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2010年8月

2010年8月29日 (日)

【美術】「アール・ヌーヴォーのポスター芸術展」松屋銀座/ミュシャ、ロートレック

松屋銀座で8月25日から9月6日まで開催中の「アール・ヌーヴォーのポスター芸術展 LIFE WITH POSTERS 1890−1920」を観てきました。
(閉幕しました)

ポスターやチラシになっているのはアルフォンス・ミュシャの代表作、煙草巻紙のポスター『JOB』。
Art_nouveau10827w
今年、東京では三鷹で開催され、来年春まで各地を巡回中の「アルフォンス・ミュシャ展」に続いての邂逅でした。

勿論、今回はミュシャは全体の割合からすれば僅かですが、他にも様々なポスターに出会えました。
サブタイトルに1890-1920と明記されていますが、多くの作品が1900年前後の制作で、前々世紀末から前世紀初頭の都市に生きる人々の息吹が感じられます。
ファッションなど、その時代の人々の興味を共有したような気分になりました。商業ポスターから受ける印象なので当然ですが。

ミュシャのポスターについては、やや退色が目立つようにも感じましたが、全体のボリュームも想像以上で、なかなか見応えがある展覧会でした。

アルフォンス・ミュシャ『ロレンザッチオ』(1896年)Alfons_mucha__1896__lorenzacciowサラ・ベルナール主演舞台のポスターの一作ですが、男性役を演じたサラを描いた事で知られています。


アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック「ディヴァン・ジャポネ」(1893年)
Henri_de_toulouselautrec_019『ポスターの帝王、ロートレックの作品も展示されています。
日本のイメージしたナイトクラブのポスター。どんな店だったのでしょう。


テオフィル・スタンラン『ヴァンジャンヌの殺菌牛乳』(1893年)Steinlenposter_2
ミルクをおねだりする猫が可愛い。
チラシにメインで使われていました。


*ところで、ひとつおかしな事がありました。

ミゲル・ウトリリョ作の『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』(1990年)というポスターが展示されているのですが、
掲示されている説明文に、「ウトリリョは後に高名な画家となるモーリス・ユトリロである」との記述があるのです。
おかしいと思って何度も見直してしまいましたが、そう書いてありました。
図録を読むと、ウトリリョはユトリロの義父だそうです。説明文にまとめるにあたって、要約し過ぎしまったのでしょうね。

また、ムーラン・ド・ラ・ギャレットはルノワールの絵でも知られるモンマルトルのダンスホールですが、このポスターはアメリカにあった同名の店のようであるとのことでした。

この展覧会は百貨店の催事なので期間が短いです。
興味のある方はお早めに。
http://www.matsuya.com/ginza/topics/100804e_artnouveau/

2010年8月14日 (土)

【古典ホラー】ピーター・カッシング超入門/写真で見る代表作と当たり役

25686164_58701112_1largeピーター・カッシング(Peter Cushing 1913年5月26日-1994年8月11日)
(上の写真は当たり役のひとつ、シャーロック・ホームズを演じるカッシング)


ピーター・カッシングはイギリスの俳優。
「ドラキュラ」や「フランケンシュタイン」といった、
クラシカルなゴシックホラー映画の戦後の大スターとして知られます。

特に1950年代後半から70年代半ばにかけて、
英国のハマー・フイルム・プロダクションが製作した古典的な怪奇映画の看板俳優でした。
といっても、カッシングは怪物や吸血鬼を演じたのではありません。
怪物を創造するマッドサイエンティストや、正義の吸血鬼ハンターのような役柄を得意としていました。
シェークスピアの舞台等で培った演技力に加えて、
善役でも悪役でも、そのクールで知的、気品溢れる存在感が本当に魅力的な俳優でした。

Wikipediaのカッシングの項目はほぼ私が書いてるので、興味の沸いた方はこちらを読んでみてください。
ここではカッシングの代表的な役柄を、イメージの判り易い画像で紹介します。
超概略・入門編です。


フランケンシュタイン男爵25686164_58701107_1large
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フランケンシュタイン映画が代表作、といってもモンスターを演じたのではありません。
怪物を創造する科学者、博士役です。マッドサイエンティストですね。
基本は冷酷な悪役ですが、作品によってややキャラクターが異なり、
硬骨漢の学者肌の場合もあります。

以下6本の映画で演じました。
1.『フランケンシュタインの逆襲』(1957年)
2.『フランケンシュタインの復讐』(1958年) 
3.『フランケンシュタインの怒り』(1964年)
4.『フランケンシュタイン 死美人の復讐』(1967年)
5.『フランケンシュタイン 恐怖の生体実験』(1969年)
6.『フランケンシュタインと地獄の怪物』(1974年)

原作のヴィクター・フランケンシュタインは男爵家の跡取り息子ですが、
このシリーズでは第一作冒頭で、若くして男爵家を相続した設定なので、
「フランケンシュタイン男爵」と呼称されます。


ヴァン・ヘルシング25686164_58701113_1large
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ドラキュラと闘う正義の吸血鬼ハンター。
原作小説では恰幅のいい老教授なのですが、
それとは違う俊敏で鋭利な博士、シャーロック・ホームズに近いイメージです。
以下5本の映画で演じました。
1.『吸血鬼ドラキュラ』(1958年)
2.『吸血鬼ドラキュラの花嫁』(1960年)
3.『ドラキュラ'72』(1972年)
4.『新ドラキュラ/悪魔の儀式』(1973年)
5.『ドラゴンvs.7人の吸血鬼』(1974年)

『ドラキュラ』物語の舞台は19世紀末です。
しかし、3と4はドラキュラが現代に甦えるストーリーなので、
カッシングはヘルシングの子孫を演じました。

5はヘルシングが中国で吸血鬼退治をする話。
ハマー・フィルムが香港の映画会社と提携して作ったのです。


シャーロック・ホームズ25686164_58701111_1large
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実はホームズも当たり役のひとつ。
英国ホームズ協会が唯一公認したホームズ役者ともいわれます。
映画はハマー・フィルムの『バスカヴィル家の犬』(1959年)の1本。
他にBBCのTVシリーズ(1968年)全16本。
後年、単発のオリジナルTVムービー(1984年)で晩年のホームズを演じました。

カッシングのホームズ役の評価は全般に高いとは思いますが、
なにしろ原作が超有名シリーズで、演じた俳優も多く、評価が分かれる面もあります。
私はシャーロキアンなど名乗るレベルではないですが、ホームズ作品は一応すべて読んでます。
(このブログでもホームズの超入門編など書いてます。)
私にいわせれば、カッシングのホームズはやや背の低い点を除けば文句無し、No.1だと思います。
ただ、やはり『バスカヴィル家の犬』(46歳)に次いで40代~50代前半にもっと演じてほしかったですが。


グランド・モフ・ターキン25686164_58701109_1large
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Grand_moff_tarkin_3
『スター・ウォーズ』第1作(エピソードⅳ 1977年)に登場する帝国軍司令官。
メジャー系映画の代表作といえるでしょう。
ダース・ベイダーを従える貫禄、星ひとつを平然と破壊する、冷酷非道、究極の悪役でした。
※2015年12月20追記:SWシリーズ新作公開に伴い、新たにモフ・ターキンの画像をアップしました。


Other
Cushing_earth
『地底王国』(1976年)ペリー博士(左)
自ら開発した地底タンクで地底冒険に出かける、コミカルで愛嬌たっぷりの老学者。
『スター・ウォーズ』の前年制作ですが、あまりの落差に驚きます。
クールな印象の強い人ですが、こういう役も抜群に上手い。


『スター・ウォーズ』は違いますが、低予算で製作される事が多く、
とかく荒唐無稽になりがちなホラーやファンタジーにおいて、
カッシングはその演技力と存在感で、作品の価値を高める事に貢献してきました。


下の写真は英国怪奇映画のもう1人の大スター
クリストファー・リー(Christopher Lee 1922-)
Lee11
今も現役の名優ですが、カッシングとは22本の映画で共演した怪奇の黄金コンビとして知られます。
2人は私生活でも親友でした。
特に戦後を代表するドラキュラ俳優として有名です。
ドラキュラ映画ではヴァン・ヘルシング役のカッシングとは宿敵同士という事になります。


この2人にアメリカのヴィンセント・プライスを加えた3人が、
戦後の怪奇映画の三大スターと呼ばれます。

ヴィンセント・プライス(Vincent Price 1911- 1993)
Vincent_price_in_laura_trailercrop
エドガー・アラン・ポー作品を原作とするシリーズの主演俳優として圧倒的な存在感を示しました。
活動の拠点が米国と英国に分かれていたので本数は少ないですが、
カッシングやリーとプライスの共演作もあります。

実は彼らの先輩にあたる戦前~戦中派の怪奇スターの中には
破滅型の人生を送った事で知られる人もいるのですが、
この3人はインテリジェンスある文化人としても知られます。

Majinkan_001_2『魔人館』(1982年)
カッシング(右下)、リー(左上)、プライス(右上)に加え、
先輩格のジョン・キャラダイン(左下)も加えた怪奇4大スター奇跡の共演。
(キャラダインという人は、どちらかといば破滅型です。)
プライスとリーの鋭い眼光に比べて、カッシングの表情が柔和に感じますが、
これはそういう役柄なのです。
このような記念写真的なスチールでも、しっかり演じ分けていたのだと思います。


素顔のカッシング
さて、スクリーンでは冷酷な悪役も多かったカッシングですが、
素顔は大変温厚な人格者、紳士として知られます。
「悪役俳優だけど普段は良い人」というのは普通の話ですが、この人は別格といえます。
人柄を知る誰からも、まるで聖人のように讃えられた人でした。

大変な愛妻家としても知られていたのですが、1970年、早くに奥さんを亡くします。
その時は大変なショックだったようで、容貌も老け込みが目立ちましたが、
それでもプロらしい仕事を多く残しました。

1986年を最後に長くスクリーンから離れますが、
亡くなる三ヶ月前の1994年5月、ハマー・フィルムをテーマとしたTVドキュメンタリーの収録に参加、
クリストファー・リーと奇跡的な最後の共演を果たしました。

収録会場のカンタベリーのスタジオには報道関係者やファンが集い、
リーとのトークライブも行われたようです。
まさにホームズ俳優らしい、「最後の挨拶」となりました。


Old Fashioned Club  月野景史

2010年8月13日 (金)

【美術】オルセー美術館展再訪/ジェルヴェクス『ヴァルテス・ド・ラ・ビーニャ夫人』

先週の土曜日、8月7日の夜、六本木の国立新美術館で開催中の『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」』を再訪してきました。

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金・土曜の夜は20時まで開館しているのですが、土曜の方はあまり認知されてないようで、ここしかないと思って行ってきました。
同じ展覧会を二度観るのは初めてです。今回は観ておくべきと思いました。

19時頃到着。チケット購入も入館も待つ事なく済みました。
館内もさすがにこの時間、最初は余裕を持って観れましたが、第3章のセザンヌあたりから混みはじめました・・というか、人が溜まっていたところに追いついたのですが。
その後は最終章までそれなりには混んでましたが、まぁゆっくり観れたと言っていいでしょう。


そして、前回さほど強くは印象に残らなかった中でも、まだまだ良い絵、お気に入りを色々と見つける事が出来ました。

それにしても、入館早々こんな美しい婦人が、こんな美しい背景で出迎えてくれるのですから、贅沢な話です。25686164_494357646_200large

アンリ・ジェルヴェクス『ヴァルテス・ド・ラ・ビーニャ夫人』

アンリ・ジェルヴェクス(Henri Gervex 1852–1929)はアカデミズム絵画の巨匠、アレクサンドル・カバネルの弟子にあたるようです。日本ではあまり知られていない名前です。
ちょっと写真を撮られるので、日傘を後ろ回してポーズを取ったようなイメージですね。
明るい陽光を浴びる白い肌、髪、服、日傘、花々と背景の樹木のコントラストが美しいです。

師匠のカバネルといえばこの絵が有名ですね。 『ヴィーナスの誕生』The_birth_of_venus_1863


さて、せっかく夜の六本木に来たのだから、ミットタウン近くのBarを久々訪問。

25686164_494357549_123largeなんだかわかります?

バックバーが水槽になっていて、鮫が泳いでいるのです。
Bar Arannya
http://blog.arannya.jp/

2010年8月 5日 (木)

【美術】オルセー美術館展.2/シニャック、レメン、モロー、ボナール

六本木の国立新美術館で開催されていた『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」』
http://orsay.exhn.jp/

そのグッズコーナーで購入した二つ折のクリアファイルです。
大き過ぎてスキャン出来ないので、デジカメで撮りました。Orsayfail この展覧会の総展示数が115点だそうだから、おそらく全点載せているのでしょう。贅沢なファイルです。

「モネ5点、セザンヌ8点、ゴッホ7点、ゴーギャン9点、ルソー2点をはじめとする絵画115点」
これは公式資料に掲載の文面です。
錚々たる名前と出展数ですが、彼ら以外にも注目すべき画家、作品は多数あります。
そんな中から何点か紹介します。

ところで、「ポスト印象派」とはなんでしょう?
「ポスト」と付くのだから「印象派」ではないのです。印象派よりも後、という意なのですが・・・、
画家、もしくは絵画のジャンル分けも一筋縄ではいきません。

更にややこしい事に「新印象派」というのもあります。
ただ、「新印象派」だけについていえば、“点描”という特徴がハッキリしてるので、比較的判り易いです。
今回のオルセー展は新印象派の作品も充実しています。

ポール・シニャック『マルセイユ港の入口』Paul_s1観ての通り、点で描かれているから“点描”です。
印象派による光の表現を理論的に推し進め、開拓された技法とされます。

新印象派を代表する画家は創始者とされるジョルジュ・スーラとこのシニャック。
スーラの影響の元、この点描法に取り組んだシニャックですが、早世したスーラに代わってこのスタイルを牽引しました。

この絵の題材でもあるマルセイユに住み、海や船を多く描いています。


ジョルジュ・レメン『ハイストの浜辺』Lemmen2_2有名画家の作品が揃った今回の出展作の中ではマイナーでしょうが、なかなか美しい絵です。夕景でしょうか。
点描技法でまさに「新印象派」です。

ジョルジュ・レメン(Georges Lemmen 1865-1916)はベルギーの画家です。
ネット上から得られる情報も少ないですね。
フランスのスーラやシニャックとはだいたい同世代ですが、交流はあったのでしょうか。
Wikipedia等での扱いからみると、この『ハイストの浜辺』はレメンの代表作のひとつのようです。

この絵について、ネット上でも、今回のオルセー展で見て気に入ったという意見を見かけます。
思いがけず、新たなお気に入りの絵を見つけるのは、展覧会の楽しみのひとつです。


そして、また全然違う傾向の絵でこんな名画も。

ギュスターヴ・モロー『オルフェウス』Opheこちらはフランス象徴主義の超ビッグネームの一大傑作。

展覧会の一枚看板になっておかしくないほどの名画ですが、今回の作品群の中にモローがこれ1点だけだと、浮いてるような感がなきにしもあらずです。

この「女性と、男の生首」という画題は、モロー自身が何度も描いたサロメと洗礼者ヨハネ、また旧約聖書にあるユディトとホロフェルネスのエピソードがありますが、
これはまた別で、ギリシャ神話に登場する吟遊詩人オルフェウス(オルペウス、オルフェ)の最期を、モローがイメージを豊かに膨らませて描いたものです。

ヘブロス河に投げ込まれたオルフェウスの首と竪琴がレスボス島に流れ着き、美しい女性に拾い上げられ、これから葬られる、というところでしょう。

神話の世界もモローの筆にかかれは、更に神秘的に、一際美しくなります。
神話の知識がなくても、引き込まれてしまいそうな魅力のある絵ですが、とはいえ特異な構図でもあり、知識を得て更に鑑賞したい絵です。


ピエール・ボナール『ベッドでまどろむ女(ものうげな女)』Bonnard_inodolente00_2これは実に大胆な構図、というかポーズの裸婦像です。

ボナールは象徴主義の系譜のナビ派の画家。親密派とも呼ばれます。
(ジャンル分けも、こうなるとかなりややこしいですが)

1899年の作品。まさに世紀末ですね。
ボナールの多くの作品と同様、愛妻マルトをモデルとした絵です。

2010年8月 1日 (日)

【美術】オルセー美術館展2010「ポスト印象派」/六本木 国立新美術館

六本木の国立新美術館で開催中の『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」』。
大変な盛況のうちに8月16日、閉幕しました。
http://orsay.exhn.jp/
Worsay


国立新美術館は2007年1月開館の比較的新しい美術館。
作品を所蔵せず、企画展や貸会場を専らとする美術館です。
(それで“美術館”といえるのかという論議もあるようですが)
Worsay3

この春以降、東京近辺では特に印象派絵画周辺を中心に、展覧会が多く開催されてきましたが、このオルセー展は質・量とも別格の凄さだと思います。

公式サイトにある、
<これらの絵画がまとめてフランスを離れることは2度とない」(ニコラ・サルコジ フランス共和国大統領)>

<過去に日本で開催されたオルセー美術館展の目玉作品として紹介されてきた作品もずらりと並ぶ、まさに「ベスト・オブ・オルセー」展>

といったフレーズもあながち大袈裟とはいえないでしょう。
「ポスト印象派」という括りでまとめてしまうのも無理があるのでは?とも感じてしまいます。

どの絵が一番の目玉かというのも難しいですが、、。

フィンセント・ファン・ゴッホ作『星降る夜』
Whoshifuru
これはなんとも美しい夜景です。
10月からは同じ国立新美術館で没後120年展が予定され、ますます注目が高まるであろうゴッホですが、この絵などは今まで「ゴッホの絵はあまり・・・」と思っていた人も見直すのではないでしょうか。


ともかく、オルセー展は後2週間ちょっと。
夏休み中ともあり、混雑する日が多いでしょうが、是非観覧を薦めます。
(閉幕しました)
Worsay2

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