【美術】ラファエロ・サンツィオ『一角獣を抱く貴婦人』 4/4『美の巨人たち~』より/曰く因縁ある絵
2015年4月4日放送のテレビ年京系『KIRIN~美の巨人たち~』テーマ作品「今週の1枚」は、
ラファエロ・サンツィオ『一角獣を抱く貴婦人』(1505年頃)でした。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/150404/index.html
今回から番組もリニューアル。
ナレーションも小林薫さんに蒼井優さんが加わって二人体制になりました。
オープニングも変わりましたね。
テーマ作品も西洋美術の大立者ラファエロ・サンツィオ。
・・・なのですが、選ばれた作品はちょっと微妙でした。
この絵は、2009年~2010年に開催されたボルゲーゼ美術館展の看板作品として来日しています。
数あるラファエロの名画の中で、それほど有名というわけでもありません。
ラファエロ・サンツィオ
(Raffaello Sanzio da Urbino1483年4月6日 - 1520年4月6日)
美の貴公子ラファエロ。
彼がルネサンスの聖都フィレンツェにやってきたのは1504年頃、21歳の時。
それからまもない22歳頃に描かれたとされる作品です。
絵画にさほど詳しくない人でも、有名な絵に似ていると思うでしょう。
そう、あのレオダルド・ダヴィンチ『モナ・リザ』(ラ・ジョコンダ)
ラファエロは『モナ・リザ』を見て、スフマートなどの技法を会得し、
『一角獣を抱く貴婦人』描いたとされています。
といっても、ダヴィンチからの影響について、はっきり記録に残ってはいません。
ダヴィンチはこの絵を手元において加筆を続け、最後はフランスで亡くなります。
だから『モナ・リザ』はイタリアではなく、フランスのルーブル美術館にあるのです。
つまり、『モナ・リザ』はダヴィンチの生前に公開されることはなかったのです。
ラファエロはダヴィンチの工房を訪れ、『モナ・リザ』を目にしたとされています。
番組ではテレビのオークション番組をテーマにしたミニドラマ風演出で、
『モナ・リザ』と今日の1枚を対比させ、その魅力にせまりました。
しかしながら、番組でもふれられてはいましたが、
『一角獣を抱く貴婦人』にはもうひとつの曰く因縁があるのです。
20世紀の初頭まで、この絵は作者不詳の『アレクサンドリアの聖カタリナ』とされてきました。
女性の手元には一角獣ではなく、壊れた車輪が描かれていたのです。
これは当時のこの絵を撮影した白黒写真です。
なぜ車輪を! と思うでしょうが、アレクサンドリアのカタリナはよく絵画の題材にもなる、
有名な聖女・殉教者で、車輪は彼女のアトリビュート(持物)なのです。
ところが、どうもこの絵は上から塗り足されているのではとの疑いが浮上し、
修復したところ、一角獣が現れ、技法等からラファエロの作であることが判明したという次第です。
作者不明の絵画を修復したら、巨匠ラファエロの絵画が出てきた!
世紀の大発見。
しかし、これはどうも解せない話です。
ラファエロは生前からルネサンス絵画の最高峰に登り詰め、
死後も長く西洋絵画の規範とされたほどの画家です。
そのラファエロの絵に誰がいつ上から塗り足し、別の絵にしてしまったというのか?
不可思議な話ではあります。
Old Fashioned Club 月野景史