【美術】ボス『快楽の園』9/3『美の巨人たち』より/謎多き画家の謎めいた傑作
先週9月3日放送のテレビ東京系『美の巨人たち』のテーマ「今週の一枚」は
ヒエロニムス・ボス『快楽の園』(1500年-1505年頃)でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/110903/index.html
以下、番組の流れに沿ってまとめます。
ヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch 1450年頃- 1516年8月9日)
ボスはネーデルラント(今のオランダ、ベルギー、ルクセンブルク)の大画家です。
4月2日放送のこの番組のテーマで、このブログでも取り上げた
ファン・エイク兄弟の後継者にあたります。
世代でいうと、レオナルド・ダ・ヴィンチとまさに同時代を生きています。
レオナルドはフィレンツェやローマなどルネサンスの中心地で活動しましたが、
ボスの生きたネーデルラントの芸術は北方ルネサンスなどと呼ばれます。
存命中から高い評価を得ていたと思われますが、詳しいことはわかっていません。
その生涯同様、作品も謎めいたものが多いのです。
ネーデルラントの画家達も前述のエイク兄弟の『ゲントの祭壇画」をはじめとして、
宗教画の傑作を多く残しています。
ボスもまた多くの宗教画を残していますが、他の画家とは違い、
悪徳に身をやつす人間の醜さを描いたのが特徴です。
ボス自身は信心深い人間で、その作風は当時の宗教家を含めて
腐敗・退廃した社会背景に起因するともいわれます。
『快楽の園』(1500年-1505年頃)
スペインのプラド美術館所蔵の至宝。
この三連祭壇画風の作品は長方形の両翼を閉じると中央パネルを完全に隠す、
三面鏡のような構造になっており、両翼裏面それぞれに半円ずつ描かれた天地創造の地球、
つまり地動説を基にした地球が描かれています。
それを開くと三つの場面が現れます。
左側から『地上の楽園』、『快楽の園』、『地獄』とタイトルがつけられています
しかし、このタイトルはボスによりつけられたものではなく、
正確に主題を表現しているとはいえません。
特に中央の『快楽の園』について、解釈を巡っては長年議論が続けられてきました。
大勢の裸の人間や実在・架空の動物達の饗宴。
快楽という罪を描いたのか?
それとも愛に満ちた人間の喜びを賛美しているのか?
もしくはアダムとイブが楽園を追放される以前の世界なのか?
番組では「無垢で無邪気の人間達の青春の輝き」との言葉を使い、
肯定的とも取れるまとめ方をしていました。
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はじめまして 素敵なブログで、寄らせていただきました~
この番組は私も欠かさず見ています。
ココログへは 投稿始めたばかりで、使い方にまだ慣れず、
ウロウロしています~
またのぞかせてください・・
投稿: bella | 2011年9月 5日 (月) 14時37分
bellaさん
コメントありがとうございます。
ブログも拝見しました。とても素敵ですね。
写真もご自分で撮られているのですか! とても綺麗です。
『美の巨人たち』は毎週欠かさず美術の話題を、
ユニークな観点で提供してくれるので、やはり貴重だと思います。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: Old Fashioned | 2011年9月 5日 (月) 19時25分