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2010年7月26日 (月)

【美術】マネ『フォリー・ベルジェールのバー』超概略/女性バーテンダーを描いた初めての絵

その革新性で近代絵画を牽引したエドゥアール・マネ晩年の傑作
『フォリー・ベルジェールのバー(A Bar at the Folies-Bergere)』 (1882年)


Edouard_manet_004_3

追記:本作は2019年12月15日まで東京都美術館で開催の
「コートールド美術館展 魅惑の印象派」に来日しています



4月に開館した丸の内の三菱一号館美術館。
その第1回目の展覧会であった「マネとモダン・パリ」展には、この絵の習作が展示されていました。
http://mimt.jp/manet/Manet_bar1

Bar好きの私にとっては大好きで興味深い絵です。
バーというからにはここで描かれている女性はバーテンダー。
この絵は女性バーテンダーを描いた最古の絵という事になるかと思われるのです。

 

といっても、ここに描かれている“バーテンダー”は、現在イメージされるお酒の専門家で、
シェーカーを操って自在にカクテルを作るバーテンダーとは違うようですが。

 

フォリー・べルジェールとは当時のパリの人気社交場であったミュージックホール。
描かれたのはその一角にあるオープンなバースペースでしょう。
ここは広義でいう劇場でしょうが、演劇ではなく歌やレビューなどのパフォーマンスが繰り広げられていたようです。

大型のライブハウスと言った感じでしょうか。下のポスターから雰囲気が伝わってきます。


Cheretfoliesberger

 

『フォリー・べルジェールのバー』はモデルも特定されていて、シュゾンという女性との事です。

下は同様にこの時代を生きた女性を描いた絵。マネの肖像画の代表作で、
「マネとモダン・パリ」展にも出展されていた『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』。

 

E_manet_mori2

19世紀を代表する女性画家であったモリゾのこの毅然とした瞳に比べると、
『フォリー・ベルジェールのバー』の“女性バーテンダー”の表情は虚ろなどと表現されます。

しかし、「虚ろ」と言ってしまうのは少し可哀そうにも思います。
忙しい仕事の合間、ちょっと放心した瞬間を捉えたような、アンニュイな雰囲気を漂わせて魅力的に感じます。
まさにその時代、その場所に暮らす人々の一瞬を切り取った写真のような趣きがあり、
絵の中に、遠く時と距離を隔てたミュージックホールの酒場の喧騒の中に、惹き込まれそうな気持ちになります。

 

マネは、最初は実際にフォリー・べルジェールに赴いて習作を描いたようですが、
病気が重くなって外出が出来なくなり、アトリエにセットを組んで描き続けたそうです。
症状はかなり悪かったようですが、画面からは華やかさや活気が伝わってきます。
デザインも多彩な酒瓶たちは、特に酒好きにとってはたまらなく楽しいです。

 

一方で、女性の表情と合わせて深読みすれば、享楽の儚さなども感じ取れなくもないのでしょう。
華やかさと儚さは常に表裏一体のものかも知れません。

 

ちょっと観ただけでは判り難いのですが、この絵の賑やかな背景は鏡に映った光景です。
ですので、背後で背を向けている女性は、正面を向いている女性の鏡に映った背中という事になります。
ただ、だとすれば女性の立ち位置と、鏡に映る後姿の位置関係がおかしいのではないか、
また、鏡の中で女性と向き合うシルクハットの男性はどこにいるのかなど、位置関係で整合性を欠く面があります。

この件については色々な見方があるようです。
写実性よりも感性重視、というような捉え方でいいようですし、
別に鏡だと思わなくてもいいのでは、とも感じます。

Old Fashioned Club  月野景史

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