【美術】アングル『グランド・オダリスク』|『美の巨人たち』より/19世紀フランス画壇最高権威の若き反抗の時代
先週、6月11日放送のテレビ東京『美の巨人たち』の「今週の1枚」は
ドミニク・アングル『グランド・オダリスク』(1814年)でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/110528/index.html
4周連続で放送される「絵画の美女シリーズ」の二週目ということですが、
今回に関してはむしろブログにも書いた前々回の放送、
ジャック・ルイ・ダヴィッド編の続編と捉えた方がいいかも知れません。
アングルはダヴィッドの弟子で、新古典主義の継承者ですから。
ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル
(Jean-Auguste-Dominique Ingres, 1780年8月29日 - 1867年1月14日)
新古典主義の巨匠。
19世紀フランス画壇の最高権威。
アカデミー側にあり、ロマン主義の旗頭ウジェーヌ・ドラクロワと対立し、
頑なに認めなかった旧権威の象徴というイメージすらあるアングルですが、
今回の番組はその若き反抗の時代のお話でした。
今回の放送だけだと、まるでアングルは生前認められなかった反骨の画家で、
20世紀になってやっと評価されたように思えるかも知れませんね。
番組に沿って振り返ります。
1797年、ナポレオンの主席画家であったダヴィッドの弟子となったアングルは、
21歳の時に新人の登竜門であるローマ賞を獲得、ローマ留学を果たします。
(芸術の都パリなどと呼ばれますが、歴史的には断然イタリア、
優秀な若者はイタリアへの留学を認められたのです)
アングル若き日の自画像(1804年)
ローマの地でアングルはルネサンス最大の画家ラファエロの絵と出会います。
それまで男性が英雄的に描かれる歴史画や戦争画が芸術の理想とするダヴィッドのもとで
修行を積んだアングルにとって、ラファエロに代表されるルネサンス期の美しい女性像
は衝撃的なものであり、やがて女性美を追求するようなります。
グランド・オダリスク
そうしてそのローマで描き上げたのが『グランド・オダリスク』です。
オダリスクとはトルコの後宮(ハーレム)のこと。
そこに住まうエキゾチックな女性達の姿態が、しばしば西洋絵画の主題になったのです。
しかし、よく見るこの女性の体は少し不自然な点があるように思えます。
まず背中が長すぎる気がするし、手足もそう。そして極端ななで肩です。
この絵はフランスに送られましたか、評価は冷ややかなものでした。
それに落胆したアングルは留学期間が過ぎてもローマからフィレンツェへと、
イタリア滞在を続けます。まさに若き反抗の時代ですね。
それにしても、元々デッサンには定評のあったアングルが、なぜこのような絵を描いたのか?
それは解剖学的な正確さよりも理想的な美しさを重視したのです。
その為には実際の人体ではあり得ないような形になる事も厭わなかったのですね。
このような考え方は後世のピカソらキュビズムの画家達に高く評価されたと番組は結んでいます。
もちろん、それはその通りかも知れません。
ただ、アングルはそこまで待たずとも存命中に充分評価されていたことだけは、
あまりに当たり前のことながら、一応申し添えておきます。大画家となった後年のアングルの堂々たる自画像(1858年)
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