【美術】ラファエロ『アテネの学堂』7/16『美の巨人たち』より/先人の技術を調和・昇華させた、ルネサンス芸術の賛歌
先日、このブログでも書きましたが、
7月16日放送のテレビ東京系『美の巨人たち』のテーマ作品(「今週の1枚」)は
ラファエロの『アテネの学堂』でした。
レオナルドやミケランジェロも出演、豪華な番組でした。
ラファエロ・サンツィオ『アテネの学堂』(1509-1510年)
それでは、今回の『美の巨人たち』に沿って振り返ります。
番組ではラファエロをレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ・ブオナローテと並ぶ、
ルネサンス芸術の三大巨匠と位置付けていました。
一般的な評価でしょう。
そして主にレオナルド、ミケランジェロとラファエロとの関係から、
ルネサンス美術の大作『アテネの学堂』を解き明かそうという試みでした。
まず、ラファエロと師匠であるベルジーニとの関係から、
ラファエロを先人の技法を模倣、調和して昇華させる天才としました。
フィレンツェでレオナルドの『モナ・リザ』を見てスフマートの技法を習得し、
ヴァチカンで自らの作業場の向い側にあるシスティーナ礼拝堂で、
ミケランジェロが描いていた天井画『天地創造』を見てその迫真の肉体描写を学び、
それらを調和させ、自らの芸術として開花させたのです。
そして、『アテネの学堂』制作にあたりラファエロは、
題材となる古代ギリシャの賢人達のモデルとしてレオナルドらルネサンスの芸術家を描き、
ライバルであったミケランジェロも、下絵にはありませんでしたが、描き込まれました。
古代ギリシャの賢者達への賛辞であるこの絵は、
また(その当時の)現代ルネサンス芸術への賛歌でもありました。
そして、先達の技術を調和して昇華させたラファエロの象徴でもあったのです。
なかなか、素敵な切り口でした、。
ところで、番組ではミケランジェロをモデルして描かれたギリシャの哲人について、
このヘラクレイトスとしていました。
実は、最近はこの説が主流のようですが、以前は違いました。
中央がレオナルドがモデルのプラトン(左)、それと議論するアリストテレス(右)のモデルが、
ミケランジェロだとされていました。
そんなに大昔ではなく、手元の1990年代発行の美術本でもそうなっています。
また、番組ではラファエロがレオナルドのあの『モナ・リザ』を見てスフマートを体得したように描かれていました。
これもよくいわれることです。
しかし、レオナルドは『モナ・リザ』を手元のおいたまま終焉の地フランスに移住します。
つまり、イタリアで『モナ・リザ』は公開されたことはありません。
『モナ・リザ』を見る為にはレオナルドのアトリエに出向き、見せてもらわねばならなかった筈です。
番組でも明言はされていませんでしたが、そうイメージさせるような表現がされていました。
ただ、ラファエロがレオナルドのアトリエで『モナ・リザ』を見たことを記した、明確な資料はないと思います。
逆に、番組ではラファエロはシスティーナ礼拝堂で初めてミケランジェロの絵を見たような印象を受けますが、
(そう明言はされていませんが)
これはフィレンツェで既に見ていた可能性があります。
番組の最後でふれられていたように、ラファエロは37歳の若さで亡くなりました。
といっても、『アテネの学堂』の時は25歳。
この後、ルネサンス最大の画家としての歴史を刻んでいきます。
この絵『アテネの学堂』も、ラファエロ自身もまだまだ奥が深いのです。
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コメント
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はじめまして。ルネサンス美術が大好きなこだかと申します。
「美の巨人たち」のアテネの学童の特集は私も見ました。とても魅力的な番組でしたね。
管理人様の記事もとても魅力的です!
私はテレビを見ながらメモをはしらせていましたが、
私も管理人様のように、アテネの学童についての絵画解説ページを作れたらなぁと
思ってしまいました。
今後もブログを見に訪れたいとおもいます。
それでは失礼いたします。
投稿: こだか | 2011年8月 2日 (火) 07時37分
こだかさん
コメントをいただき、ありがとうございます。
こだかさんのように本格的に書かれている方にお褒めいただけるとは恐縮です。
美術に関してはまったくの初心者ですが、書くことが自分の勉強になるかと考え、
拙く記しております。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: Old Fashioned | 2011年8月 2日 (火) 19時24分