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2010年8月14日 (土)

【古典ホラー】ピーター・カッシング超入門/写真で見る代表作と当たり役

25686164_58701112_1largeピーター・カッシング(Peter Cushing 1913年5月26日-1994年8月11日)
(上の写真は当たり役のひとつ、シャーロック・ホームズを演じるカッシング)


ピーター・カッシングはイギリスの俳優。
「ドラキュラ」や「フランケンシュタイン」といった、
クラシカルなゴシックホラー映画の戦後の大スターとして知られます。

特に1950年代後半から70年代半ばにかけて、
英国のハマー・フイルム・プロダクションが製作した古典的な怪奇映画の看板俳優でした。
といっても、カッシングは怪物や吸血鬼を演じたのではありません。
怪物を創造するマッドサイエンティストや、正義の吸血鬼ハンターのような役柄を得意としていました。
シェークスピアの舞台等で培った演技力に加えて、
善役でも悪役でも、そのクールで知的、気品溢れる存在感が本当に魅力的な俳優でした。

Wikipediaのカッシングの項目はほぼ私が書いてるので、興味の沸いた方はこちらを読んでみてください。
ここではカッシングの代表的な役柄を、イメージの判り易い画像で紹介します。
超概略・入門編です。


フランケンシュタイン男爵25686164_58701107_1large
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フランケンシュタイン映画が代表作、といってもモンスターを演じたのではありません。
怪物を創造する科学者、博士役です。マッドサイエンティストですね。
基本は冷酷な悪役ですが、作品によってややキャラクターが異なり、
硬骨漢の学者肌の場合もあります。

以下6本の映画で演じました。
1.『フランケンシュタインの逆襲』(1957年)
2.『フランケンシュタインの復讐』(1958年) 
3.『フランケンシュタインの怒り』(1964年)
4.『フランケンシュタイン 死美人の復讐』(1967年)
5.『フランケンシュタイン 恐怖の生体実験』(1969年)
6.『フランケンシュタインと地獄の怪物』(1974年)

原作のヴィクター・フランケンシュタインは男爵家の跡取り息子ですが、
このシリーズでは第一作冒頭で、若くして男爵家を相続した設定なので、
「フランケンシュタイン男爵」と呼称されます。


ヴァン・ヘルシング25686164_58701113_1large
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ドラキュラと闘う正義の吸血鬼ハンター。
原作小説では恰幅のいい老教授なのですが、
それとは違う俊敏で鋭利な博士、シャーロック・ホームズに近いイメージです。
以下5本の映画で演じました。
1.『吸血鬼ドラキュラ』(1958年)
2.『吸血鬼ドラキュラの花嫁』(1960年)
3.『ドラキュラ'72』(1972年)
4.『新ドラキュラ/悪魔の儀式』(1973年)
5.『ドラゴンvs.7人の吸血鬼』(1974年)

『ドラキュラ』物語の舞台は19世紀末です。
しかし、3と4はドラキュラが現代に甦えるストーリーなので、
カッシングはヘルシングの子孫を演じました。

5はヘルシングが中国で吸血鬼退治をする話。
ハマー・フィルムが香港の映画会社と提携して作ったのです。


シャーロック・ホームズ25686164_58701111_1large
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実はホームズも当たり役のひとつ。
英国ホームズ協会が唯一公認したホームズ役者ともいわれます。
映画はハマー・フィルムの『バスカヴィル家の犬』(1959年)の1本。
他にBBCのTVシリーズ(1968年)全16本。
後年、単発のオリジナルTVムービー(1984年)で晩年のホームズを演じました。

カッシングのホームズ役の評価は全般に高いとは思いますが、
なにしろ原作が超有名シリーズで、演じた俳優も多く、評価が分かれる面もあります。
私はシャーロキアンなど名乗るレベルではないですが、ホームズ作品は一応すべて読んでます。
(このブログでもホームズの超入門編など書いてます。)
私にいわせれば、カッシングのホームズはやや背の低い点を除けば文句無し、No.1だと思います。
ただ、やはり『バスカヴィル家の犬』(46歳)に次いで40代~50代前半にもっと演じてほしかったですが。


グランド・モフ・ターキン25686164_58701109_1large
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Grand_moff_tarkin_3
『スター・ウォーズ』第1作(エピソードⅳ 1977年)に登場する帝国軍司令官。
メジャー系映画の代表作といえるでしょう。
ダース・ベイダーを従える貫禄、星ひとつを平然と破壊する、冷酷非道、究極の悪役でした。
※2015年12月20追記:SWシリーズ新作公開に伴い、新たにモフ・ターキンの画像をアップしました。


Other
Cushing_earth
『地底王国』(1976年)ペリー博士(左)
自ら開発した地底タンクで地底冒険に出かける、コミカルで愛嬌たっぷりの老学者。
『スター・ウォーズ』の前年制作ですが、あまりの落差に驚きます。
クールな印象の強い人ですが、こういう役も抜群に上手い。


『スター・ウォーズ』は違いますが、低予算で製作される事が多く、
とかく荒唐無稽になりがちなホラーやファンタジーにおいて、
カッシングはその演技力と存在感で、作品の価値を高める事に貢献してきました。


下の写真は英国怪奇映画のもう1人の大スター
クリストファー・リー(Christopher Lee 1922-)
Lee11
今も現役の名優ですが、カッシングとは22本の映画で共演した怪奇の黄金コンビとして知られます。
2人は私生活でも親友でした。
特に戦後を代表するドラキュラ俳優として有名です。
ドラキュラ映画ではヴァン・ヘルシング役のカッシングとは宿敵同士という事になります。


この2人にアメリカのヴィンセント・プライスを加えた3人が、
戦後の怪奇映画の三大スターと呼ばれます。

ヴィンセント・プライス(Vincent Price 1911- 1993)
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エドガー・アラン・ポー作品を原作とするシリーズの主演俳優として圧倒的な存在感を示しました。
活動の拠点が米国と英国に分かれていたので本数は少ないですが、
カッシングやリーとプライスの共演作もあります。

実は彼らの先輩にあたる戦前~戦中派の怪奇スターの中には
破滅型の人生を送った事で知られる人もいるのですが、
この3人はインテリジェンスある文化人としても知られます。

Majinkan_001_2『魔人館』(1982年)
カッシング(右下)、リー(左上)、プライス(右上)に加え、
先輩格のジョン・キャラダイン(左下)も加えた怪奇4大スター奇跡の共演。
(キャラダインという人は、どちらかといば破滅型です。)
プライスとリーの鋭い眼光に比べて、カッシングの表情が柔和に感じますが、
これはそういう役柄なのです。
このような記念写真的なスチールでも、しっかり演じ分けていたのだと思います。


素顔のカッシング
さて、スクリーンでは冷酷な悪役も多かったカッシングですが、
素顔は大変温厚な人格者、紳士として知られます。
「悪役俳優だけど普段は良い人」というのは普通の話ですが、この人は別格といえます。
人柄を知る誰からも、まるで聖人のように讃えられた人でした。

大変な愛妻家としても知られていたのですが、1970年、早くに奥さんを亡くします。
その時は大変なショックだったようで、容貌も老け込みが目立ちましたが、
それでもプロらしい仕事を多く残しました。

1986年を最後に長くスクリーンから離れますが、
亡くなる三ヶ月前の1994年5月、ハマー・フィルムをテーマとしたTVドキュメンタリーの収録に参加、
クリストファー・リーと奇跡的な最後の共演を果たしました。

収録会場のカンタベリーのスタジオには報道関係者やファンが集い、
リーとのトークライブも行われたようです。
まさにホームズ俳優らしい、「最後の挨拶」となりました。


Old Fashioned Club  月野景史

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