13.【特集】テレビドラマ

2023年4月18日 (火)

【ドラマ】『江戸を斬る 梓右近隠密帳』竹脇無我主演 豪華キャストの伝説の傑作時代劇

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『江戸を斬る 梓右近隠密帳』

1973年9月24日~1974年3月25日 放送

江戸を斬る』といえば『水戸黄門』や『大岡越前』と同じ
TBSの『ナショナル劇場』で放送されていた時代劇ドラマの人気シリーズで、
西郷輝彦や、たいぶ後には里見浩太朗遠山金四郎を演じた作品として記憶している人が多いでしょう。

しかし、金さんが主役になったのは第2部以降で、第1部は別のドラマでした。
タイトル通り、「梓右近」なる架空の人物を竹脇無我が主役として演じたドラマだったのです。
このドラマの再放送がチバテレビで4月16日から始まりました。水曜-日曜の20時放送とのこと。
今日はこの昭和の傑作時代劇を紹介します。

このドラマは『大岡越前第3部』→『水戸黄門第4部』に続いて放送されました。
『黄門』と『越前』に交互に放送するローテーションが確立しつつあった時期に、
『越前第4部』を飛ばして、『梓右近』が放送された形です。


『大岡越前』の実質的なスピンオフ
そして、このドラマは実質的に、『大岡越前』の準主役である榊原伊織役の
竹脇無我さんを主演に据えた、『越前』のスピンオフ作品と言っていいかと思います。

もちろん、伊織と右近は別人ですし、人物設定も時代も違うので、
厳密にいえばスピンオフではないですが、伊織と右近のキャラクターは良く似ています。

そして主要なレギュラーキャストの配置が『越前』に極めて近いです。
例えば、目明しの大坂志郎、その配下の岡っ引きに高橋元太郎、密偵ポジションの松山英太郎
更に長老ポジションで片岡千恵蔵、他に志村喬、中村竹弥といった大物が『越前』と同一キャストです。


大江戸版『水戸黄門』
そもそも、主役の梓右近とは何者か?
徳川三代将軍 徳川家光の異母弟で会津藩主の保科正之。これは実在の人物。
この正之の双子の弟という設定の人物が、本編の主役 梓右近なのです。

右近は家光、そして正之の依頼を受け、普段は浪人として町に隠棲しつつ、
江戸にはびこる悪を暴き、懲らしめるという役を担います。
そして、その際には、水戸黄門の印籠同様、葵の御紋の刻まれた剣を抜くのです。
大江戸版の『水戸黄門』といったところです。


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豪華キャスト・キャラクター
このドラマはレギュラー・準レギュラーキャストが大変豪華です。

それも出演俳優が豪華なだけではなく、
登場人物が、歴史上の有名人だったり、時代小説や時代劇映画の人気キャラクターが多く、
それを大物俳優たちが演じているのが特徴。
初回に登場したキャラを挙げてみます。

大久保彦左衛門を片岡千恵蔵
柳生但馬守宗矩を志村喬
柳生十兵衛を若林豪
丸橋忠弥を加藤大介(志村喬とは『七人の侍』のコンビ)
松平伊豆守を神山繁
一心太助を松山省二(松山英太郎と兄弟共演)
大久保家の用人、笹尾喜内を牟田悌三
徳川家光に長谷川哲夫
そして、シリーズ通しての敵役・ラスボスの由井正雪を成田三樹夫が演じています。


更に女優陣も豪華
柳生但馬の娘を演じヒロインを務めるのは、前述のように松坂慶子
更に榊原るみ鮎川いづみと、当時21~22歳の若手人気女優が並びます。
これもナショナル劇場としては、珍しい趣向です。
上に貼った当時のポスターでも、女優陣を大きめに扱い、華やかさを強調しています。

これらに加えて前述の大坂志郎高橋元太郎松山英太郎らが第1話に揃って出演しています。
連続ドラマの通常1時間枠の単回としてはあり得ないほどの豪華さ。
中村竹弥石谷十蔵役で第2話から出演)
回が進めば準レギュラーやゲストに更に大物俳優が登場していきます。

と、豪華俳優ばかり強調しましたが、
なんといっても、この頃の竹脇無我さんのかっこよさはすごい!
美人三女優競演も、この今でいえば“超イケメン”の主役あってこそ映えます。
3人とも右近に恋ごころを持つ、『黄門』や『越前』には無い構図です。

華やかさもある痛快娯楽時代劇にして、重厚さを合わせ持つ昭和の傑作。
令和の世でまた観れるとは嬉しいことです。

Old Fashioned Club 月野景史

2023年3月31日 (金)

【心霊内科医 稲生知性】霊と話す医師/深夜のフジで4夜連続放送された、思わぬ拾い物ドラマ

『心霊内科医 稲生知性』
(しんれいないかい いなおちせい)
2023年3月28日(27日深夜)~31日(30日深夜)まで4夜連続放送済。


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昨日のブログで紹介した『アイゾウ』の後の時間帯で4夜連続で放送された、フジテレビ深夜の30分ドラマ。
『アイゾウ』とはテイストが似ているといえば似ているが、こちらは今回初登場のオリジナル作品。
『アイゾウ』からの流れで観たのですが、思わぬ拾い物でした。


レギュラーキャストは4人

主人公の稲生知性を演じるのは、じろう(お笑いコンビ「シソンヌ」のメンバー)
心療内科医として「稲生心療内科」開業しているが、
実は患者に取り憑いた怨霊が見え、話すことが出来る「心霊内科医」。

ヒロインポジションは稲生の医学部時代の同期で、こちらは普通の心療内科医の中岡俊子(伊勢佳世)
中岡は稲生の特殊能力を知っており、自分が診察し、心霊絡み(このドラマでは「霊障」と表現される)だと、
判断した患者を、稲生の診察室へ連れてくるところから、毎回の話がスタートします。

他に稲生の助手(と思われる)髙橋守に若手歌舞伎俳優の中村鶴松
「稲生心療内科」の受付、小池志摩子平田敦子

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左から稲生知性(じろう)、助手の高橋守(中村鶴松)、稲生の同期の中岡俊子(伊勢佳世)


お笑い芸人「シソンヌじろう」が主役
シソンヌは単独活動では、じろうさんの相方の長谷川忍さんの方がバラエティ系で見かけます。
じろうさんはドラマにそこそこ出ているようですが、主演は初めてのこと。
失礼ながら、「せっかく面白そうなテーマなのに、お笑い芸人主演か」などと思ったのですが、
じろうさんは、ちょっと松田龍平さんに似た独特の雰囲気を醸し出し、好演でした。

思えば、昨年のR1グランプリなども、まるでアングラ芝居の一幕のような、演技力が必要なコントが多かった。
シソンヌは2014年のR1王者なので、昨年の出場者よりは少し世代が上ですが、
最近のコント師は演技力が高いということでしょう。


死者の霊が見え、会話が出来る
この“能力”、元ネタが挙げるなら、映画の『シックスセンス』でしょう。
稲生は患者に取り憑いた “怨霊” と話すことにより、
本来の目的は患者の治療ですが、結果的に殺人事件を解明することになります。
その意味でこのドラマは、いわば“オカルト探偵もの

死者と話せる能力を利用しての事件解明となると、『シックスセンス』にもその要素はあるし、
日本のドラマだと、小栗旬さん主演の『BORDER(ボーダー)』が思い浮かびます。

殺人事件の被害者の霊と話せば、真実はすぐにわかりそうなものですが、
実は霊にも真相か分かってない場合もあり、更に霊も嘘をつく事があるというのが、このドラマの胆。
患者と霊の思惑は複雑に絡み合い、そこから真相が導き出されていきます。


個性的な脇役たち
ヒロインの中岡俊子役の伊勢佳世さんは舞台女優のようで、ドラマでは見かけない顔ですが、達者な演技。
無表情でスローな稲生に対し、表情豊かで軽妙、アップテンポにしゃべるキャラで、そのコントラストがいい。
変人の稲生に対し、ややエキセントリックではあるが、常識的思考の人間として、
稲生と患者の間に立ち、ストーリーを牽引しています。


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ヒロイン 中岡俊子役は舞台女優の伊勢佳世(いせ かよ 1981年5月30日~)


そして、助手ポジションの高橋守役は中村鶴松さん。
一般家庭の出でありながら、歌舞伎界入りした若手俳優。

高橋は次回の診察までの間に依頼者(患者)と霊の周辺調査をしているようで、それが事件解明に役立っています。
ただ、どのように調査をしているかは、まったく描かれません。


助手の高橋は霊だった
最終第4夜の放送で、実は高橋は稲生や中岡の医学部の同期生で、学生時代の16年前に亡くなっており、
それ以来、稲生に取り憑いている霊だという、驚愕の事実が判明ました。
つまり、中岡や患者達には、高橋の姿は見えてなかったのです。

といっても、これは初回の時点で、たぶんそうだろうな、とは思っていました。
よく観ると、高橋は稲生以外とは、まともに会話のやりとりがないのです。
ただ、そうミスリードして、実は違うというパターンもあり得るとは思っていましたが、
そこまでの捻りはありませんでした。


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助手の高橋守(左)は大学同期の稲生(右)に取り憑いた霊だった


そしてラスト、中岡が高橋の霊の存在に気が付きます。
中岡は高橋は自殺だと思っていたようですが、実は殺されていたことが明らかになりました。
しかも犯人は不明、稲生と中岡は16年間、真相を追い求め続けているとのこと。

更に一番最後、もしかしたら高橋殺害の犯人は稲生では、と匂わせるようなシーンでドラマは終わりました。
言葉では表現されていません、演者の眼差しだけで、そんな疑惑を感じさせていました。


舞台は医院のみ、まるで舞台劇だが
このドラマの舞台は稲生の診療所(主に診察室と受付)のみで展開します。
私は勘違いしていて、レギュラー4人の登場は医院のみだが、ゲスト俳優による事件シーンは映像で描かれていると
思っていたのですが、見直すと、それらは僅かな静止写真にセリフを重ねて表現されているだけでした。
まるで舞台劇、深夜枠ならではの低予算ぶりともいえますが、それを感じさせない演出でした。


続編は?
もし、このドラマの続編が作られるとしたら、この高橋殺害の件が、ストーリーの縦軸となるのでしょう。
私はこの件の真相にはあまりこだわりませんが、一話完結の心霊探偵ドラマとして、本作はなかなか面白かったです。
ゲストの患者や関係者、霊の演者たち、有名俳優は少なかったですが、印象の強い好演が目立ちました。

是非続編を、期待しています。

Old Fashioned Club 月野景史

※見逃し配信等の情報は公式サイトから  
https://www.fujitv.co.jp/inaochisei/


2023年3月30日 (木)

【アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班】女優「夏子」の魅力/海外の異常犯罪を題材とした異色警察ドラマ


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『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』


2022年3月に単発、
同年10月~11月に全8回の連続ドラマ(すべて前後編なので、エピソードとしては4話)で、
フジテレビの火曜深夜枠(水曜早朝)で放送されたドラマが再登場。
2023年3月28日と29日にスペシャル版として二夜連続で放送されました。
今回は前後編ではなく、別々のエピソード。

海外で実際に起きた異常犯罪をモデルとし、
舞台を日本に置き換えて展開する、異色の警察・犯罪捜査系ドラマ。


主人公の警視庁心理分析捜査班(通称“アイゾウ課”)の刑事 安座間霧子を演じるのは夏子さん
「夏菜」でも「夏帆」でもなく、「夏子」
苗字無し、「夏」が付く二文字のファーストネームを芸名とする第三の女優(勝手な定義づけだけど)。
一般的知名度は高くはないでしょう。

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夏子演じる主人公 安座間霧子
眉毛まで隠れる、きっちり揃えた前髪がトレードマーク

安座間とチームを組むのは捜査一課のベテランと若手の男性刑事のコンビ。
演じるのは津田寛治さんと水石亜飛夢さん。
ただし、津田さんと水石さんのどちらかが、別の刑事とコンビを組む場合もあり。


主人公 安座間霧子とは
実はこの安座間、自身が上官へのストーカー行為で左遷された、異常性を持つ人間。
そして、今でもその上官への固執はまったく変わっておらず、
その上官からの指示と聞くと、喜々として捜査にあたる。

津田寛治さん演じるベテラン刑事は、いわゆる古いタイプの刑事。
対して、安座間は自ら思考・経験に基づき、容疑者・関係者の心理分析を行ない、捜査を進めます。

ところで、画面には登場しない、安座間が固執いる上官の名前は「村瀬」。
津田寛治が『警視庁捜査一課9係』→『特捜9』で長年演じている刑事の役名と同姓。
ここは“お遊び”で、それ以上の意味はないだろうけど。

安座間のエキセントリックなキャラに基づく捜査一課コンビのやりとりは多分にコミカルだが、
事件捜査の部分は、いたってシリアス。
人間の “愛憎” が絡み合った複雑な事件を、怜悧に分析・捜査し、解決に導きます。

一方で、都市伝説めいた異常犯罪がテーマなので、
オカルト、ファンタジーめいた雰囲気をも持つドラマ。
なかなか魅力的です。


一番の魅力は、夏子さんの演技か
異常性を垣間見せながら、過度な嫌悪感を抱かせず、ユニークな存在感を醸し出す
絶妙のバランスを保っています。
なかなか面白い女優さん。

最初の単発放送時にそれなりに話題を呼んだようです。
昨秋の連ドラ化では、私も面白く鑑賞しました。
ただ、この時は某巨大掲示板ドラマカテにはスレッドすら立たず、話題になったようには感じませんでした。

それでも今回の新作放送なのだから、配信等での反響はあったのか。
今回の2本で、合計11本が放送されたことになります。
深夜枠に相応しい、怪しげで魅惑的なドラマ。
四度目の登場はあるのか?

Old Fashioned Club 月野景史

2023年3月13日 (月)

【ドラマ】『ブラッシュアップライフ』最終回は三浦透子大活躍/この2-3年で最も楽しめた良作

このブログでも3回にわたって書いてきた、今クールで一番面白く、楽しんで観ていたドラマ。
日本テレビ系日曜ドラマ枠(22:30~)『ブラッシュアップライフ』。
3月12日に最終回第10話の放送が終了しました。

今クールどころか、この2~3年で最も楽しんだドラマということになりました。


三浦透子さんが大活躍
最終回は前半、開始間もなくに山場を持ってきました。
主人公・近藤麻美(安藤サクラ)の1周目の人生における市役所の同僚・河口美奈子役の三浦透子さん。
初回に少しだけ登場、だいぶ間を空けて8話で久々に登場するも、大した役割を果たしてこなかったのに、
今回突如、麻美がパイロットとして勤める航空会社のCAとして登場、(河口本人の意思に関係なく)大きな活躍を果たし、
麻美と宇野真里(水川あさみ)の危機を救い、彼女らのミッション達成をアシストしたのです。

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凛々しいCAスタイルで突如現れた河口美奈子(三浦透子)


この時の麻美と河口のやりとりの面白さは最高でした。
とにかく、全編通して安藤さんの演技力が際立ったドラマでしたが、
今回は三浦さんが安藤さんとがっぷり四つ(というような力が入り過ぎた演技ではないのですが)で、絶妙。

三浦さんについては、初期のモブに近い出演だけで終わるとは考え難く、
再登場してキーマンになるとの見方はネットにもあり、私もそうは思っていましたが、
ここまで大きな役割(?)を果たすとは、想定外でした。
本当に良い意味で、裏切られることの多いドラマでした


最終回は序盤に山場を持ってきたので、
中盤から終盤はまったりした展開でした。
もうひと山欲しかったという声もありましたし、それもわかるのですが、
これでよかったと思います。

バカリズムさんの脚本も見事でした。
ネット情報だと、初期の時点では麻美の最終周のパイロット就任などは、まったく決まっていなかったともいいますが、
それについては、本当だろうか? と、ちょっと疑問に感じていますが。
つまり、そう感じてしまうほど、ラストが綺麗にまとまったと思うのです。

SF的な部分は、タイムリーパー(このドラマにおいては人生をやり直している人)が、
麻美以外にも登場して、麻美と絡み出したら、ややこしくなるし、そこを突き詰めると難しくなります。
麻美の記憶にない、真里の1周目における麻美達との交遊の記憶の位置づけとか。

結果、そこの合理的な説明はありませんでした。
それで良かったと思います。


麻美達仲良し4人組が皆最期まで独身とはちょっと寂しいとの声もあります。
でも、そこにこだわって文句を言うべきところではないし、
実は4人とも独身だったとは、断言出来ないのです。
(配偶者に先立たれ、老人ホームに入った可能性もあるので)

内容からして、続編は期待出来ないし、作るべきでもないと思うけど、
またこのようなドラマを、期待しています。

Old Fashioned Club 月野景史

2023年3月 6日 (月)

【ドラマ】『ブラッシュアップライフ』最終回直前/良いラストであるように

このブログでも2度(1回目2回目)書いた、今クールで一番面白く、楽しんで観ているドラマ。
日本テレビ系日曜ドラマ枠(22:30~)『ブラッシュアップライフ』。
3月5日に第9話が終わり、3月12日が最終回第10話ということになります。

元々視聴率が高い枠でもないし、初回からのレギュラーキャストも地味目でしたが、
終盤に向けて視聴率もじりじり上昇して今回は初の7%越え、確実に好評価で、ファンも付いているようです。
しかし、9話及び次回予告を観ると、」最終回をどうまとめるのか、ちょっと予想が難しくなってきました。

第7話終了時のブログで書いたように、タイムリープがテーマとはいえ、
唯一のタイムリーパーである近藤麻美(安藤サクラ)目線で描かれるため、
時間軸とか世界線といったSF的なものとは無縁だったのですが、
麻美と同様に人生を繰り替えしやり直している宇野真里(水川あさみ)の本格登場で、この点はややこしくなりました。
ただ、ネットでは色々考察している人もいますが、おそらくこの点は突き詰めないかと思います。


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さて、最終回はパイロットとなった麻美と真理が
幼馴染の門倉夏希(夏帆)、米川美穂(木南晴夏)を飛行機事故から救うため、
機長と副操縦士として、その便に乗り込もうという展開。

二人はそのために綿密な準備をして、最後のやり直し人生を過ごしてきたのですが、
予告を観ると、そのミッションは簡単にはいかず、最終回は波乱含みのようです。
ネットでは様々な予想が乱れ飛んでいますが、どうも見当違いが多いように思います。
といっても、たしかに予想は難しく、何が見当違いかなど、わからないのですが。

とりあえず、9話で初登場した、最終回のキーパーソンになりそうな二人の男性俳優から考えてみます。


浅野忠信
予想を混沌とさせている要因のひとつが、今回唐突に登場した浅野忠信さん。
物陰から麻美と真理を見ているだけで、何者なのかまったく不明ですが、
失礼ながら、何分浅野さんなので、怪しい雰囲気を醸し出しています。

浅野さんは最終回のストーリーに絡まないのでは、という見方もありますが、さすがにそれはどうかと。
むしろ。今回の浅野さんの登場の仕方は、第3話の水川あさみさんの登場に似ているので、
だとすれば、浅野さんもタイムリーパー?
だとしても、今まで何らかの形で登場している人ではないかと思いますが、
一人思い浮かぶとしたら、麻美達の成人式で毎週暴れるヤンキー君です。

しかし、彼は麻美と同い年の筈なので
今年50歳の浅野さんは、さすがに無理かと(安藤サクラさんは今年37歳)。


神保悟志

もう一人、予告でも麻美と真里のミッションの障壁に確実になりそうなのが、先輩機長役の神保悟志さん。

麻美たちが乗ろうとしている便に、頑なに自分が乗ると主張しています。
それをどう排除するかが二人の当面の課題で、かなり過激な発言も飛び出していました。

この神保さんの先輩機長の頑なさも少々気になり、
ネットではあまり指摘されてなさそうですが、実は神保さんもやり直しで、
事故を防ごうとしているのでは、とも感じています。


4羽の鳩
実はこのドラマの第1話の冒頭は、電線にとまる4話の鳩の映像からスタートしました。
これが、麻美たち幼馴染4人組の来世の姿では? という見方は当然されています。

ただ、そうなると、事故で4人一緒に亡くなるという展開が一番しっくりするのですが、
さすがにそれは悲劇的過ぎるか?
別に4人一緒に死ななくても、揃って鳩に生まれ変わって、おかしいということもないのですが。


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これでは身も蓋もないですが、ストーリー的にはあり得なくはない、むしろしっくりきます。
初回の事故で昏睡状態である時に見た夢ということで。
しかし、まぁないでしょう。


さて、どのように物語は締め括られるのか?
せっかくの良ドラマ、心に残るラストを期待しています。


それにしても、上でこのドラマはキャストは地味目と書きましたが、
第9話では、初回には登場しておらず、毎回のレギュラーともいえない
水川あさみ、黒木華、浅野忠信、江口のりこら主演級の俳優に加え、
神保悟志さんらが揃って登場しており、随分豪華なことになっています。

また主要キャストの子ども時代(幼児、小学生、中高校生)を演じる子役たちも好評で、
特に麻美の幼児時代を演じる龍野七海ちゃんが評判になっていますが、
私はその幼児麻美と絡みの多い、森山玲奈(黒木華)の幼児時代の鈴木凛子ちゃんもかなり上手に思えて、
感心しながら観ています。


Old Fashioned Club 月野景史

2023年2月20日 (月)

【ドラマ】今期一推し『ブラッシュアップライフ 』の魅力と、楽しめない人々について

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先日もこのブログ書いた、日本テレビ系日曜ドラマ枠(22:30~)『ブラッシュアップライフ』。
2月19日に第7話が終わったので、そろそろ終盤。
今クールで一番面白く、楽しんで観ているドラマです。

お笑い芸人で脚本家としても活躍する、多才なバカリズムさんの作。
交通事故により33歳で不慮の死を遂げた主人公の女性、近藤麻美(安藤サクラ)が
前世の記憶を持ったまま、同じ人間としての人生を赤ちゃんからやり直し、
来世でも人間に生まれ変わるために “徳を積む” という、いわゆるタイムリープもの。
麻美は既に4周目のやり直し中で、研修医として、35歳を迎えています。

私は楽しんで観ているですが、ネット(主に5ちゃんねるですが)では、
もちろん好きな人もいますが、不評も結構目立ちます。
たしかに、ちょっと難しい面があり、楽しめる人を選ぶドラマかも知れません。


このドラマを楽しめない人々
タイムリープのような現実にあり得ないテーマのドラマの場合、
現実社会の常識に囚われ過ぎて「そんなのおかしい」と言ってしまうと楽しめません。
そこを理解できず、不満を言っている人が多い・・・、まずそれは感じます。

一方で、こういう作品の良作は、現実にあり得ないことが起きる世界ではあるけど、
その世界における“法則”がはっきりしており、それに沿って話が進むものです。
このドラマも、法則についての説明はされているのですが、そこをしっかり認識せずの不満も目に付きます。
録画をしていないと、小説と違って、ページをめくって確認できないので、仕方ないのですが。

更にいえば、この“法則”の点も含め、登場人物の会話や行動の多くが色々な事象の伏線になっており、
後々の話に繋がってくる、そこが面白いのだけど。
特に会話部分が結構が長めなので、まずそこがつまらない、ということになります。

そして、そこを「つまらない」でちゃんと観てないと、後々のシーンの面白さが伝わってこないのです。
このあたりは、以前映画の『シックス・センス』について書いたことがありますが、それに似ています。


最新回視聴率は過去最高
しかし、最新第7話の視聴率は6.5%で、大きな振れ幅はないものの、過去最高を記録しました。
悪評ばかりということもないようです。

脚本も面白いけれども、安藤サクラさんの演技がさすが。
奇想天外な設定ならばこそ、演技力が光ります。
他のキャストも、麻美と幼馴染の仲良し三人組役の夏帆さん、木南晴夏さんはじめ、みな好演。


次回、急展開か!
このドラマは“タイムリープ物”という意味ではSFといえるのでしょうが、今まで科学的要素は皆無でした。
ストーリーが徹底的に麻美目線で展開するので、「時間軸」とか「世界線」といったSF的なものとは無縁だったのです。

ところが、第3話で少しだけ顔を出した水川あさ美さんが、今回から麻美の同級生、宇野真里の成人後として、本格的に登場しました。
上述のように麻美には2人の幼馴染の親友があり、3周目までは仲良し三人組として登場していました。
しかし、4周目では事情により二人とは疎遠になり、代わりに真理と仲良くなったという流れです。

この真理が、何周目かは不明ですが、麻美と同様にやり直しを生きているようなのです。
そうなると、一気に話がややこしくなる可能性があります。

次回予告の断片的な映像から推測すると、
真理も元々は三人組と仲が良く、つまり真理を含めて仲良し四人組だったのではないか、とも思われます。
ただ、ドラマで描かれた麻美の1周目の時点で、四人組ではないので、そうなると、いったいどういう世界観になるのか?

・・・、考えずに放送を待った方が賢明かもです。

Old Fashioned Club 月野景史

 

2023年1月23日 (月)

【ドラマ】『ブラッシュアップライフ』(安藤サクラ主演)/脚本(バカリズム)と演技が絶妙

まだ初回を迎えていないものもありますが、
2023年1月クールの連続ドラマもだいたい出揃ったところで、なかなか面白く観ているのが
日本テレビ系日曜ドラマ枠(22:30~)『ブラッシュアップライフ』です。


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お笑い芸人で脚本家としても活躍する、多才なバカリズムさんの作。
交通事故により33歳で不慮の死を遂げた主人公の女性、近藤麻美(安藤サクラ)が
前世の記憶を持ったまま、同じ人間としての人生を赤ちゃんからやり直すという、いわゆるタイムリープもの。

死後の世界の係員(バカリズム)から聞かされた麻美の来世は“グアテマラのオオアリクイ”とのことで、
それを避け、“やり直し”をして、より良い来世を迎えるために、
2周目の人生では1周目よりも、徳を積まねばならない、という縛りがついています。

1月22日に第3話が終わったところですが、
麻美は順調に徳を積みつつ2周目の人生を過ごし、1周目の死因となった交通事故もやり過ごし、
そこで気の緩みも出たのか、1周目とは別の交通事故に合い、再び死んでしまいます。
提示された来世は魚、“インド太平洋のニジョウサバ” ということで、麻美はもう一度やり直す決意をし、次回第4話から3周目スタートという展開。

初回は麻美の幼馴染である門倉夏希(夏帆)、米川美穂(木南晴夏)の30代女性3人組のトークが長くて、
ややくどく感じ、もう少し上手くまとめられないかと思いましたが、会話の中身が後々の展開の伏線になっています。
私はミステリ好きなので、このように伏線をしっかり回収していく作品は好ましく感じます。

第3話でも(?)と感じるような箇所がいくつかありました。
最後に突然出てきた水川あさみさんはもちろん今後絡んでくるのでしょうが、
詳しくは書きませんが、麻美の父親のウォーキングや、職場の先輩の鍵開けの件とかは、
何かに繋がるのか、これで流されて終わりの話なのか、微妙なところで、それもまた楽しみです。


麻美や他のキャストの幼児時代や小学生、中学生など各世代演じた子役たちも上手く、
またゲストなのか準レギュラーなのか判然としてない有名俳優たち、
例えば、第3話は黒木華さんが登場しましたが、その使い方も上手かったです。
90年代以降の生活文化史が断片的ですが描かれ、麻美とは同世代ではない私にも、ちょっと懐かしい。

そして、民放GP帯連続ドラマ初主演の安藤サクラさんの自然な演技とナレーションが絶妙。
物語は徹底的に麻美視点で描かれ、例えば麻美死後の家族や友人の悲しむ様子は一切描かれず、
また麻美自身もそこには思いをはせたりはせず、しめっぽさがありません。
今後の焦点のひとつとして、麻美と同様のやり直しをしている人間が登場するのかという点もあります。

とにかく、麻美は1周目の軌道修正をしながら2周目を生き、
二重の濃厚な人生経験を経て、次回から3周目を迎えるわけで、ますます引き込まれそうな予感がします。
そうなってほしいものです。

Old Fashioned Club 月野景史

2022年8月10日 (水)

【ドラマ】 『初恋の悪魔』 珍しい警察職員による “合議制の安楽椅子探偵もの”(!?)

「この7月-9月クールのドラマはミステリ、事件捜査物が少ないな、
定番枠の『刑事7人』、『遺留捜査』、『警視庁強行犯係・樋口顕』以外は皆無ではないか」
などと思っていたら、タイトルからは推察不可能な、意外なドラマが警察ミステリでした。


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『初恋の悪魔』(日本テレビ系 土曜22時-)
このタイトルでは、こじれた恋愛物、ラブサスペンスにしか思えませんが、実は謎解きミステリ。
しかも、大変珍しい、「合議制の安楽椅子探偵物」といえるかと思います。


安楽椅子探偵
(アームチェア・ディテクティブ、Armchair Detective)
ミステリ用語です。

自らは事件現場に赴いたり、捜査したりはせず、
捜査担当者から話を聞いて、真相を推理する探偵のことを指します。
自分は動かず、安楽椅子に腰かけたまま推理する名探偵、という意味合い。

古典的な推理小説において安楽椅子探偵物の元祖とされるのが
バロネス・オルツィの『隅の老人』シリーズ。
最も有名なのはアガサ・クリスティが創造した「ミス・マーブル」でしょうが、
マーブルは自ら捜査活動をすることもあり、この枠には入らないとの見方もあります。


縦軸と横軸
さて、ちょっとわかり難いのですが、連続ドラマを語るのに「縦軸」と「横軸」という言い方をします。
特に、警察系ミステリで使われることが多いです。

簡単にいうと、シリーズを通しての謎、解決すべき課題、テーマといったものが「縦軸」。
一方で、警察官が主役だと、縦軸の課題とは別に毎回色々な事件が起こり、捜査するのが一般的。
それらは一応一話完結で、その回ごとに解決する場合が多い。こちらをその回ごとのテーマとして「横軸」と呼びます。
が、どちらかというと「縦軸」の方が使われ、「横軸の事件」みたな言い方はあまりしないかも知れません。
※「縦軸」「横軸」は連ドラとは違うスタイルのストーリーでは、使い方も違ってきます。


『初恋の悪魔』
中心人物は比較的若い世代の男性3人、女性1人の4人組
(林遣都 仲野太賀 松岡茉優 柄本佑)
全員警察の人間ですが、そのうち男2人は「警察官」ではなく、「警察行政職員」。
残りの男女1人ずつは警察官ですが、それぞれ別の事情で事件捜査からは外れています。

縦軸と思われる謎がいくつか提示されており、
今後それがどう繋がっていくのか、というところでしょう。

一方横軸は、毎回色々な事件が起こりますが、
主役の4人組は捜査権はないのて、原則として捜査は出来ません。
そこで、林遣都を中心に、主に彼の家で “自宅捜査会議” を行ない、事件の真相を推理する、
というのが、今までのところ、毎回の定番になっています。
このスタイルを「合議制の安楽椅子探偵物」と表現してみました。

なかなか面白い趣向なのですが、残念ながらこの各回ごとの推理部分は、少し浅く感じます。
おざなりというか、ちょっとおまけみたいにも。
私はミステリ好きなので、そこを充実させてほしいと思うのですが、
ネットの意見を見ても、そこへ期待している人はあまりいなさそうです。

これからますます縦軸の方が混み入ってきそうなので、
安楽椅子探偵部分の充実は難しいのかも。
だとしても、今期の中で、楽しみにしているドラマです。


ところでこのドラマ、クレジット上は林遣都さんと仲野太賀さんのW主演なのですが、
上に貼った公式サイトのトップ画像だと、松岡茉優さんと仲野さんのW主演に見えます。
実は今のところ、ドラマの内容からも、仲野さんと松岡さんが主役とヒロイン、もしくはW主演で、
林さんは“トメ”に来るような役回りに感じます。
ここは林さんの役の動向しだいの面もあり、今後どうなっていくのかもポイントです。


Old Fashioned Club 月野景史

2022年6月 9日 (木)

【ドラマ】終了決定のテレビ朝日「木曜ミステリー」の歴史を辿る/『科捜研』『迷宮案内』『おみやさん』『京都地検』『一課長』『遺留捜査』

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終了が公表されたテレビ朝日木曜20時のドラマ枠「木曜ミステリー」について、
2015年7月、このブログに書いたことがあります。

その時は、『科捜研の女』以外の人気シリーズが終了し、
新作が軒並み低視聴率で、存続の危機である、という主旨でした。
http://oldfashioned.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-8767.html

しかし、その後に新たな人気作も生まれて立て直しに成功、通算20年以上続いてきたのですが、
残念ながら今年の7月クール(7月-9月)をもって終了ということになりました。
改めて「木ミス」の歴史を辿ってみます。


「木曜ミステリー」とは
この枠のドラマは警察や報道関係者、探偵等を主人公とし、
原則として京都を舞台とした事件捜査物である事が特徴。
2000年代には『科捜研の女』の他にも
『京都迷宮案内』(橋爪功主演)
『おみやさん』(渡瀬恒彦主演)
『京都地検の女』(名取裕子主演)

常時視聴率12%~14%台、大ヒット作とはいえないまでも、安定した人気シリーズを4本抱えていました。


東映京都撮影所枠
そもそもこの枠のドラマはなぜ京都が舞台なのか?
それは、原則としてすべて東映京都撮影所で制作されているからです。

戦後の映画黄金期、東映は東京で現代劇、京都で時代劇を制作していましたが、大黒柱は京都で作られる時代劇でした。
そして、他の映画会社も時代劇を作っていましたが、時代劇の総本山といえば東映だったのです。
1960年代後半になると時代劇映画は衰退しますが、舞台をテレビに移し、多くの作品が作られました。

しかし1980年代から90年代へと進む中、テレビ時代劇も少しずつ退潮していきました。
このテレ朝木曜8時も東映京都制作の時代劇枠だったのですが、
1999年1月から「木曜ミステリー」として現代劇を放送するようになったのです。


時代劇は京都で撮影していても、劇中の舞台は江戸というのがほとんどです。
しかし現代劇、とくに屋外ロケを多用する刑事ドラマ、事件捜査物では、
京都で撮影しながら、舞台は東京の設定は無理です。
だからみな、京都が舞台なのです。


『迷宮案内』も『科捜研』も一桁スタート
「木曜ミステリー」は20世紀末の1999年1月スタート。
原則として1クール3ヶ月で、第1弾が『京都迷宮案内』、10月スタートの第4弾が『科捜研の女』でした。

第1シーズンの平均視聴率は『迷宮案内』が9.6%、『科捜研』が9.3%。
この頃はテレビ番組全体も、ドラマ分野も、現在と比べて全般に視聴率が良かった筈です。
それなのにこの視聴率では、通常続編は考えられません。
にも関わらず続編が作られたという時点で、この枠が特別であることがわかります。
実は、初期2年の間に放送された他の作品はこの2作より更に数字が悪く、2作を続けるしかなかったのです。

翌2000年の続編で『迷宮案内』は数字を伸ばし、その後も安定した数字を残してこの枠の柱となりました。
しかし『科捜研』は大幅にキャストを入れ替えて臨みましたが、9.2%と僅かですが下げてしまいます。
ですが、同年に放送された他の2本の新作ドラマよりはいいので、また入れ替えを行い、シーズン3を制作します。

視聴率が悪いのに続けようというのだから、リニューアルを繰り返すことになります。
このシーズン3では数字を伸ばしましたが、4でまた落としと、まだしはらく迷走が続きました。
結局、シリーズ6(2005年)頃まで極端なリニューアルを繰り返し、ようやく安定期を迎えたのです。


全盛期へ
そうこうしているうちに2002年に『おみやさん』、2003年に『京都地検の女』がスタート。
2005年頃には4作とも12%~13%台を獲るようなりました。

まさに人気シリーズが目白押し状態、2010年頃まで全盛期が続きます。
ただ、1年間でこの4作がすべて放送されたのは2006年だけです。

シーズンごとの視聴率では2005年~2010年の間に『科捜研』と『おみやさん』は13%以上が4回ありました。
『科捜研』はその内1回が14%突破(2009年 14.5%)。『おみやさん』は2008-9年の13.5%が最高。
『迷宮案内』の13%越えは1回だけですが、13.9%の好数字。(2006年)
『京都地検』は13%越えはなく、最高が12.8%でした。(2007年)


『京都迷宮案内』の終焉
2008年、『迷宮案内』が第10シリーズを持って休止します。
(翌2009年には単発スペシャルを放映。これが現時点での最終作。)

シーズン10の視聴率は12.6%で、これは全10シーズン中第2位の数字。
やめる必要はなかったように思いますが、これには橋爪功さん初め主要キャストの年齢や、
橋爪さんの劇団円の代表就任等の事情があったともいいます。

他に人気シリーズもあり、『科捜研』や『おみやさん』に比べるとやや数字も低く、
出演者の高齢化も目立ってきた『迷宮案内』に、区切りの良いところで終止符を打ったのでしょうか。

2007年の新作『その男、副署長』(船越英一郎主演)が13.5%を獲ったことも原因のひとつかと思います。
ただ、『副署長』はその後2回、11%台2回が続き、終了してしまいました。

もう一作『女刑事みずき』(浅野ゆう子主演 2005年~)もそうですが、この頃は11%台が続くと継続は難しかったようです。
初期を思えば、そして今から考えれば贅沢な話です。


低迷期へ~ 『おみやさん』『京都地検』の休止
『迷宮案内』の休止後も好調を維持していた3作ですが、
2011年頃を境に、数字の落ち込みが目立つようになります。
『おみやさん』と『京都地検』が12%を割り込み、『科捜研』でさえも13%を切るようになりました。

そして『おみやさん』は2012年の第9シリーズ、
『京都地検』は2013年のやはり第9シリーズを最後に休止状態となりました。
これには、裏番組の影響も指摘されていますが、番組側にも事情がありました。

『おみやさん』はスタート以来2011年まで10年8期、渡瀬さんの相棒役を務めた櫻井淳子さんが、
シーズン9(2012年)の第1話冒頭で、脇役陣の会話だけで異動による降板が告げられるという、少々不可解な展開でした。
この9期で11.0%まで落とし、連ドラ休止となってしまいました。
ただ、その前の8期は11.5%に落とし、低落傾向にはあったのですが。

一方の『京都地検』は、スタート時から名取さんの上司役を務めてきた蟹江敬三さんが
2014年3月に死去したことが理由との見方もされます。
ただ、それ以前の2011年~2013年の数字が11.5%→10.3%→11.1%と低迷しており、
蟹江さんが健在ならば続いていたかというと微妙です。


新作ドラマが不調
こうして長寿シリーズ二作に区切りをつけ、新作を送り出しますが、2014年になると一気に数字が悪化します。
2013年の第1期が12.1%だった『刑事110キロ』の第2期が7.7%と急落。
続いて木ミスを一旦休止し、時代劇に先祖帰りした『信長のシェフ』も7.3%と、
二桁が当たり前だった枠としては信じられない低視聴率が続きました。

2015年は年初から新機軸の新作が次々と打ち出しますが、
結果は1月期の『出入り禁止の女』が6.4%、4月期の『京都人情ファイル』が6.7%と、
コンスタントに13%前後を獲っていた2010年頃までに比べると、半分まで数字が落ち込んでいます

7月期はかつての人気シリーズ『京都迷宮案内』の橋爪功さんと、
『京都地検の女』の名取裕子さんをW主演に迎えた『最強のふたり』で勝負にでましたが、7.3%に終わりました
2015年のブログには、この時期の危機的状況について書いたのです。


掟破りの奇策で復調
その後の2016年、ついに掟破りの奇策に打ってでます。
2時間ドラマの土曜ワイド劇場で好評だった『警視庁・捜査一課長』を4月から連続ドラマとしてスタートさせたのです。
これの何が奇策なのか?

『一課長』は東京の警視庁が舞台で、制作も東映の東京の撮影所。
つまり、木ミス= “京都制作・京都舞台” の原則を崩したのです

しかも主演の内藤剛志さんは『科捜研の女』の準主役格。
この頃の『科捜研』は2クール放送のことも増えていたので、
その場合、「木ミス」は年の4分の3を内藤さんに頼り切ることになりました。
この点も奇策というか、なりふり構わずです。

ともかく、『一課長】は二桁視聴率を獲得して4月期にシリーズ化され、「木ミス」の救世主となりました。

この後も京都制作の新作が作られますが、それも不調。
2017年7月にまた別の手段に出ます。


更なる奇策で安定確保
東京を舞台に不定期に3シーズン作られ、人気ドラマだった『遺留捜査』を、
主演の上川隆也さんの役が京都府警に異動した設定で、
京都制作、京都舞台で放送したのです。

上川さん演じる糸村は警視庁の警察官なので、京都への異動など現実にはないのですが、そこはドラマなので。
こちらもまずまずの視聴率を確保しました。

こうして『科捜研』『一課長』『遺留捜査』の新三本柱が確立し、「木ミス」は一応の復活を遂げたのです。


2019年の1月クールには久々の京都制作の新作『刑事ゼロ』(沢村一樹主演)も好評。
4月からは20周年を迎えた『科捜研』が異例の1年間放送、映画化も決定と話題にも事欠きませんでした。

今回の終了決定については総合的判断ということで、具大的な説明はされませんでした。
もちろん、コロナの影響はあったでしょうが、それは他のドラマも同じことです。

ただ、“噂”で流れた情報としては、京都制作であることによるコスト高が挙げられていました。
それはその通りだと思います。

キャスト絡みだけ考えても、レギュラー陣から主要ゲスト、脇役にいたるまで、
大半の俳優さんは東京近辺在住だろうから、交通費・宿泊費は膨大な額になるでしょう。
まして内藤さんのような売れっ子が主要レギュラーだと、スケジュール調整も大変だろうし。

数年前に犯人役の俳優さんのブログを読みました。
メインゲストの俳優が犯人かと思わせつつ話が進み、実は最初の方に少しだけ出てきた、
あまり有名でない役者さんが犯人だった、というパターンでした。
その人はクランクインからアップまで一か月近く、その間東京-京都を少なくとも二往復していたようでした。
大変です。

もっとも、こういったことは今に始まったことではない筈ですが、
コロナ禍の影響で、見直しが求められたかも知れません。

ともかく、木曜ミステリーの終了は発表されました。
仕方ありません。
新たなドラマ枠は作られるのか?
『『科捜研』『一課長』『遺留捜査』はどうなるのか?
それはまだこれから、ということのようです。

Old Fashioned Club 月野景史

2022年6月 8日 (水)

【ドラマ】テレビ朝日木曜20時「木曜ミステリー」が9月で終了 最終作は『遺留捜査』/【科捜研の女】はどうなる?

昨年秋からネットニュースで“噂”が流れていた
テレビ朝日木曜20時のドラマ枠「木曜ミステリー」が今年7月クール(7月-9月)を最後に終了することが、
テレビ朝日より正式にアナウンスされました。
7月スタートの『遺留捜査』が最後の作品になります。


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元々もこのネットニューズでの噂というのは、
◆20年以上続く長寿ドラマ『科捜研の女』が終了する
◆それは放送枠である「木曜ミステリー」がなくなるからだ
というもので、テレビ朝日が正式発表していない “情報” でした。


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今回は正式に「木曜ミステリー」の終了が発表され、噂は正しかったということになりました。
過去には『京都迷宮案内』『おみやさん』『京都地検の女』など人気作が生み出してきた枠。
ただ、これらのドラマは終了していますが、継続中の『科捜研の女』『警視庁・捜査一課長』などはどうなるのか、
ここはまだ不明です。

以前の情報では、木曜ミステリーに替わって、火曜21時にドラマ枠が新設されるとの説もあり、
更に,『科捜研の女』はその枠で10月から放送されるという情報も流れたのですが、
そのあたりもまったく未知数です。

正式なリリースを待つしかなしか。
以下にニュース記事を引用しておきます。

☆☆☆
「科捜研の女」「警視庁・捜査一課長」などの人気シリーズを生み出したテレビ朝日の木曜午後8時のドラマ枠「木曜ミステリー」が、今年7月期で23年半の歴史に幕を下ろす。1999年1月にスタートし、全24タイトル、トータルで800話を超えるミステリードラマを放送。最後の作品は、俳優の上川隆也(57)主演の「遺留捜査」第7シーズンとなる。上川は「歴々の作品が重ねてきた歴史に恥じない作品にしたいという思いは強く、そのために今できることはできる限り、注ぎ込みたいと考えて全力で努めています」と話している。

木ミスが終了する理由について同局は「木曜日のゴールデン帯全体の編成を総合的に判断した結果です」と説明。近年同局では若年層をターゲットに、深夜帯バラエティー枠を新設するなどの改編が進められている。木ミスは、骨太の本格サスペンスや人情を重んじたミステリードラマが特徴。比較的視聴者の年齢層が高めの傾向にあったことも踏まえ、同局関係者は「視聴者層の新陳代謝も一つの要因でしょう」と話した。

同枠は終了するが、「科捜研の女」などの人気シリーズの続編については未定。同時間帯の後番組や、ドラマ枠の増減に関してもまだ決まっていないが、今後もミステリーやサスペンスドラマの制作や放送は続けていくという。同局は「歴史と作品群は、現在の当社のドラマ制作においても大きな財産。長きにわたり本枠を応援してくださった視聴者の皆さま、そして全ての出演者・スタッフの皆さまに心から感謝しております」とコメント。編成に、新たな風を呼び込む準備が進められている。

《上川隆也「年々“深化”」》11年からスタートした「遺留捜査」は今回で第7シーズンに突入。京都を舞台に、事件現場に残された遺留品から、捜査官が“メッセージ”をよみとる。上川は「これまで培ってきた土台がアップデート。年々“深化”が重ねられていると感じます」と作品の深みが増していることを実感。木ミス最後の作品となるが「その重みはいったん忘れて、撮影に臨んでいます。変わらぬ“遺留捜査”を変わらずにお楽しみください」とアピールした。
★★★

Old Fashioned Club 月野景史



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