ出てるでしょう。
…なぜこんなに小さく?

そして更に不可解なのは、この絵の他の登場人物である農夫と羊飼いと漁師、
3人ともが目の前でイカロスの墜落という大事件が起こったのに、
気付かないのか、関心がないのか、とにかくまったく知らんぷりの状態なことです。

実はこの農夫と羊飼い漁師は原典のギリシャ神話にも登場します。
翼を付けて空を飛ぶダイタロスとイカロスを見て驚く描写があるのです。
それなのに、この絵では知らんぷり。なぜでしょう?

今回の番組の解釈
中野京子氏の著書『怖い絵3』(2009年発行)の説を採っています。
(中野のオリジナルなのか、それ以前からある説なのかは分かりません)

この絵の描かれた当時、16世紀フランドルはスペインのハプスブルグに侵略され、
その圧政に苦しんでいました。
独立運動を行い、反抗する多くの人達が処刑されていたのです。
反抗者を幇助したり、賛美したりする人々もまた。

そうです。ハプスブルグ家は太陽。
イカロスはそれに挑んで命を落とした反抗者。
人々は自分に被害が及ぶのを恐れ、その姿を見て見ぬふりをしたのでしょうか。

この説は説得力がありますね。
理屈を付けて解釈しようとすれば、これ以上のものはないかも知れません。
本当にそうであったかどうかは、ブリューゲルの思想、人となりを示す資料が少なく、
判断は難しいでしょう。


真贋問題
さて、この絵はかつてブリューゲルの代表作とされていました。
しかし、真贋論争が発生しました。
描かれたカンバス、細部の表現、長い研究・議論の末、
2002年、この絵を収蔵しているベルギー王立美術館は、
遂にこれはブリューゲルが描いたものではないかもしれない、と発表しました。
だから、「伝ブリューゲル」などと書かれるのです。

しかし、その着想、構図はブリューゲルによるものと考えられています。
ということは贋作? いわゆる“偽物”とは限りません。

実は画家になった長男、同じピーテルという名なので、
「ピーテル・ブリューゲル(子)」などと呼ばれますが、
彼は画業の多くを父の作品の模写、つまりレプリカの制作で過ごしました。
ブリューゲルの絵は死後も需要があり、多くの模写が描かれたのです。

この絵はそのピーテル(子)による模写とは見られてないようですが、
ブリューゲル本人による原画が存在し、そのレプリカであろうと考えられています。
つまり、そこに込められた主題もブリューゲルによるものだということですね。

☆今回は番組ではふれられていない私見も一部交えて書いています。

« 【美術展】「アール・デコの館」 東京都庭園美術館/歴史ある美術館が改装前にその全貌を公開 | トップページ | 【公園】新宿御苑2011.10.16 »

03.美の巨人たち (TV東京系)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/562700/53009834

この記事へのトラックバック一覧です: 【美術】伝ブリューゲル『イカロスの墜落の風景」』10/15『美の巨人たち』より/不可解な絵に秘められた意味とは:

« 【美術展】「アール・デコの館」 東京都庭園美術館/歴史ある美術館が改装前にその全貌を公開 | トップページ | 【公園】新宿御苑2011.10.16 »

フォト
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ