【訃報】刑事コロンボのピーター・フォークが死去/他の代表作は? フォークがあのケンケンのモデルとは本当?
『刑事コロンボ』のコロンボ警部役で知られるピーター・フォーク(Peter Michael Falk)が死去しました。
1927年9月16日 - 2011年6月23日 83歳。
『刑事コロンボ』
アメリカの名作テレビ刑事ドラマシリーズ。
あまりに有名なこの作品については説明するまでもないでしょう。、
といっても、その全貌の概略を知っている人がそう多いとも思えないので、
そのうち超入門編でも書きたいと思います。
ピーター・フォークが初めてコロンボを演じたのは1967年、40歳の時。
これは単発ドラマです。
その後、1本のパイロット版を経てシリーズ化されるのが1971年。
これはNBCミステリー・ムービー(NBC (Sunday) Mystery Movie)というシリーズの枠内で、
1971年から1978年まで半年間月1本、だいたい年7本ほど制作されました。
(最後シーズンの1977-78は「ミステリー・ムービー」は終了しており、『コロンボ』単独放映。)
制作はユニバーサル映画。このペースですから、クオリティが高いわけです。
同じ枠内ではこれも日本でも人気のあった『警部マクロード』がありました。
その後、コロンボは1989年に米ABC放送にて復活、2003年まで続きました。
(日本ではABC版は『新刑事コロンボ』として放送されました。)
この『刑事コロンボ』のNHKでの放送開始が1972年。
名優小池朝雄氏の吹き替えも好評で、大きな人気を得ました。
当時、フォークは既に45歳。それまでは日本でそれほど知られた俳優ではなかったでしょう。
ピーター・フォークは舞台俳優出身。やがて映画やテレビの映像分野にも進出。
1960年の『殺人会社』、1961年の『ポケット一杯の幸福』で
2年連続でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、注目を集めました。
豪華な顔ぶれと共演したコメディ『おかしなおかしなおかしな世界』(1963年)を経て、
1965年に出演した喜劇大作『グレートレース』が、コロンボ以前の日本でも知られる映画の代表作でしょうか。
『グレートレース』(1965年)
トニー・カーティス、ジャック・レモン、ナタリー・ウッドの三大スター主演。
監督はピンク・パンサーシリーズ第一作『ピンクの豹』(1963年)を大ヒットさせたブレイク・エドワーズ。
サイレント映画時代に始まるアメリカの喜劇映画黄金時代の世界をカラーフィルムで
再現したかのようなこのコメディ大作において、
フォークは三大スターに次ぐポジションで、三大スターに負けない快演を残しています。
先日、ハンナ・バーベラ社のTVアニメ『シンドバッドの冒険』について書きましたが、
ハンナ・バーベラの人気キャラクター“ケンケン”のモデルは、
『グレートレース』でフォークが演じたマックスというキャラクターだといわれます。
「ピーター・フォークがケンケンのモデル」とまで言い切ってしまうと語弊があるでしょうが、
『グレートレース』でジャック・レモンが演じたフェイト教授と、その助手マックス(フォーク)のコンビが、
『チキチキマシン猛レース』のブラック魔王&ケンケンのコンビのモデルであることはほぼ間違いないでしょう。
フェイト教授(レモン 右)とマックス(フォーク)
このコンビは自動車レースを舞台に、正攻法で勝つよりもまず、
悪略を持って競争相手を陥れようとします。でも結局が自分がひどい目に合ってしまう。
ブラック魔王&ケンケンとそのままでしょう。
後年、ハンナ・バーベラはケンケンとほぼ同じ犬のキャラクターを使って、
コロンボそっくりの刑事を演じさせたアニメを作りました。
これは日本では『スーパー刑事ボロンゴ』のタイトルで放映されました。
さて、コロンボで大人気を経ていた当時のフォークの出演作で、日本でも大きな話題になった映画にこの作品があります。
『名探偵登場』(1976年)
豪華スター競演による古今のミステリ作品のパロディ。
当時の日本ではコロンボのフォークと、
ピンク・パンサーシリーズのクルーゾー警部役のピーター・セラーズ、
超人気二大警部、しかも同じピーターの名を持つ二人の共演で話題になりました。
脚本ニール・サイモン、監督ロバート・ムーア。
『名探偵登場』のDVDジャケット。
これはアメリカ版も同じデザインです。堂々たる単独主演という趣きです。
この作品はフォークとセラーズの他にも、
デヴィッド・ニーヴン、アレック・ギネス、マギー・スミス、エルザ・ランチェスターら
フォークよりも格上の豪華俳優が競演しており、
内容でもフォークは立派な主役格の一人ではありますが、単独主演というわけではありません。
にも関わらず、このジャケットでの扱いを見ると、フォークのアメリカでの高い評価がうかがえます。
この映画でフォークが演じたサム・ダイヤモンドというキャラクターは、
ダシール・ハメットが創造した私立探偵サム・スベードのパロデイ。
短気で、すぐに拳銃をぶっ放す、ハードボイルドの世界を体現したかのような、コロンボとは正反対のキャラです。
この映画の続編ではないのですが、同じ脚本・監督によりスピンオフ作品的な位置づけで作られたのが、
『名探偵再登場』(The Cheap Detective 1978年)
こちらはフォーク演じるハードボイルド探偵が単独主演です。
(役名はサム・ダイヤモンドではなくルー・ペキンポー)
そして、『コロンボ』NBC版終了(1978年)後の作品では、
女子プロレスラーコンビのマネージャー役を演じた、
『カリフォルニア・ドールズ』(1981年)などが知られます。
コロンボは永遠不滅、最高!
でも、コロンボとは違うピーター・フォークも体験していただきたいです。
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