【美術展】北斎とリヴィエール 三十六景の競演|ニューオータニ美術館/『冨嶽三十六景』と『エッフェル塔三十六景』を見比べる
東京千代田区紀尾井町のホテルニューオータニ内にあるニューオータニ美術館で、
葛飾北斎の浮世絵『冨嶽三十六景』と
フランスのアンリ・リヴィエールの版画(リトグラフ)『エッフェル塔三十六景』を同時展示した展覧会が、
10月10日まで開催中です。
北斎とリヴィエール 三十六景の競演
2011年9月3日(土)-10月10日(日) ニューオータニ美術館
公式サイトhttp://www.newotani.co.jp/group/museum/exhibition/201109_hokusai/index.html
葛飾北斎の『冨嶽三十六景』は誰でも知っている浮世絵の傑作です。
先日、このブログでもジャポニズム文化について書きましたが、
19世紀末、ジャポニズムブームの中で人気を得ていた『冨嶽三十六景』に触発され、
アンリ・リヴィエールが創造したのが『エッフェル塔三十六景』
この二つの「三十六景」を同時に展示して鑑賞しようという催しです。
葛飾北斎(1760年-1849年)
『冨嶽三十六景』
あまりに有名な浮世絵の傑作シリーズ。
「冨嶽」は富士山を指し、各地から望む富士山の景観を描いています。
初版は1823頃より作成が始まり、1831年頃から1835年頃にかけて刊行されたと考えられています。
当初はタイトル通り36点でしたが、好評につき10点が追加制作され、全46点となりました。
美人画や役者絵が主流であった浮世絵に風景の分野を確立した金字塔的シリーズでもあります。
その『冨嶽三十六景』46点の中でも有名でよく見かける作品というとこのあたりでしょう。
『凱風快晴』(赤富士)
『神奈川沖浪裏』
しかし、富士山をアップで描いた『凱風快晴』や、
荒々しい自然の情景をダイナミックに描いた『神奈川沖浪裏』は
全体の中ではむしろ異質な作品です。
多くの作品は人々の生き生きした姿や、当時の文化を伝える建築物を前面に配し、
バックには雄大な風景を遠近感豊かに描き、遥か彼方に富士山を望む、
といった風情の作品が多いのです。
(西洋絵画の遠近法を研究、取り入れたことも『冨嶽三十六景』の大きな特徴です)
例を挙げますと、
『本所立川』
『駿州片倉茶園の不二』
知っているようで実はよく知らない、
浮世絵の傑作中の傑作を再発見する良い機会だと思います。
アンリ・リヴィエール(1864年-1951年)
『エッフェル塔三十六景』
パリ生まれのリヴィエールはモンマルトルの芸術家や文化人の集うカフェ「シャ・ノアール」(黒猫)で
ジャポニスムにふれました。
1889年にパリで行われた第4回万国博覧会のために建造されたエッフェル塔は、
その斬新さのために賛否両論を呼びましたが、リヴィエールは肯定派だったようです。
『冨嶽三十六景』からコンセプトや技法を取り入れて、富士山をエッフェル塔に置き換え、
パリの人々や文化を、新しいリトグラフの技術を用いて描いたのです。
ところで、リヴィエールは北斎と共に歌川広重の影響も受けたといいます。
広重は北斎よりも40歳近く年下ですが、北斎が長命だったこともあり同時代に活動しています。
今回の展覧会には広重の作品も8点ほど展示されていますので、比較するのもいいでしょう。
更に、別の展覧会の話になりますが、
『冨嶽三十六景』と並ぶ浮世絵風景画の連作シリーズといえば広重の『東海道五十三次』
この『東海道五十三次』の展覧会が豊洲の平木浮世絵美術館で開催中です。
広重「保永堂丸子版・東海道五十三次之内」
2011年 9月3日(土)-25日(日)
この展覧会についての紹介はこちら
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こんばんは~ エッフェル塔36景とは 興味をそそりますね
雪の風景、素晴らし過ぎです~~!
投稿: bella | 2011年9月 7日 (水) 21時22分
bellaさん
建築中、というか建築初期のエッフェル塔の雪景ですね。
リヴィエールは「フランスの浮世絵師」と呼ばれたそうです。
本当に向こうでそう呼ばれていたかまでは確認していませんが。
投稿: Old Fashioned | 2011年9月 8日 (木) 12時49分